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エピソード 17

「それで?王様はどのようなご用件で?」


会いたくないって言ってんのにわざわざ来たんだから、それなりの用があるんでしょうね?


「うむ。幾つかあるが・・・まずは緑の使徒様に我が国の貴族が其方に無礼を働いた事、国民を代表してお詫び申し」


「いや、もうそれはいいですって。気持ち悪かったけど未遂だし、もうやりかえしたし。あと、キトルでいいですよ。緑の~って長いし」


「しかし、そなた、キトル様に不快な思いをさせてしまった事でこの国が神の恩恵を受けられないのではないかと・・・」


神の恩恵??


あ、草生やさないんじゃないかって事?


「いやいや個人の暴言くらいで、そんな意地悪するほど子供じゃないですよ!」


「・・・」


ん?何だこの空気は。


「・・・キトル様、子供っすよ」


はっ!そうだった!まだ七歳だ!


「その者は?」


王様の目線が頭の上の方に向いている。

ナイトの事?


「傭兵をしておりましたナイトと申します。緑の使徒様にご縁をいただき、幼少からの夢だった従者としてお供をさせて頂いております」


えぇ~ナイトそんな話し方も出来たの?


「ふむ、ナイト(騎士)とな・・・。代々の使徒様は顕現されると同時に従者を選び旅に出るとのことだが、今世の従者は騎士も兼ね備えているのか。心強いな」


ナイトで騎士って事か。


上手い事言うじゃない?


「ワタクシも従者ですよっ!前の使徒様の時からずぅっと従者なんですからね!」


お、ナイトの横で小さいヘブン君も猛アピールしております。


「・・・?!そちらは!我が曾祖母に付き従っていたというフェンリル殿か!」


曾祖母?曾おばあちゃんの事よね?


「王様の曾おばあちゃんは前の使徒様だったんですか?」


「えっ?!そうなんですかっ?!」


ヘブンが近づいてクンクン匂いを嗅いでるけど、それ、王様が手で制しなかったら後ろの騎士さん達が斬りかかってたのでは・・・?


「ホントですね!薄~くなってますけど、前の使徒様の匂いがします!」


「ワシが生まれる前に亡くなっていたので直接お会いすることは叶わなかったが、父から話だけは聞いていてな。フェンリル殿の事も色々聞いていたよ」


「使徒様、ワタクシの事お話しされてたんですねぇ」


「あぁ、野菜や果物をしか食べないのに、非常に食いしん坊で甘えん坊だった、とよく言っていたそうだよ」


「えへへへ~そんなぁ~」


ヘブン、照れてるけどそれ多分褒めてないよ。


「一緒に街で過ごせるよう、小さくなれるようになったら追いかけてくるように、と言いつけたのに何度会いに行っても大きいままだったとか」


「そうなんです~頑張ってたんですけどそのうち使徒様の匂いが消えてしまって・・・十年位前にやっと小さくなれるようになったんで、使徒様の言いつけ通り、次の使徒様が現れるのを待ってました!」


え、このサイズになれるようになったの最近だったのか。


でもなかなか会えなかったんじゃ、前の使徒の人と最後にお別れも出来なかったんじゃないかな。


「キトル様に会えて、お名前も貰えたから良かったです!」


・・・まぁ今は幸せそうだしいっか。


「もしよろしければ、後ほど祖父を助けて頂いた時のヘブン殿の姿絵もお見せしますよ」


公爵様の申し出にもちろん頷く。

その為に来たようなもんだしね。


ウオッホン、と国王が咳払いをして視線を集める。


「その曾祖母の事も合わせて話をしに来たのだ。・・・曾祖母も、これからのキトル様がされるように、大陸を回り枯れた大地を芽吹かせていた。だがその当時の東の大国は継承問題や部族間の争いが続いていて危険でな。情勢が落ち着くまで、と我が国に滞在している時に曾祖父と出会い結婚したのだと聞いている」


あらら、恋に落ちちゃった的な?


