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エピソード 15

「おわっ・・・たぁ~!」


伯爵領をお薬畑、いや薬草の名産地にすると決めてから早一か月。


領内の大小さまざまな集落や村を回っては畑を作り、回っては野菜を作り、回っては薬草を生やし続け。


やっと最後の村が終わりお屋敷に帰ってきて、お風呂に直行した後ベッドにダイブした。


いやぁ~頑張ったね。


作るのはやったろうじゃないの~って決めた事だからいいんだけど、決まった物を決まった量決まった所に決まった時間内で作るのは・・・もういいかな。


何だか社畜時代を思い出しちゃったよ。


やっぱり、自分のペースで自分の好きなように仕事する方が性に合ってるみたい。


この辺は大山さくらの頃から変わってないな~。


「キトル様、今日までここに泊まって準備したら、明日には公爵領に向けて出発しますよね?」


ナイトが私の自室になってる客間に顔を出す。


「そうだね、そうしようか」


「よっしゃ!ロンドさんに、ここを発つときに武器庫から好きなの選んでい言って言われてたんすよ!」


ウッキウキで走り去っていく。


行きと帰りで六時間くらい歩いたのに元気だね~。


かくいう私も、伯爵家での豪華な料理アンドお弁当で肉もしっかりついてきたし、今日は往復歩いたもんね!


今はちょっとベッドから起き上がれないけど。


廊下では、小さくなったヘブンを誰が洗うかでメイドさん達が喧嘩してる。


みんな、自分が洗う!って譲らないらしい。


小さいヘブン可愛いもんね。メイドさん達も、明日から寂しいだろうな~。


ヘブンが綺麗になったら一緒に晩ご飯食べようね・・・。



と思ったのが昨日の夜。


伯爵家最後の食事を食べずに朝を迎えてしまった・・・。

ショック。


「いや、あんまり気持ちよさそうに寝てたもんで、起こすのもな~って!」


「キトルさま、昨日歩いて疲れてたんですよねっ?!」


お屋敷の前で出発しようとしてるのにまだイジけてたから、二人が慰めてくれる。


「いいもん。今度また料理長のご飯だけ食べに来るもん」


「そうですとも。いつでもお越しください。どんな方が次の領主様になろうとも、緑の使徒様はいつでも歓迎させていただきますよ」


ロンドさん・・・優しいねぇ・・・。


あれ?もう行こうかと思ってたけど、ケトが居ない。


「ねぇ、ケトは?」


「あれ?昨日の夜キトル様が寝てたんで、明日の朝また来ますっつってたんですけど・・・」


次に会えるのがいつになるのかわからないし、ちゃんとあいさつしたかったのになぁ~。


・・・何かいい匂いがする。


「キトル様~!」


ケト!来た!あといい匂い!!


「ケト!何持ってるのっ?!」


ケトの手にはお皿と、りんご?


「え?あ、これ、キトル様に生やしていただいた木の実の、え〜っと、りんご?で作ってきました!って言っても、そのまま焼いただけなんですけど・・・」


「大正解だよっ!食べていい?!」


「え、あ、はい!」


メイドさんが急いで持ってきたフォークを使って食べる。


モグモグモグモグ・・・


「香ばしい焼き目がついた真っ赤な皮のパリッとした歯応えがいいアクセントになってて、まだ温かい果肉はトロリとジューシー。焼いた事で甘みがさらに増してるけど甘すぎず、まるで蜜のよう。でもりんご本来の酸味もまだしっかり感じられて・・・んまぁぁぁい!!」


「キトル様、なんか表現がすごいっすね・・・ちょっと一口くれません?」


「やだねっ!これは私のだいっ!」


「キトルさまぁ〜ワタクシにも〜」


「い〜や〜だ〜!」


「あの、母が後ろから追加で持ってきてますんで・・・」


ケトのお母さんが持ってきた焼きりんごで、出発前にプチパーティが開かれる。


あ、晩ご飯は食べ損ねたけど朝ご飯はしっかり食べてるよ。


まぁ甘いのは別腹よね〜。


「これは・・・ただ焼いただけなのに、シンプルな技法とは裏腹に美味しさが凝縮されていて、何と素晴らしいデザートなんだっ・・・!」


感動してる料理長にこっそり近づく。


「これにバターを一欠片乗せると・・・凄いよ?」


「何っ・・・?!」


ふふふ。次に来る時が楽しみだね。


「キトル様、次にお会いする時には、もっと勉強もして、もっと剣術も学んで、強くなっていますので!」


「ふふ。うん、楽しみにしてるね。」


男の子ってわかってるけど、可愛いねぇ。

本人には言わないけど、弟が居たらこんな感じなのかな〜


「それでっ!もし、世界が緑でいっぱいになって、キトル様の旅が終わったら!その時は僕とっ!」


「ダメだっ!」


うわ、びっくりした。

突然何よ、ナイト。


「お兄ちゃんは許しませんっ!」


・・・誰が、誰のお兄ちゃんだ。


「ケト!お前にはまだ早い!もっと強くなって、俺を倒してからにしろ!」


いや何の話してんのよ。


「・・・わかりましたっ!絶対、絶対強くなります!」


何がわかったんだ?


「うむ。楽しみにしてるぞ」


・・・何か、二人の世界だな。


まぁ仲良き事は良い事だ。


じゃあ、そろそろ向かおうか。


「使徒様〜!いつでもお待ちしてます〜!」


「ナイトさん!期待しててください!」


「ヘブンちゃ〜ん!また来てね〜!」


歩き出し、みんなの声が遠くなっていく。


最初はロクな事がないかと思った伯爵領だったけど、来て良かった!


途中の集落にも薬草畑の様子を見に寄ると、どこも順調に収穫出来てるみたい。


モーリュ草も改良を加え、栄養いっぱいの葉っぱに、種をタンポポみたいな綿毛になるようにしてみたんだよね。


一人で歩き回るだけじゃ流石に限度があるんだもん。


これで、歩いて入れない森の中なんかもモーリュ草が生えて栄養のある土になるはず。


子供達も前来た時より元気だね〜。


「使徒様が作ったお野菜、食べてもすぐまた出来てるんだよ!」


「美味しいからいっぱい食べちゃうんだけど、すぐにまた食べられるからお腹いっぱい食べられるんだ!」


へぇ?またすぐに大きくなってるのか?


「前の使徒サマの時もそうでしたねぇ。しばらく食べ続けたら普通の野菜になるみたいですけど」


ヘブンが横から教えてくれる。


はは〜ん?

つまり、皆んなを元気にする為の野菜なんだな?


って事は、おばあちゃんの所の野菜やバナナもしばらくは大丈夫そうだね。


一回寄ろうかと思ってたけど・・・


「ばあちゃん達は大丈夫っすよ。皆しぶといし、元気にやってますって。先に進みましょ」


そっか、ナイトがそう言うなら大丈夫だね。


栄養が偏らないよう、他の集落と野菜をやり取りして食べるように伝えながら進んで数日。


ここから先は公爵領。


さぁ、ダンディな公爵さまに会いに行ってやろうじゃないの!

評価頂けると嬉しいです!

よろしくお願いします。

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