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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
アルカニア王国編

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エピソード 13

「キトル様〜!ここら辺っすか?!」


「違う違う!!もっと左!あ~っそっちは右〜っ!」


「もういいですかっ?!ワタクシ掘り始めますよっ?!」


昨日、伯爵領を薬草名産地にすると決めてから、お屋敷に戻ってロンドさんに相談して計画を立ててきた。


今の農地は食糧問題があるからある程度はそのままお野菜を育てる必要があるらしい。

でも、昨日のお家みたいにもう畑として全く機能してないような所には、荒地に強い薬草を育てる方がプラスになるのでは?という結論に至った。


そこで、まず昨日の子のお家にまたお邪魔して、畑を拡大して色んな薬草を作ってみようぜ!という事で・・・


現在、

畑を拡大する場所に目印の杭を打つ係のナイト、

土を掘り起こす係のヘブン、

薬草を生やす係の私キトル、

現場監督ロンドさんでお送りしております。


「あ、あの、自分は何をしたら・・・」


所在なさげにウロウロしてる昨日の女の子。

名前はケト、というらしい。


「まだお母さん全快じゃないでしょ?こっちは私たちに任せてそばについててあげなよ。」


「・・・!はいっ!」


頭を下げて嬉しそうに家に入ってく。


「さて、ちゃっちゃとやりますか!」


緑の手のスキルも、畑を拡大したり、杭打ちや種類別にロープで区切ったりはしてくれないもんな~。

これは人の手でやらなきゃね。


「ここを小さな領地に見立て、エリア分けして薬草の種類を変えていきましょう」


小さな領地、つまりこれから回る領地のミニチュア模型みたいなもんだね。

どこに何を植えるか決めとけば回りやすいもんね。


「領地全体で様々な薬草を作ることが出来れば、伯爵領だけでなく国も、いずれは世界で困っている人たちの助けになります」


ロンドさんが計画図を手に語っている。


「伯爵様はおそらく失爵されるでしょう。幼少期からおそばにいたのに止められなかった私の責任でもあります。・・・緑の使徒様にはこのような形で償う機会を与えてくださった事、本当に感謝してもしきれません」


も~ロンドさんってばすぐ湿っぽく語りだすんだから!


「昨日から何回も聞いたよぅ~。それより、早くナイトにあっちの区切る場所の指示出してあげて?」


アゴで指した方では、ヒモを持ったナイトがウロウロしてる。


ちなみに私は今擦り傷・切り傷用の薬草を作ってて、ナイトの反対側では新しく広げた場所をヘブンが掘り返してる。

・・・ヘブン楽しそうに「うひょ~!」って言ってるな。

掘りすぎて後ろに山が出来てるから、あとで均さなきゃ。


擦り傷・切り傷用の薬草はすり潰してそのまま塗ってもいいし、加工するなら軟膏タイプかな。

打撲用の湿布薬の大きな葉は乾燥させて、貼るときは水に濡らしてから。

風邪薬の薬草と、頭痛&解熱鎮痛剤の薬草は粉末にして、そのままでも粒状に加工しても。

胃腸薬の種にノド用のシロップの実、あとはケトのお母さんに作った毒消しの点鼻形態の実と~・・・


「・・・キトル様って、やたら知識がありますよね」


「そうかな?あ、ねぇロンドさん、あと何がいるって言ってたっけ?」


「あとは従来のポーションの薬草でしょうか?あまり見慣れない薬が流通しても、最初は使ってもらえないかもしれませんので」


そうだそうだ、ポーションの材料だっけ。

・・・ん?ポーションの材料の薬草ってどんなのだ?


「ねぇ、ポーションの薬草って私知らないんだけど」


「え?!なんでっすか?!他のはホイホイ作れるのに?!」


「だって知らないものは作れないよ~。自分で適当に作ってもいいけど、それじゃ今あるポーションとは別物になっちゃうじゃん?」


「まぁ・・・それはそうっす・・かね?」


「ではこのエリアはいったん空けておきますか」


ケトの家のそばで待ってたヘブンの元に戻ると、土の付いた尻尾を振り振り。


「終わりましたか~?!」


ヘブン、黒毛なのに汚れてるのがわかるぞ?

