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エピソード 10

「キトル様・・・俺、一応キトル様の護衛なんすよ?」


ナイトってば、呆れ顔が板についてきてない?


「流石キトルさまですねっ!」


ヘブンは喜んでるから前脚がリズミカルだね。

子犬サイズだと可愛いったらもう。


二人の後ろには口髭がダンディなオジサマがポカンとしてる。


今の私の状況?

私は金ピカのダイニングルームで優雅にお茶を楽しんでるよ?

ただ、目の前に固〜い木で作った大きな鳥カゴと、中でぐっすり寝てるおデブ二人が金色になってるだけで。


あの後、怒り狂ったおデブ二人が家来を呼びながら飛びかかってきたからさ。


ちょっとやそっとじゃ切れないくらいの木を生やして?

二人が逃げられないように枝でカゴを作って?

中に花を咲かせて、眠たくなる金ピカの花粉を出しただけだよ?


そんな大した事はしてないよ~。

ちなみに金ピカにしたのはサービスねっ!


「ちゃんと俺らが戻るまで大人しくしとくって言ってたじゃないっすか」


まぁまぁそう言わないよ、ナイト君。


「だってこのオヤジ、養子にしてやるから自分の為に力を使えとか、十年経ったら伴侶にしてやるとか言うんだもん」


「・・・まぁ我慢は身体に悪いっすよね」


大山さくらの記憶や経験があるおかげで、こういう人間の行動パターンは想像ついてたから対策もしやすかった。


まず利用価値のある人を見つけると、自分達に都合良く使うために上手いこと言って取り入ろうとする。

で、そういう奴には大体似たような考えの仲間がいる。


だって悪党じゃなく小悪党。

小悪党は一人じゃ何にも出来ないから、群れるんだよ。

だから、間違いなく誰かに連絡取ると思ったんだよね。


そして予想通り私が支度してる間に、お屋敷から馬に乗って飛び出して来た使用人をナイトが捕まえて話を聞き、使用人の代わりに行ってもらったんだ。

ただ違うのは、行き先が近くの小悪党仲間の所じゃなく、公爵の所。

伯爵の上の、侯爵より上。

そして、この近辺で一番評判が良くて公平な人を選んで連れて来てもらった。


前世でも居たのよね、人の成果や頑張りをぜ~んぶ自分のものにする上司。

そういう人間は、自分の周囲を味方で固めてるから、すぐ上の上司に言っても逆効果。

だから、味方に出来ないくらい上の立場で公平な人に直談判するのがいいんだよね。

それでもダメなら、転職一択!


今の私、キトルの場合なら違う国への移動かな?

人や土地を見捨てる気はないけど、国は見捨てるよ。


何しろ、他の国の人だって困ってるらしいんだから。

公爵の対応によっては違う国からスタートする事になるけど、さぁどっちだろう。


「貴女が緑の使徒様か?」


やだ、近くで見るとさらにダンディなオジサマ!

この人が公爵さまだね。


「そうです。出来れば使徒様じゃなくキトル、と名前の方で呼んでください」


「承知した、キトル様。と言っても、まだこの者に呼ばれてすぐに飛んできたばかりでね、状況がわかりかねておるのだ」


「あら、ナイト説明してないの?」


途中で説明してるかと思ったのに。


「いや、無理っすよ。ヘブンの本気、捕まってるのがやっとっす」


「ワタクシは常にキトルさまの近くに居なくてはいけませんからね!急ぎましたよ!」


ヘブンがフンッと得意げに胸を張る。

あぁ、だから髪ボサボサなのね。


「説明もなしでよく来てくれましたね」


「この者が持ってきた花と、祖父が残した緑の使徒様の絵姿に黒いフェンリルが描かれていましてな」


ん?フェンリル?それってヘブンの事?


「・・・その話はあとで詳しく聞かせてください」


今はまずこっちの話を・・・


「キトル様~!これどうやったら止まるんすか?!」


ナイトの手には

「緑の使い手からのお願いです。この者についてきてください」

と繰り返し喋るピンクの花。


お偉いさんを連れて来るのに何か証明が必要かと思って、屋敷の前で待たされてる時に急いで作ったんだよね。

こんな花、その辺には生えてないだろうから信頼度はあるでしょ。


「花びら千切ったら止まるよ。あ、あとそれ飴だから食べれるよ」


「えっ?!」


恐る恐る口に入れて


「甘っ!!うんまっ!」


「ワタクシにも!ワタクシにも!」


うんうん、君たちはそれ食べてなさい。


「よろしければ、わたくしから説明させてください」


壁に並んでいた使用人たちから一歩前に出てきたのは執事のロンドさん。

ロマンスグレーで仕事の出来るおじい様って感じ。


公爵さまたちが到着する前に、使用人の人たちを集めて話を聞いていたのだ。

何のためにって?もちろんこの二人の悪行を告発するためよ!


「公爵様、お久しぶりでございます」


おや、お知り合い?


「確かロンド殿、だったかな。前伯爵には世話になった」


「わたくしの名前まで覚えていただけていたとは・・・この度はわたくし共伯爵家家臣一同、どのような処分でも甘んじて受け入れる所存でございます」


「まぁ待て、まだ何が何だかわからんのだ」


「まずは前伯爵様がご逝去された約十年前、その頃に始まった不作が・・・」


こりゃ長くなりそうだな。


「ドルムンタ伯爵と部下のグズリ代官が悪いこといっぱいしてて、私の事も手籠めにしようとしたんですよ」


「て、手籠め?!」


あれ?意味合ってるよね。

あ、ロンドさんがそんなぁって顔してる。

どうせ後で何回も説明しなきゃいけないんだし、いいじゃ〜ん。


「だから、返り討ちにしました!」


ジャーン!と両手で鳥籠の二人を見せる。


「そ、それはドルムンタ伯爵か?!」


「そうです!」


「・・・何故金色になってるんだ?」


「サービスですっ!」


やだ、眉間にシワ寄せるとイケオジ度が増すわ〜。


「とにかく、その悪行というのはロンド殿に協力してもらい順を追って裏付けをさせて頂こう」


そうそう、そうしてあげて。

領民のみんなの為にも、ロンドさんの為にも。


「しかしながら、我が国だけでなく世界にとっても『緑の使い手さま』と言えば救世主のような、神の使いとして尊ばれる存在だ。その使徒様を私利私欲の為に、て、手籠めにしようなど・・・」


やだ、公爵さまってば何照れてるの?

ちょっと顔赤くなってるし!イケオジの照れ顔!

超~好感度高いんだけど!


「その愚行だけで生涯幽閉されるような重罪だ。キトル殿。我が国の貴族が大変な迷惑をかけた。申し訳ない」


イケオジ公爵が深く頭を下げる。

慌てて壁に並んでた使用人の人たちも頭を下げる。

なぜかヘブンも下げてるけど、君はいいのよ。

でも、うん、この公爵さまは信用してよさそうだね。


「私に対しては、もういいですよ。多分、コレから出てこれた時には多少反省もしてるだろうし!」


「出てこれた時・・・?」


「この鳥カゴ、切れないし壊れないようにしたんです!でも隙間は大きめだから、痩せたら出てこれますんで!」


そう、私はもちろん、ナイトや公爵さま、ロンドさんも通れるけど、この二人は出られないだろうね。

このままじゃ。

みんなにひもじい思いをさせたんだから、その分はちゃんとやり返さないと。


これからじっくりと、みんなの気持ちを理解してもらおうじゃないの!

アドバイスをいただいたので、読みやすいように行間を開けて、加筆しました。

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