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エピソード 19

「痛たたたた!キトル様!冗談です!もう言いませんから!」


せっかくいい感じに話がまとまってきてたのに、公爵様が


「お姉ちゃん・・・?パールの妹・・・?という事はキトル様は私の娘?!」


なんて言ってたから、またバラでグルグル巻きにして差しあげたのだ。


「お父様ってば。キトルちゃんは私の妹であってお父様の娘じゃありませんわよ」


「あなた・・・ドルムンタ伯爵と同じことをおっしゃってると自覚を持ってね?」


バラから解放されて愛娘と愛妻から冷たい目で見られた公爵様は淋しそう。


前後の言動がなければ、その姿も影のあるダンディって感じでかっこいいのにねぇ。


仕方ないなぁ、もう。


「公爵様、庭園の花は咲かせましたけど、敷地内に何か果物でも生やしましょうか?」


「本当かっ?!」


「ホントっ?!キトルちゃん、嬉しい!ありがとう!」


「最近来た行商人が、使徒様の作った果物絶品でした~って言ってたからすごく気になってたのよ!嬉しいわぁ」


あら、もう流通し始めてるのか~どれだろうな~。


「作るところをワシも見てよいか?」


王様も興味あるのか。まぁ珍しいしね。


みんなでぞろぞろと外に出て、お屋敷の端っこの塀の所まで移動する。


「何作ろうかな~」


「りんごっ!キトルさまりんご!」


「いやいやヘブン、そろそろバナナの甘さも恋しくなる頃だろ?」


君たちにはまた今度作ってあげるって。


せっかく美女と美少女がいるんだから、美容にいいものにしようかな。


「公爵様、どの辺まで作っちゃっていいですか?」


「そうだな、ここの塀の」


「どこまででも大丈夫ですわ!」


奥様が勢いよく答える。


ん~と、じゃあ門から入って右側の塀の角まで作ろうかな?


門から歩きながら右手を伸ばし、塀の曲がり角まで歩く。後ろを振り向くと、ニョキニョキと沢山生えてきた樹に生ってるのは産毛が生えた楕円形の小振りな実。


「おや。これはキウイですかな?」


庭師のおじいちゃんは知ってるっぽいけど、みんなはキョトンとした顔してるね~。


「詳しいんですね〜。栽培方法とかも大丈夫ですか?」


確かキウイは屋根の骨組み?みたいなのがあった方がいいんだよね。


「昔、本で読んだことがありますからの。大丈夫ですよ」


「美味しいんですのっ?!」


パールちゃんと奥さんは興味津々だねぇ。


「甘酸っぱくて美味しいですよ〜。あと、美容にいいです」


「んまぁ!素敵!ありがとう!」


うひゃ〜奥さんに抱きつかれちゃった!


「こちらこそありがとうございますぅ〜」


ナイトが無言でこっち見てるけど、無視無視。


「・・・キトル様は、どのくらい離れた所まで草木を生やせるのだ?」


顎に手をかけて思案してた王様が尋ねる。


離れた所?


「モーリュ草は勝手に生えますけど、生やそうと思った物は手をかざした所にしか生えませんよ?」


おばあちゃんに教えてもらったもん。


「ふむ。父が子供の頃、曽祖母は目に見える範囲すべてに草木を芽生えさせていたと話していたのだが・・・」


何ぃ?


「そういえばそうですね。前の使徒サマは手を向けた方にブワァ〜!と花が咲かせてました!」


ヘブンまで!マジで?!


「前にやった時は手をかざした下にしか生えなかったんだけど・・・」


と言いながらみんながいる方、特に公爵様の奥さんのルビィさんがいる方向に手を出す。


ルビィさんに似合う花・・・イメージするのはお母さんに贈る花。


スルスルスル・・・とルビィさんの足元まで、大体五メートルくらいを一直線にピンクや赤のカーネーションが咲き乱れた。


「ホントだ!知らなかった!!・・・あれ?でもそこら辺までしか生えないね」


手をブンブン振ってみても、花が咲くのは五メートルくらいまでの範囲だけ。


ルビィさんの周りをお花でいっぱいにしたかったんだけど。


「さっきスキルって言ってましたよね?スキルって事は、技術と同じで、使っていくうちに上手くなって距離も伸びるんじゃないっすか?剣術とかもだんだんできる事増えていきますし」


出た!探偵ナイト!


「って事は、これから見える範囲全部一気に草だらけに出来るようになるかもしれないんだ!」


「草だらけって・・・まぁ多分そうなんじゃないっすか?」


は〜なるほどねぇ。


「良い事聞いた!王様ありがとう!」


「いやいや少しでも助力となれたのなら、来たかいがあるというものよ」


いくらモーリュ草の綿毛を飛ばしても限度があるからね。


本当に世界中をくまなく歩かなきゃ山に登れないとこだった。


「ねぇお父様!もう食べてもよろしくて?!」


パールちゃんの一言で、みんなの生唾の音が聞こえた気がした。



「美味い!これは何たる美味な・・・口の中に広がる甘酸っぱさが爽やかで、果汁の豊かさ、種の食感の妙なる響き・・・絶品だな!」


さすが王様、食レポ上手いね。


「すごいわキトルちゃん、こんな美味しいもの一瞬で作っちゃうなんて」


「あっパール、それは最後の一切れ・・・!」


「毎日食べてたら若返っちゃいそうね~」


公爵家の皆様にも好評なご様子。


「ん~これも美味しいんすけど、俺はやっぱりバナナやリンゴの方が・・・」


「あれ、ナイトさん食べないんですか?じゃあワタクシが貰って」


「ダメだっての!ヘブンは自分のがあるだろ?!」


君たちはちょっと遠慮しなさいよ。


「王様、色々情報を教えて頂きありがとうございます」


「いやいや、こちらこそ急に押しかけてすまぬな。今回を逃すと次に会えるのがいつになるのかわからぬのでな」


「えぇ、最初は何しに来やがったんだと思いましたが、良かったです」


「・・・これでも王様だからな、もう少し礼儀正しくしてくれても良いのだぞ?」


「はっはっはっは」


面倒な時は笑ってごまかすのが一番だよね。


「他にはないですよね?なんか便利な使い方とか」


「便利な?う~む、ワシも直接お会いした事があるわけではないからな。王城に来れば曾祖母が残したという手記もあるが、これは曾祖母独自の文字なのか読めるものではないからなぁ・・・」


手記?日記みたいなやつだよね?


独自の文字って、もしかしたら前の世界の言語って事じゃないの?


「行きます!あ、いや、すぐにじゃないけど絶対寄ります!ってか持ってきてないんですか?」


「一応王族の私物になるのでな。しかも緑の使徒様が遺した書物となると、おいそれと持ち出せぬのだよ」


「そっか・・・ここの領地から王都って、どのくらい遠いですか?」


「公爵領は王都の隣だから、今いる領都からだと馬車で二、三日もあれば着くぞ。一緒に来るか?」


王様の馬車で?


「いや、それはいいです」


あ、ショック受けてる。違うんだってば。


「公爵領の中も回らないといけませんから。そのあとに向かうんで、一緒には行けないんですよ」


「・・・そうか、そうだな。キトル様、我が国の民の為に、よろしく頼む」


王様が頭を下げ、公爵様と奥様、パールちゃんも頭を下げる。


いいよいいよ、私がやりたくてやってんだから。


じゃあさっそく、公爵領の人たちの所に向かおうじゃないの!

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