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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
セラフィア聖神国編

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エピソード 133

「セリオス様!右です!」


「危ないぞ、ナベリウス!気を付けろ!」


「ゴラン!キトル様の所に行かせるな!」


あれ、ゴッさんいるじゃん。いつ来たんだろ。


敵と味方がごちゃ混ぜになった広場で、私の方に来ようとする敵、それを阻止しようとする味方、それに無関係な逃げる人達・・・。


「キトル様、馬車から降りないで下さいね」


私の座ってる馭者席の左側にナイト、右側にはヘブンが臨戦態勢で控えている。


さっき信者らしき人が二人襲い掛かってこようとしたけど、ナイトが剣も使わず殴って気絶させちゃった。ナイトってば意外と強いよねぇ。


しかしこれ、どうやったら敵だけ捕まえられるかなぁ・・・


「ねぇナイト、これさぁ、無害な人はこっち側、モル神信者はあっち側~って出来ないかな?」


「え?えぇ~?・・・いや無理じゃないっすか?隠れてるモルティヴァ信者がまだいるかもしれませんし」


あ~確かにそうかぁ。


「じゃあ仕方ないね。セリオスさん!ごめんよっ!」


「えっ?!キトル様何かおっしゃいましたか?!」


セリオスさんが振り向いて嬉しそうな顔をしてるけど、無視して両手を前に出す。


もみくちゃになってる人達の頭上、モルチが縛られてる位置よりも下に、広場と同じ大きさの網を作り・・・


「おりゃっ!」


投網!投げてないけど!


「うわぁ!なんだコレは!」


「こんなもの・・・うわっ!くっ付いたぞ?!」


逃れようともがくと、さらに身体にへばりついていく網。


「ふっふっふ。その網は取ろうとすればするほどネバネバが絡みつき、動けないネバネバがめっちゃネバネバするネバネバした草で作っているのだ!」


「あ~ドラヴェリオンで守護隊に使ったやつっすね・・・セリオスさんたちまで絡まっちゃって、か~わいそぉ~」


ナイトがう~わ~って顔してる。ダイジョブダイジョブ、セリオスさん、私の好きなようにしていいって言ってたし。


「この偽物め!これを外せ!」


「使徒様!自分はモルティヴァ信者などではありません!」


「無辜の民にこんな仕打ちをするとは・・・それでも神の使いか!」


あっちこっちから怒号が飛んでくるけども。


「次は、全身の毛が抜ける水かけるよ?」


とにっこり言うと、頭がつるりんとした大神官からひゅっと小さく息をのむ声が聞こえ、皆一斉に大人しくなった。


「大体ねぇ、いい歳した大人がわちゃわちゃわちゃわちゃ!今からこのオッサンと話があるんだから、全員大人しくお座りしときなさい!わかった?」


「こ、これが神のご意思なのだ!全員、その場を動くでない!」


と網の下から同じく動けないセリオスさんが叫ぶ。


「さ、モルモルさん、もうジャマは入らないからお話しさせ・・・何言ってんの?」


モルティヴァ神のモルチの方へと向き直ると、追い詰められてる状況なのにニヤニヤしながら何かブツブツ呟いている。


「@d#fpおwせ!・・・ふはははは!お前の負けだ、使徒よ」


「モルモルさん、頭大丈夫?」


「誰がモルモルだ!・・・もうここの大神殿にいる者はだれ一人助からぬ。このわたしを除いてな!」


「自分だけグルグルのモルモル巻きだから?」


「黙れっ!」


ちえっ、煽ってもダメか。


なんで皆死ぬみたいな事言ってるんだろう。また毒みたいなの撒いたのか?


「キトル様っ!」


全然違う場所から呼ばれて、顔を声のする方へ向ける。どこだ?


右奥にある塔の下辺りから大きく手を振りながら走って来る人影。誰だ?


「ダビオさんっすね」


「あれ?なんであんなとこから?」


「ダビオさんには別で動いてもらうようにお願いしてたんすけど・・・ゴランさんの馬車と入れ替わってたのか。あっちの方が乗せてる人数軽いからか?」


ナイトが説明しながら自問自答してる。


「秘学塔を調べて、モルチの関係者である証拠を調べてもらう手筈になってたんすよ」


「逃げてください!塔の上に、うおっ?!何ですかこれ?!」


網で大漁、じゃない大量に捕まえた人達を見て驚いてる。


「あ、それどころじゃないんです!塔の最上階に、火薬の詰まった巨大な実がいくつも保管されてて!今降りてきたら、入り口にあった魔道具が動き出して、階段を昇り始めたんです!あのまま一番上まで行けば、ぶつかって爆発します!」


うんうん、とっても簡潔で分かりやすい説明ありがとう。そうね、外から見ても分かるくらい、ガタゴトと壁の破片を飛ばしながら塔の上に向かってナニカが昇っていっているね。


おかげで、広場にいる皆さんにも状況が伝わったからさ、ほら、網の下が大パニック。


「何ですって!早く、早く出しなさい!」


「この網を外せ!」


「モルティヴァ様!我らを見捨てるのですか?!」


あらまぁ、信者も怒っちゃってるじゃん。


「モルモルさん、いいの?見捨てられそうよ?」


「神の為に全てを捧げるのが信者というもの。それはどんな神に仕えようと変わらぬ」


「え~良かった、私信者じゃなくて。ってか爆発したらモルモルさんも死ぬんじゃないの?」


「死がわたしの元を訪れる日は来ぬ・・・どれだけ待とうとな」


ん?死なないの?死なないのに他の人達と一緒に居たの?それは・・・辛くない?


「モルチ様っ!」「様っ!」


あぶなっ。後ろから突然叫ばれたから、前にコケそうになっちゃった。


「な・・・お前達・・・」


モルチが見つめるのは私が乗ってきた宣伝馬車の後ろ、荷台に取り付けた黒色の鳥カゴ。


皆がバラバラに大神殿に向かうとなった時に、新しく作ったやつ。


危険だからと別の場所で待ってるようにと何度言っても一緒に行く、と聞かなかったドワーフ兄弟のスレイガーとマルゲン。


仕方なく、外から見えにくいように網目を細かくした鳥カゴに入れて声を出さないように約束したんだけど・・・。


「モルチ様っ!嘘ですよね?!モルチ様が悪い奴なわけがないっ!」「ないっ!」


「何故だ、何故ここにいる?!使徒!貴様が」


「勝手に襲ってきて付いてきたんだってば。モルチ様がいい人なのをこの目で確認するんだ~!だって」


「そ、そんな・・・スレイグ、マルゴード・・・」


ん?あの子たちの名前、違くない?誰?


「逃げろ!お前たちが・・・お前たちが居なければ、またテリーナ様が・・・!」


「キトル様!そろそろホントに危なそうっす!」


ナイトの声で塔を見上げると、ガタゴト振動してる部分がかなり上に来てる。


仕方ない。モルチの言葉の真意は、後でじっくり聞き出してやろうじゃないの!

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