後で子犬サイズになって一緒にお風呂だな。


ドアが開いて、ケトに支えられたお母さんが出てきた。


「緑の使い手様、皆さま、ありがとうございます。私の事も、畑の事まで・・・」


「こちらこそ、伯爵家に仕える身として、領民の皆様の生活がここまで苦しくなるまで放置してしまい申し訳ない」


「そんな・・・!わたくしたちの方こそこんなに良くしてもらって・・・!」


「いえ、本当に・・・」


これいつまで続くんだろ。

ほらお互い頭下げるもんだからお母さんの頭地面につきそうじゃん。

ケトなんて支えてられずに倒れそうだし。


にょきにょきっ。


「ね、そろそろ休憩しよ~」


後ろに生やした木からリンゴを一つ取って、提案した。



「キトルさまっ!これっ!これ美味しいですっ!ワタクシ付いて来て良かったです~っ!」


次から次へと大きな口に放り込んでるけどさ、もしかして私に仕えてくれてるのは食べ物が目当てなのか?

みんなで家の横、フサフサになったモーリュ草の上に座って食べてるけど、ヘブンだけは食べっぷりが良すぎて飛び散ってるからちょっと離れてる。


「これホント美味いっすね・・・いやどれも美味いんすけど、この味は一番好きかもしれないっす」


ナイトはリンゴが一番好きなのね。

ロンドさんもいたく感動してる。


「これは・・・屋敷の者たちにも持って帰ってもよろしいですか?そのままでも美味しいですが、料理長などはデザートにしてみたいと言い出しそうですな」


「いや、これはこのままが一番美味いっすよ」


「いえいえ、我が伯爵家の誇る料理長の腕にかかればさらなる高みを発見できるはずです」


「ほほう・・・それは楽しみっすね・・・」


君たちは何の話をしてるんだ。


ケトのお母さんは回復途中だから、ケトがすりおろしたリンゴを食べて、


「こんな美味しい物は初めて食べました!」


って喜んでくれてる。


うんうん、顔色も昨日とは比べ物にならないくらい良くなってきてるね。

ん?あれ?

昨日ってか、さっきより良くなってきてない?


「お母さん、そんなに食べて大丈夫なの・・・?」


「え、ええ、何だかさっきよりも体調が良くて・・・」


「・・・あっ!キトル様!ばあちゃんの!目ぇ治したでしょ?!もしかしてこれもじゃないっすか?!」


あ~・・・そういやそうだったね。


ナイトがロンドさんに説明してる。


「では、この実はポーションのような作用が?」


「あの、それは違うかと・・・ポーションでしたら傷も治りますよね?この手の傷、昨日食べた草を取った時についたんですが治ってないので・・・」


ケトのお母さんが手の平の傷を見せる。


「まぁ多分、キツい時にも食べられて、栄養たっぷりって感じなんじゃない?」


確かりんごってそんなんだよね。

一日一個食べたら医者いらず的な。


「美味しくて、身体によくて、元気になれるなんて凄いですっ・・・!」


ケトの反応は新鮮で可愛いなぁ~。

ニコニコして見てたら、目が合った。


赤くなって目をそらされる。

あれ、照れてるのかな?

か~わい~い。


「あのっ!緑の・・・キトル様は、しばらくこの領内を回られるのですよね?!」


「ん?そうだよ~」


「僕も一緒に、この近くだけでもいいので付いて行ってもよろしいでしょうか?!」


僕?


「あ、おいケト、それは従者の俺を通さないとだな・・・」


「それは名案ですね。私はこの通り老体ですので同行するのは難しいですし、代わりにケトさんが植える予定の薬草の種類など指示していただけるのは助かります」


「は、はいっ!」


「お、おい、まずは俺を通して・・・」


「ワタクシの背中にはキトルさまを乗せますので、歩いてくださいね!」


「働きぶりによってゆくゆくは領地全体の収穫量の計算などを教えていく、いうのもいいですね」


「まぁ!うちの息子がそんなお役目を・・・!」


息子???

ケトって男の子だったの?


「わかったよ、わかった!この領地を回る間だけだぞ!」


「やったっ!ありがとうございます!」


ちょっとみんな?

主役を置いてきぼりにしないでもらおうじゃないの?!

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