表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
フロストリア王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/147

エピソード 100

「いやはや、モルティヴァ信者の過激派が我が国に入った可能性がある、という連絡は来ていましたがまさかそのような経緯だったとは。・・・いや、一国の王が危険に晒されたなどと軽率には言えませんな。無理に聞き出してしまったようで申し訳ない。この事はここにいる者の中に秘めておきましょう」


はっ!そっか!王様がテロで死にかけたなんて、国家機密情報なんじゃね?!


簡単に話して良かったのかな?


・・・まぁ言っちゃったもんは仕方ないね!秘密にしてくれるって言ってるしいっか!


「キトル様、今度からは何か聞かれたら俺が喋りますんで」


私の表情がコロコロ変わるのを見てナイトがジト目で申し出た。うん、その方が良さそうね。


「それよりも、そのドルコスという者が問題ですな。緑の使徒様であるキトル様を狙っているというのなら、また何か仕掛けてくるやもしれません。モルティヴァ信者であれば世界の破滅の為に他の者を巻き込むのも厭わない、ハズ・・・?」


そう言うと、何かを思いついたようにエルフママさんの方を見る。


・・・だよね、ちょっと思ってた。


「このタイミング、そのドルコスという者が件のブドウを持ってきた可能性がある、という事ですな」


私の表情を見たネルガスさんが思考を代弁してくれた。


そうなんだよね。時期的にドルコスが持ち込んでいたっぽいよね。もちろん別の人の可能性もあるし、そもそもブドウが原因じゃない可能性もあるけど・・・


「ふむ・・・どちらにせよその者は王族を害しようとしたのです。このフロストリアにいるのであれば必ず捕らえねば」


「そうね、キトルちゃんに何かあれば世界の危機だもの。ねぇ、そのドルコスってどんな奴なの?」


エルヴァンさんがクルリと振り向いて私の顔を見る。


・・・どんな奴?


「嫌な奴ですっ!」


「キトル様、そういう事じゃないでしょ。すいません、遠隔で声は聴いたんすけど直接相対する機会はなくて」


ナイトが補足する。


何さ。別に嫌な奴ってのは間違ってないでしょ。


私とナイトの役に立たない返事を聞いたエルヴァンさん、小さく肩をすくめると、エルフママさんとルノちゃんの前で片膝を付いた。


「へ、陛下っ?!」


「ママさん、ブドウを持ってきた人の顔って覚えてるかしら?人相書きを描かせるから、特徴を教えてくれない?」


「あの、そ、それが・・・」


ん?覚えてないのかな?


「あの時は吹雪がちょうど止んだタイミングだったので、各国からの商人達が一度に来ていたのです。そのうちの一人だったのはわかるのですが、どの商人だったのかまでは・・・」


あ~なるほどね。いっぱい人がいて誰がどの人かわからないって事か。


「あら・・・他の人に聞いたら覚えてないかしら?」


「ルノ、覚えてるよ」


エルヴァンさんの真横に立ったルノちゃんが小さなお手手を上げている。


「もう、ルノってば・・・またあなたはそんなこと言って・・・」


「ホントだよ。ルノ、覚えるの得意だもん。あのオジサン、ルノがブドウ触ろうとしたら怒って手を叩いたんだよ。嫌な人、あの人だけだったもん」


ルノちゃんの可愛い紅葉お手手を叩いただとう?!もうそれだけで大罪だわ!


エルヴァンさんを見ると同じくムカ〜ッとした顔をしてる。


と、そこにお店の扉が開き、鎧姿の護衛の人と一目で年配とわかる腰の曲がったエルフのおじいさんが入ってきた。


ゾワッ・・・!!


一気に身体の毛が逆立つような嫌悪感。


頭の中に響く警告音。まただ。これは、またダメなやつだ!


エルフのおじいさんの手を見ると、明らかに人工物とわかる違和感のある色。


そう、カゴの中に入っているのは、水色のブドウ。


「キトルちゃん?どうしたの?」


エルヴァンさんの問いかけに答える余裕なんてない。


無意識のうちに両手をそのカゴに向けている。


また、こんなものを・・・!!


