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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
セラフィア聖神国編

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エピソード 137

「だからぁ、神様の力を盗んじゃったんだから、返してごめんなさいするのが筋だって話でしょ?」


「しかし、モルチはキトル様を害そうとしていたのです。かような者と共に神々の山に向かうなど・・・万が一御身に何かあれば、人々はまた救われないのですよ」


私の独断と偏見による判決に不服な様子の大神官達を代表して、セリオスさんが異議を申し立て中。


「じゃあ連れて行かないとして、セリオスさん達はモルチをどうするの?」


「それは・・・どこか、牢に投獄したり人目に付かない場所へ幽閉するなど・・・」


「モルチ、死なないってよ?ず~っと、百年も千年も?」


「・・・そ、それは・・・」


「ほらぁ~手に余るでしょ?!それに、悪い事考えるやつがモルチを利用するかもしれないし、草が一本あれば改造して牢屋も出ちゃうかもじゃん。だから、私が引き受けるよってば」


「で、でもですね」


「わたしは行かんぞ。引きずって連れて行ったとて、力を返すつもりはない。あの方にもう一度会う。自分の望みがはっきりした以上、死ぬわけにはいかんのだ」


モルチがグルグル巻きのまま、ふんっとふんぞり返っている。さっきまで泣いてたってのに、もうふてぶてしい態度。


「ばぁっかだねぇ、モルモル!」


は~やれやれ、とナイトお得意のポーズで肩をすくめて首を振って見せる。


「なんでずっと待ってるのさ!待ってろって言われたわけでもないでしょうに」


「・・・は?」


目と口を丸く開けて、静止画になるモルチ。


「千年も待つくらいなら、会いに行けばいいじゃん!来るか来ないかわかんない人待つより、自分から行った方が早いよ!」


「は・・・いや、しかし、え?・・・だ、だが、わたしが死んだとて、テリーナ様に会えるかどうか」


「そうそう、だから、私がお願いしたげるよ。私、これといったお願い事ないしさ」


「えっ?!」


今度は別の方向から声が上がる。ナイトだ。


「こんなのに使っちゃっていいんすか?楽しみにしてたじゃないっすか」


「ん?あ~まぁいいよ。私のお願い事って、自分でも叶えられるし」


「えぇ~・・・?うん、まぁキトル様ならそう言いますよね。キトル様がいいならいいんすけど・・・。ちなみにどんなの考えてたんすか?」


「一生ご飯に困りませんように、とか、あとグラマラスでファビュラスでグッドルッキングな美女になりますように〜とか」


「・・・神様にお願いする事じゃないっすね」


ちょっと呆れたように笑うナイトに「キトルさまの言う事に間違いはありませんっ!」と胸を張るヘブン。私のはいいから二人のお願い事は聞いてくれないかなぁ、神様。


「ほ、本当に・・・願いを、わたしの為に使おうとしてるのか・・・?」


「うん、そう言ってるじゃん。ホントに神様がどんなお願いも聞いてくれるんなら、テリーナさんに会えるよ、モルモル」


ボロボロボロボロと大粒の涙をこぼし始めるモルチ。この人、意外と泣き虫だなぁ。


「お、お前を排除しようとした、わたしをっ・・・神の使徒とは、かくあるべきなのか・・・!」


「お使いの人まで型に嵌めたんじゃ、神様も困るんじゃない?私はやりたい事をやりたいようにやってるだけよ」


ゴンッ!


固い大きな音がして思わず飛び上がる。


大神官達が、皆同じように胸の前で腕をバッテンにしてオデコを固い床に付けてる。さっきの音、もしや全員の頭突きでは・・・?


「その御心と慈悲の深さに、我らは神々の威光を目撃いたしました。その御業は人の知を超え、我らが積み重ねし祈りさえ及ばぬ高みにある。まさに神と共に在す御方・・・この時代に生き、この瞬間を仰ぎ見る幸運を、我らは魂の深奥より讃えましょう」


「もう何言ってんのかわかんないDEATH」


あっ無意識にDEATHって言っちゃった。いくらセリオスさんが超イケメンでも流石にちょっと気持ち悪くて、つい。


「キトル様ついに大神官達まで篭絡しましたねぇ」「流石ですっ!キトル様の素晴らしさがどんどん広まっていきますね!」


従者二人はニヤニヤニコニコ。


「ふ、ふははっ。もし、お前が神となるなら、わたしもそこに入信させてもらうとしよう」


モルチも泣き笑いで従者ズに同意する。


「モルモル・・・笑ってるけど、私はテリーナさんにすぐ会いに行け、とは言ってないからね?」


「・・・えっ?!」


明らかにショックを受けた様子のモルチ。


「さっき言ったでしょ?『悪い事をしたら』?!」


「え、あ、謝って、罪を償う!」


「そう!だから、モルモルは、力を神様に返した後ここに戻って、自分のせいで人生を狂わされた人達に謝罪して、ちゃんと罪を償わないとダメだからね!」


「そ、それは・・・」


「じゃないと、ちゃんと胸張ってテリーナさんの元に行けなくない?」


「・・・そうか。そうだな。わかった。取り返せない過ちもあるかもしれないが、自分に出来る限りの償いをしよう」


「うんうん。まぁモルモルがいなくてもそのうち捕まってそうな人もいるから、そこは臨機応変にね。セクハラ伯爵とか悪コスとか」


「多分ドルムンタ伯爵とドルコスの事です」


ナイトの訂正が入るけど、わかるし良くない?


「ああ、約束する。力を返した後、わたしの命がどれほど残っているのかはわからないが、テリーナ様に会えるのならば残りの人生は償いの為に生きよう」


真っ直ぐに私の目を見るモルチの瞳に、もう迷いも濁りもない。


「よっし!じゃあさっそく・・・」


「すぐに向かうのかっ?!」


濁りどころかキラッキラの目で見てくるじゃん。やめろやめろ、期待を込めた目で見るな。


「私この国について真っすぐここに来たから、まだなのよ」


「・・・?何がだ?」


「神様に会いに行く前に、まずこの国を癒さなきゃなの!」


「そ、そうか、それはそうだな」


髭もじゃもじゃなのに顔にガッカリって書いてあるじゃん。どうやってんの、その表情。


「だから、モルモル・・・例のアレがある場所、教えてもらおうじゃないのっ!」

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