「子をもうけ、年を取り、王太后となってからは立場もあり、東の大国が落ち着いてからも世界の全てを癒す事が出来なかったと悔やんでいたそうでな・・・伝承通りならば千年は持つはずなのに、自分のせいで次の使徒が呼ばれてしまうと嘆いていたと」


伝承???


「伝承って何ですか?」


「「「えっ?!」」」


「えっ?!」


え、何?

王様や公爵様、奥さん達やナイトまでこっちを見るからビックリしたぁ。


「使徒様は伝承を知らぬのか?親や周りの大人から聞いたことは?」


「え、知りません。親はいましたけど、食事もロクに与えないような親だったし、逃げ出すまで三つ上の兄以外の人にもほとんど会った事なかったんで」


「えっ?!」


え?なんでパールちゃんが驚いてるの?


「そんな・・・酷い・・・」


あ、私の境遇にビックリしたのね。


同情してくれたのかな?


なんだ、優しい子じゃないの。


「伝承と言っても、おそらく民間に伝わっているのは一部のみだとは思うが・・・」


ちらりとナイトの方を見る。


これはあれだね、一般的なやつを教えろって事だね。


「俺が聞いて育ったのは、え~、千年に一度、草花は枯れ、木々は倒れ、生き物は死に、世界が終ろうとする時、緑の手を持つ神の使いが花を咲かせ、命は吹き返すだろうってやつっすね。あとは、ばあちゃんが子供の頃から言ってた悪い事する奴の所には緑の使徒様は来てくれないぞ~とか、そういうやつっす」


後半のは子供によく言うやつだね。


しかし千年に一度なのに私の前の人が居たのが百年ちょっと前って・・・。


「そうだ、概ねその通り。ただ、王家にはその詳細まで伝わっていてな。それをお伝えしようと思いお会いしたかったのだ」


詳細?世界中に草生やせばいいんじゃないの?


「まだキトル様は緑の手というスキルを授かったばかりだろう。違いますかな?」


「!そうです!」


初めてだ。


『緑の手というスキル』って言った人。


「曾祖母も、突然緑の手というスキルを授かったと言っていたそうだ。曾祖母は子爵家の出でな。王に面会する機会もあった為、伝承について知り、それから大陸中の五つの国を回ることにしたのだと」


「五つの国?」


「・・・大陸の事も知らぬ、ようだな」


うん、知らないね。


「公爵、大陸地図はあるか?」


「書庫にあったはずです。すぐに持って来させましょう」


公爵様が使用人の人に指示を出している時、意を決したようにパールちゃんが声をかけた。


「あのっ!陛下!」


「ん?何だね?」


「お父様とお母さまが話しているのを聞きました・・・。第二王子の婚約者に、緑の使徒様がなるかもって・・・」


「パール?!貴女何を・・・?!」


「私との婚約は解消されるという事ですかっ?!」


・・・はい?何それ?


「・・・公爵様?私は何も聞いてませんけど・・・?」


「いや、歳が近いし先代の使途様の事があるから、もし早くにわかっていればそんな可能性もあったのかも、という話をしていただけで・・・キトル様!トゲが!痛いです!」


私の手の下からバラがの蔓が伸びて公爵にクルクル巻き付いてる。


別にトゲがあるだけなんだしいいでしょ。


「では婚約の解消は・・・」


いやいや存在すら知らない人となんて嫌だよ。


「少なくとも、私に全くその気がないので絶対にありえませんよ。もしそんな事したらお城をバラまみれにしてやる」


プッ・・・クスクス・・・


あらヤダ、笑うとなんて可愛いんでしょ!


「パール、安心なさい。ただの戯言で言っていただけで、第二王子の婚約者は貴女よ」


「ワシも義娘になるのを楽しみにしとるしなぁ。そもそもアイツもパール嬢以外見えとらんじゃろ、あれは」


手で頬を覆うパールちゃん。


まぁ!照れてる顔もなんて可愛い!


なんでこの世界にはカメラもスマホもないのかな~


「・・・そろそろこの蔓を取ってはもらえないだろうか・・・」


はいはい、パールちゃんが笑ってくれたから仕方ないね~。


そのくらいで許してあげようじゃないの。

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