様々な気持ちと怒りがこみ上げる。


このブドウだって、本当は美味しいホットワインになるはずだったのにっ!何て事してくれてんのよ!


手の平から出た温かい力が不快な色のブドウに当たると、ジワジワと元の赤紫色へと変化していく。


「おぉ・・・!」


ネルガスさんの声で我に返ると、おじいさんエルフの持って来た気持ち悪いブドウは普通のブドウになっていた。


「これが神の力ですか・・・。いや、疑っていたわけではありませんが、目の前で見せられると信じるしかありませんな」


「何言ってんのよ、セレナちゃんも色々生やして見せてくれたじゃないの」


エルヴァンさんがペシッとネルガスさんの肩を軽く叩く。ボケ担当かと思いきやツッコミも出来るとは・・・。


「いえ、何と言いますか・・・キトル様は前のセレナ様に比べまだ幼いので、その小さな体で本当に使徒としての使命を果たせるのかと・・・いや、本当に申し訳ない。老婆心ゆえの余計な心配でしたな」


まぁね、ピチピチのティーンエージャーに比べりゃ流石に小さいけど、ここに来た時のセレナさんより中身は大人よ?


「あの・・・これは一体・・・?」


手にカゴを持ったままおじいさんエルフが固まっている。


あ、ごめんね放置して。突然目の前で手品を見せられた感じだよね。


「すいません、こちらは預かります。・・・キトル様、コレはやっぱりこの前の黒種と、あと、あの青い花と同じですか?」


ナイトがおじいさんエルフからカゴを受け取り、私の目の前に持ってきた。


「うん、多分同じだと思う。普通の植物を改良・・・いや、改悪したものだね。人に害を及ぼすように、手を加えられたもの。どうやったのかはわからないけど、自然に作られたものじゃないよ。何て言うか・・・悪意が加わってる感じ」


あの青い花や黒い種を見ると、ゾワゾワっというか、ものすごく気持ち悪いんだもん。こんなの、その辺の植物じゃありえないよ。


エルヴァンさんがアゴに当てていた人差し指をピーンと立てて口を開いた。


「って事は、このブドウを持ち込んだのはやっぱりそのドルコスって事よね。他の商人かもしれないけど、そんなにいっぱい犯罪者が同時に入って来るなんて考えにくいしぃ」


「しかしドラヴェリオンに緑が戻って以降、あちらからの果物の輸入が非常に増えておりますのでドルコスという者を見つけるのは困難ですぞ。顔が分からない以上あちらから人相書きを送ってもらおうにも時間がかかりますし・・・」


「ルノわかるよ!ルノが見つけてあげるよ!」


いつの間にか話している人たちの真ん中に来ていたルノちゃんが、両手を上げてピョンピョンと跳ねる。


「こら、ルノミアーリィ!やめなさい!」


エルフママさんが起き上がって止めようとするけど、ルノちゃんの耳には入ってない。


「あのおじさん、ルノを見て『クソガキが』って言ってたよ!あと、あとね、えっと・・・あ!みんながいなくなった後、『エルガのせいで』って言ってたよ!あと、あと・・・ん~っと」


「ルノ!あなたまた家から抜け出してたのね?!」


「あ、バレちゃった・・・」


ルノちゃんが両手で口を押さえる。


・・・『エルガのせいで』?


「それはもう確定っすね」


「だね。悪コスで間違いないよ」


「悪コス?ドルコスじゃないの?」


エルヴァンさんが聞き返してきたけど、返事をする前にネルガスさんが話し始めた。


「では、一旦そのブドウを持ち込んだ者をドルコスと確定させて動きましょう。ではこれからの行動についてですg」


「ねえ!ネルガスってばぁ!もう暗くなったんだし、そろそろご飯にしましょうよォ!どうせ今日はここに泊まるんだし、食べてからどうするか決めましょっ!」


エルヴァンさんが大きな声で叫んだ。窓の外を見るといつの間にか真っ暗。


そして私のお腹がタイミングよくグゥ、といい音を出す。


そうね、この世界でも、腹が減ってたら戦は出来ないんじゃないの~?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