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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
フロストリア王国編

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110/147

エピソード 110

『気が付いた時、私はドラムカズンに住むドワーフの三人姉弟の長女、テリーナでした。親は病気で死に、私一人で弟たちを育てている中、水樽が私達を直撃して弟たちは死に、私は記憶を取り戻しました』


お城のエルヴァンさんの私室の一つ、衣裳部屋という名の色んな物が山積みになった部屋の中。そこに置かれたガラクタの中から発掘されたのは、『ドラムカズン地下神殿壁画』と表紙に書かれたノート。正確には『壁画』が書けなかったのか『へきが』って平仮名になってる。


「アタシには読めないんだけど、確かこのノートは壁画に書かれた壁が剥がれた所のを写したやつでね・・・」


そう言ってノートに付いたホコリを払いながらエルヴァンさんが手渡してきた。


ガーデリオンが来た次の日、身体を休めようとお城に籠る事にしたので、せっかく時間があるのだからとセレナさんが遺した手記を見せてもらう事にしたのだ。


「実はドラムカズンには二回行ったの。旅を始めてすぐにバラグルンに行ったからザルクは復活したんだけど、一度アルカニアに戻って、次にドラヴェリオンに行こうとしたのよ。まぁ結局危険だから逆ルートにしたんだけど、その時にもう一度地下神殿に寄ったら壁紙が剥がれててね。これはその時に写したものなんだけど、あの子描きながら泣いてたのよ・・・。内容は教えてもらえなかったんだけど、あまり良い事が描いてるんじゃないと思うわ。もし嫌なら読まなくてもいいからね」


そんなこと言われて読まない人なんている?読むでしょ!


って勢いよく読み始めて、さっそく後悔・・・。最初っから話が重い。


これ、前々使徒のドワーフさんが壁の下、剥がれた所に書いてたやつなんだ。


お泊りさせてもらう部屋のベッドからソファへ移動して、もう一度ノートを開く。


『最後に覚えているのは、トラックが近づいて来た所。聡さんにプロポーズされて、皆にお祝いしてもらった帰り。ただただ幸せだったのに、なんで』


ここで壁が残ってて読めなくなったみたい。


次のページに行くと、さっきの話の続きではなくなってる。


『聡さんに会いたい』


『なんで私がこんなところに』


『ドワーフなんて、もし前の世界に戻れたとしても気付いてもらえない』


『こんな世界どうでもいい』


『もう死にたい』


『どう死ねば元の世界に生き返れるのか』


『会いたい、戻りたい』


・・・ノートには涙の跡。セレナさんの字が震えている。


前々使徒のドワーフ、テリーナさんは幸せの絶頂でこの世界に転生したんだ・・・。


壁に向かって悲痛な思いをぶつけるテリーナさんを想像すると、心が鷲づかみにされたような苦しさを感じる。


身内らしい身内も親しい友人もおらず、転生しても能天気にやったるで~なんて考えてた自分では理解してあげられないのは当然だけど、それでもそのつらさは本人じゃない文字からも伝わってくる。


自然と浮かんだ涙をこらえながらページをめくる。


『ここの洞窟にこもって何日経ったんだろう。幼馴染のモルチが食事を持ってきた』


『モルチに誘われて、外に出てみました。王様にも初めて会ったけど、ちゃんと私の目を見て弟たちを助けられなかった事を謝ってくれました』


『知らなかったけど、この世界は滅びようとしてるって・・・私だけがこの世界を救えると教えられました。きっとこのために私は転生したんでしょう』


『どうせ死ぬのなら、モルチや王様たちを救ってから死のうと思う。ちゃんとここで出来る事をやって、それから聡さんに会いに行きたい』


テリーナさんが、周りの人のおかげで立ち直っていく様子が分かる。良かった、良かったねぇ・・・。


もう号泣。こういう人情味に弱いのよ・・・。


さらにページをめくる。また壁が剥がれてる所が残ってたのか、話が変わってる。


『後世にまた生まれるであろう転生者の為にこれを残します』


え、これは・・・世界を救って戻ってきた後・・・?


私が知らないことが書いてあるかも!!


逸る気持ちを抑えながら読み進める。


『次に現れるのはおそらく千年後だろうから、今とは色々違うかもしれませんが・・・。セイクリッド山からから流れてきている、花の形をした石にせき止められている水を大陸中に行き渡らせてください』


んんん・・・?


『最後の石に力を与え緑が戻ると、ずっと霧に隠れていたセイクリッド山が見えるようになります。聖神国の神殿の奥に古くからある緑の無い道が続いていて、そこからしか向かうことが出来ない、辿り着けないようになっています』


えええ・・・?


『上った先には』


・・・はああああ?!終わり?!


何これ?!めっちゃ大事なところで見えなくなったって事?!


ってか、超重要な事が書かれてるのでは?!


石は、えっと何だって?山からの水をせき止めてた?あ、アレか、あの温かい水か!あれって山からの水なのね!湧き水的な?


で、その水が地脈だっけ?あのお花の形の石でせき止められてて、スキルパワーで水をじゃんじゃん流したら石が小さくなって、大陸中が水浸しになったら水のおかげで植物が復活するのね。ふんふん。


で?水が流れたらあの山にかかってるっていう霧が晴れて、山が見えるようになるのね。そして、聖神国の神殿の奥からしか山に登れない、と。


・・・で?


なんでこんな中途半端なのよ~!も~大事なところがわからない~。


最後の石に力を与え緑が戻ると、って、もう三か国は水が行き渡ってるのになんでまだ霧が晴れないんだろ~まだ登っちゃダメなのかな~・・・


ん?


バッ。


視線の先に、ベッドに放り投げたままの魔法バッグ。急いでベッドに向かい、バッグに手を突っ込んでメモ帳を取り出す。


慌てる手でめくったのは、地下神殿に初めて入った時にメモした部分。


あった!!


『最後の・・・に力を与・・・が戻ると、』


ここだ!かすれて読めなかったけど、これ、ここの部分だ!!この先の部分もちょっとメモってる!!ナイス私!!


よし!この続きは・・・探偵ナイトにご協力願おうじゃないの!

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