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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
セラフィア聖神国編

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エピソード 126

「いや、絶対嘘でしょ」


「嘘じゃないですよ」


ニコニコ笑顔の少年神官ことダッ君。


「い~や、私は信じないからね!」


「別にキトル様が信じなくてもいいんじゃないっすか?」


移動中の馬車の中。神官の三人が一緒に聖都まで行くことになり、交代で馭者をしてくれるおかげでナイトも馬車の中で一緒に座ってる。


ただ・・・今はゴッさんが馭者なんだけど、何故か「鍛錬になりますので!」って、馬車を引っ張るヘブンと交代してる。


ピンク人間入りの鳥かごを乗せた荷車とメルヘンな馬車(喋るお花が付き)を引っ張って走るマッチョマンに馭者席に座った子犬・・・。


もうこれ以上シュールな絵面を作り出さないで欲しいんだけどなぁ。


「そう言われても、ホントに僕が一番年上なんですよ~!」


一番年が近いと思ってたダッ君が、全員の中で一番年上という事実・・・ワタシシンジラレナイ。


「本当ですよ。ダビオは孤児として育ち、成人してからは盗賊団に身を落とし、そこで斥候をしていまして・・・。わたくしが神官になってすぐの頃、盗賊団がオークに襲われているのを助け出したのが縁で聖職を志し、私の元に来たのです。だから、わたくしよりも年上なのですよ」


セリオスさんが遠くを見るように話す。へぇ、ダッ君も意外と苦労人なのね。


「いや~、お恥ずかしい。でもあの時のセリオス様、まだ幼さの残る可愛い顔してたのにオークに躊躇なく強化した槍を刺しまくってて・・・あの返り血の付いた綺麗な顔を見て、この人に付いて行こうと思ったんですよ」


うん、この人も変な人だった。どちらかと言うと変態寄りの。こらこら、うっとりするんじゃない。


「セリオス様はこの通り非常にお美しい為セリオス様付きの神官を希望する者が非常に多く、そのせいか周囲の人間も癖が強いのですよ・・・キトル様に不敬な態度を取るようなことはないかと思いますが、何か失礼な事があれば大神官次官としてすぐに罰しますのでおっしゃってください」


そう話すのはインテリ七三神官のナーさん。今はもう眼鏡をかけてない。


昨日泊まった最初の村におじいちゃんおばあちゃんが多かったので、ブルーベリーを山盛り作ってあげてナーさんにも食べさせたのだ。


そして例のごとく視力回復したナーさんは、私の役に立とうとキラキラしてた目で見てくるようになっちゃった。


癖なのかたまに目の横をクイクイやってるのはちょっと面白い。


「まぁ何言っても一番年下なのはキトル様で間違いないっすよ!」


はっはっは、とナイトが笑うから、馬車の揺れに合わせて思いっきり足を踏んでやった。ふんだ、精神年齢ならナイトより上だっての。


「も~ナイトのせいでお腹空いてきちゃったよ。そろそろお昼ご飯?」


「それ、俺のせいなんす」


バシッ


・・・なんか変な音がした。何の音?と耳を澄ませてみると。


ひゅるるるる・・・バシッ


「キトルさまっ!火矢が飛んできてますっ!」


馭者席の小窓に背が届いてないヘブンが前足だけ覗いた状態で叫んだ。


何ぃ?!私の可愛いメルヘン宣伝カーに何してくれてんだ!


「右斜め後ろですっ!」の声で窓にへばりついてみると、いくつもの光が飛んできているのが分かる。


「「セリオス様!」」「ああ。お前たちはキトル様を守りここにいろ、私とゴランが身体強化をし」


「あぁ、行かなくていいっすよ。もう大丈夫っす。ですよね、キトル様?」


立ち上がったナイトがもう一度座り直した。


もちろんよ。だってこのキトルちゃんが、どこで何してるのか見ちゃったからね!!


火のついた矢は危ないから消さなきゃだし、まずはこの馬車の上に大きな大きなちゅーリップ。


ん?チューリップじゃないのかって?いやいや、ちゅーの形をしたリップの花!


尖らせた口の形をした花からは水鉄砲が飛んで、馬車に上に落ちた火矢や飛んでくる矢を消火してくれる。


幸いメルヘン馬車の草花はイキイキしてるし、その中にはアイスエルフの王様が作った氷の馬車が隠れてるから燃え移る事はない。オネエルフ陛下に感謝感激ぃ。


そして小高い丘の向こう・・・火矢が飛んできてる辺りに犯人?がいるはずなので、ドラヴェリオン帝国で作った逆バンジーの改良版を。


空中から伸びるツタはカーテンのように数十メートルの長さで丘一面に垂れ下がり、一つ一つが意志を持ったようにウニョウニョと蠢く。


そのまま数秒眺めていると、小さく「あぁ~・・・・」の声と、二人の男が空に飛びあがりビヨンビヨンと上下に振り回されているのが見えた。


そのまま放置してたら、逆バンジーのツタカーテンが右から左へと二人の男をバスケのようにパスしながらビヨンビヨン。


「うわぁ・・・」


と神官さん達がドン引きしてる。あれ、やりすぎた?


「追撃もなさそうだし、そろそろ行きましょうか」


ナイトの声で外に出ると、ヘブンを抱っこしたゴッさんが馬車の陰から出てきた。


「あ、あの、馬車の上に奇怪な植物が・・・」


「うん!ちゅーリップちゃんです!攻撃が来たら水鉄砲で迎撃してくれるんで、安心ですよ!」


「あ、そ、そうなんですネ・・・」「キトルさまの作るのは面白いのが多いんですよっ!」


尻尾を振る子犬を抱きしめてるマッチョ。うむ、なかなかイイ組み合わせだね!


「うえ~気持ち悪ぅ~」「これどんな原理なんでしょう?」「神の御業はかくも素晴らしく我々凡人の貧相な想像などはるかに飛び超えて」


馬車を降りた三人の神官も馬車の上を眺めながら口々に感想を言ってる。


「キトル様~!こいつらもカゴに入れときますよ~!」


馬車を降りるなり走って行ったナイトが縛り上げた二人組をピンクカゴにぶち込む。


私の答え聞く前に入れてんじゃん・・・まぁ入れるんだけどさ。


鳥カゴの天井に咲いた花から降り注ぐ花粉で、みるみるうちに二人組もピンク色に染まっていく。


「み、緑の使徒め・・・うぉえっぷ」「あ、口縛り忘れてた」


ナイトがカゴを開けようとするのを手で制止する。


カゴに向かって手を伸ばし、小さなツタを出して最初の二人の猿ぐつわも外してあげる。で、カゴの中に小さな木を生やして小型のリンゴ、姫リンゴを作ってあげる。


「手のやつは外してあげないけど、これならそのまま食べられるでしょ?」


「キ、キトル様?!」


セリオスさんが慌ててるけど、苦笑いだけで返事をする。


聖都までまだ着かなさそうだし、お腹空いちゃうじゃん?向こうに着けば裁かれるだろうし、しばらく落ちないピンク人間にしたから私を襲ったのはもういいよ。


「相変わらず甘いっすよねぇ~」ってナイトが言うけど、その顔は嬉しそう。


このペースだとまだまだ増えそうだけど、誰かが傷つけられない限りは、私らしく甘ちゃんでいってやろうじゃないの!

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