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エピソード 146

「最後の願いはぁ~・・・私の、従者二人のお願いを叶えてあげてくださいっ!」


じゃ~ん!って効果音が付きそうなポーズ、両手をナイトとヘブンの方に向ける。


「えっ?!俺っすか?!」


「ワタクシも?!」


二人ともビックリしてる。サプラ~イズ。


「私が旅を始めた時から、ずっと一緒に支えてくれたんだもん。このくらいのご褒美はあってもいいじゃん?」


ナイトとヘブンが、二人で顔を見合わせて、顔を近づけると何か話し始める。お?私には内緒の話か?


「・・・キトルは、キトル自身の願いはないのですか?」


桜の小枝を持ったまま雛人形カミサマが私の視線の高さに浮いて聞いてくる。


「んん〜?う~ん・・・考えてたんですけど、ないんですよねぇ。美味しいもの食べて、行きたいとこ行って、やりたい事出来りゃそれで。敢えて言うなら、初めてのトコに行くの楽しかったし、それかな?でもカミサマに頼む事でもないし・・・」


『元の世界へ、戻りたいとは思わないのですか?』


『え?あ~・・・特に思わないんですよ。前世でも、まあダラけた生活はしてましたけど、その時その時で自分がやりたいように生きてきたんで、悔いとか思い残しもないんです」


テリーナさんの壁画にあった前世の光景を見て、涙が出るほど懐かしいと思ったのは本当だし、淋しいと思ったのも本当。でも戻りたいかって言われると、別にいいかな~っていうのも本当。

特に、あっちの世界に未練はないんだよね。


『あっ!でも、もう使徒としてのお役目が終わっちゃったけど、この力を返さなきゃいけないとか、そういうのあります?!コレ、無くなったら不便だし!』


『あらあら、うふふ。そんな事はありませんよ。その力はもう既にあなた自身の物。取り上げようがありませんもの』


フワフワと笑う愛らしいカミサマ。胸に抱いた桜の小枝が非常によくお似合いですこと。


「「決めましたっ!」」


ナイトとヘブンが、大きな声を出す。


「キトル様、これからも、旅を続けるんですよね?!」


「え、うん、行きたいとこに色々行ってみようかな~とは思ってるよ」


突然私に話を振られてビックリ。私にお願いじゃないよね?


「じゃあ、キトル様がいいというまで、俺らの身体を、病気や怪我でキトル様をお守り出来なくなることがないような体にしてください!」


「ワタクシも同じでお願いしますっ!あ、あと、ワタクシはお肉が食べられるようにもなりたいですぅ」


「あっ!ヘブンずるいぞ!じゃあ俺は筋肉が付きやすい身体に・・・」


おい、ちょっと感動しかけたのにこの感情どうしてくれるんだ。


ってか君達はそれでいいのか?


「なんか、もっとこう、ほら、大金持ちになりたいっ!とか、永遠の命が欲しい!とかそういうのじゃなくて良かったの?」


「いや~身の丈に合わない金なんて持ってたらロクな事ないっすよ。永遠の命なんて、モルモル見てたら欲しいとも思わないですし」


「おいっ!そうれはそうかもしれんが!」


横で大人しく成り行きを見守ってたモルチ、片手でナイトを軽く叩いてお手本みたいなツッコミ。


「ワタクシも同じですねぇ。でもキトル様達が食べてるの見て、ちょっとお肉も食べてみたいと思うようになりましてぇ~」


それはカミサマにお願いするようなことなの?願いを叶えようって言われて食わず嫌いの克服って・・・初めて聞いたわ。


横から楽しくてたまらない、というクスクス笑いが聞こえてくる。カミサマ、意外と笑い上戸だよね。


「アナタ達の願い、賜りました。キトルと共に過ごせる身体を授けましょう」


ニコニコと笑顔が弾けるカミサマ。


「さて、それでは・・・」


「あぁっ!忘れてた!カミサマに聞きたい事あったんだた!」


思い出した!お願いされてたんだった!


「カミサマ!ちょっと聞きたいんですけど、メスドラゴンってどこにいるかわかります?!」


「・・・はい?」


忘れてた~!っていうか出会ってないから思い出しようがなかったんだけど、階段上ってる時に考えてたんだよね。ガーデリオンの言ってたメスのドラゴンってどこにいるのか聞いてみようって。


「ドラヴェリオン帝国のドラゴンのガーデリオンが、番になるドラゴンの女の子探してて・・・って言わなくてもわかってるのか。見てたんですよね?どこにいるか知ってます?」


「・・・」


カミサマが、口元に手を当てて思案中。雛人形サイズだから、指も細小っちゃいなぁ!


「ドラヴェリオンのドラゴンだと?あの粗暴で礼儀知らずのトカゲ野郎か」


ん?モルチが超嫌そうな顔してる。


「あ奴は、事もあろうかテリーナ様に恋慕するような振舞いをしておったのだ。だからあの国に異種族間の婚姻は不吉だと噂を流しておいたのだが・・・今さらになって番を探そうなどとはなんと移り気な・・・」


おい、お前のせいか。別の種族同士では結婚出来ないようになってたの。ってか単なる噂が法で定められるようになったって、時間の流れは怖いな。


「・・・そうですね。そうしましょう」


カミサマが小さな声で何か言う。なんて?


「キトル、アナタの小さな願いと、ガーデリオンからの頼みも一緒に解決出来るのですが、いかがでしょう?」


「え、私の?小さな願い?」


「ええ、そして、私からのお願いでもあります」


????はてさて、何のこっちゃ。


「よくわかんないけど、出来る事ならやりますよ~」


カミサマが、にっこ~り笑う。ん?何か含みのある笑顔だな・・・?


「従者ナイトよ。もう一度、私の小枝を切っていただけますか?」


「え、あ、へいっ」


そう言うと、ナイトがさっきと同じように桜の小枝を切り落とす。


「切りやした」「はい、ではこちらに」


すう~っと地面に降りた神様が、私が作ったのと同じようにミニパクちゃんの頭だけを作る。カミサマも作れるのね~って当たり前か。ところで、コレは何を・・・?


もう一つ、携帯桜の樹を作ると、右手を上に伸ばすカミサマ。


すると、私の頭上から、もう一人雛人形カミサマが・・・え?もう一人カミサマ?


「「うふふ。初めての事に挑戦するって、楽しいのですね」」


声がハモって聞こえる。これ、どういう事?


「「さあキトルとその従者達よ。旅立ちましょう」」


二つの声が重なって聞こえると同時に足元に冷んやりとした風が当たり始め、一気に強い強い風が足元から空へと吹き始めた。


ヒュウ~・・・ゴウッ!!!


「うわっ!コレ何・・・ひゃあ~っ!」「キトル様っ!」「二人共、私の尻尾に掴まってくださいっ!」


強い風に吹き上げられ、一瞬で桜の樹がある山の頂上よりもずっとずっと上空へ飛ばされる。逆さまになって落ちながら、何とか近くにいたヘブンの尻尾に掴まると、ヘブンが大ききくなってくれた事に気が付いた。ナイトも背中辺りにしがみついてる。


でも、すご、い、スピードで、落ちて、る~っ!!


これ、このまま落ちたら大変な事になっちゃうんじゃないの~っ?!

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