「交差」
「では、早速、捕まえた騎士達から聞き出した事を伝えさせてもらうけど、途中、分からない点や気になった点があれば教えてくれたまえ、その都度答えるから」
「分かった」
かけられていた誤解が解け、業平から話の続きを頼まれたデビアスは快く了承すると、そこら辺に転がる大きな岩を他の三人と同じように椅子代わりにして、話し始めた。
「まず最初に、彼らは黄の国という大きな国の騎士達なのだがただの騎士じゃなくてね、黄の国の王剣使い”ガブリエッラ・アルローゼ”に指名され、直属で仕えているそれなりの騎士達で、沼地の近くにいたのは、そのガブリエッラにある錫獣の調査を命じられていたからなんだ。因みに、男の方はオッキオ・フェルメノール、女の方は、ソリッタ・シャレンテ・ヴィデンスというよ」
「..ソリッタ・シャレンテ・ヴィデンスって、女性の方、いい名前してんな」
「うん、話を戻すけど、錫獣の調査をしていた彼らだが、実は、僕たちに捕まる少し前に調査を終えていてね、本当は黄の国に帰還しようとしていたんだ。だがその時、偶然にもブグ・マザルの壺に備わった能力である”熱波”によって鳴りあがった爆破音を感知し、目を向けた先から煙が昇っているのを確認したことで、何かあったのか興味をもった彼らは少し近づくと、遠く離れた先から見たい場所を見ることが出来る魔法を通して、僕たちと、業平の腰に差してある王剣の存在に気が付いた。そして、最初は彼らが先に奇襲を仕掛けようとしていたものの、多くの理由からガブリエッラに報告することを優先したために、再度、黄の国に帰還しようとしたわけだ」
「..な、なるほどなぁ」
「あぁ、後、彼らが僕たちを遠くから見ていることに気付けたのはこれのおかげさ」
「おぉ、変な眼鏡」
「片眼鏡ね」
右目に嵌めた片眼鏡を指で突くことで、シルクハットに付けていた方の片眼鏡を飛ばし、視界を共有して空の上から四方八方を確認していたことを示唆するデビアスだが、そんな機能があると聞いたことを忘れている業平は、一日前と同じ反応をした。
「聞き出した事は以上、そして、ここから本題だ」
「本題?」
「彼らの処遇について」
にこやかに微笑みながら、デビアスは話を続ける。
「最初は、僕とアーサー君で彼らをどうするか決めようとしたんだけど考えが合わなくてね、だから、君たちにも聞いてみようと連れて戻ってきたんだよ。もちろん、不義理を働きたくないという思いにもよるがね..それで、どうしたいとかあるかい」
「..どうしたいって、見てただけなら国に帰してやればいいんじゃないか」
「......ぼ、僕も、なりひらと同じ..かな....」
「だそうだ」
「....」
業平とバッヂ、二人の答えを聞いてデビアスは含み笑いを浮かべると、先ほどから一言も発さず、腕を組み、顔を下げて座っているだけのアーサーに目を向けるが沈黙を貫かれるだけなので、それを良い事に捕まえた騎士達の処遇を定めた。
「では、三対一で、彼らは国に帰すということで決定だ。アーサー君もそれでいいね」
「....あぁ」
「よし、じゃあ僕は彼らを黄の国に戻してくるから、少しの間ここで待っていてくれたまっ..」
「ちょっと待ってくれ」
「..またかね」
捕まえた騎士達を黄の国に帰すためにこの場から離れようとするデビアスだが、後ろ背から業平に声をかけられたことで足が止まった。
「気になった事があれば教えてくれるんだろ?」
「確かに気になる事、分からない事があれば教えてくれと言ったがね、それは、騎士達に関する情報を伝えてるときだけの言葉であって、いつでもとは一言も言ってないんだよ」
「教えてくれないのか?」
「..教えるさ、それで、知りたい事とは」
「さっき、アーサーと考えが合わなくて騎士達の処遇が決めれなかったって言ってただろ。デビアスは俺達と同じ考えなのは分かったけど、アーサーの主張って何だったのかなって」
「何だそんな事か、アーサー君はね、捕まえた騎士達を自殺させたかったんだよ」
「......え?」
「一つ伝えてなかったがね、今、黄の国に帰らせようとしている騎士達は僕の魔法で意識を奪っていて、記憶操作もできるのだけれど完璧に操れるわけじゃないんだ。だから、このまま捕まえた騎士達を国に帰せば、君の王剣と、僕とアーサー君が、彼らに奇襲を仕掛けた記憶が戻ってしまう可能性がある。それを危惧したアーサー君は、彼らを黄の国に帰らせるのではなく、森に住む魔獣達の餌にでもして、死体事、証拠隠滅を図りたかったわけだ」
「....」
「間違いではないと思うけどね、僕は納得できなかった、だから考えが合わなかった、それだけさ」
それだけを言うとデビアスは、今度こそ騎士達を連れて黄の国に向かった。
「....なぁ、アーサー、デビアスの言ってた事って本当か?」
「..あぁ、全て本当だ」
「っ....なら約束しろっ!!これからは何があっても人を殺したり、殺そうとしないって!!破ったら、俺はお前の目の前から消えていなくなるからな!!」
「..分かった」
「戻ったよ....どうしたんだい三人とも、暗い顔して、眠いのかい?」
「..疲れたんだよ、色々と」
「そう、なら今日は早めに休もうか。この時間だと、今日中にロウィンに戻ることは出来ないから、どちらにしても野宿することには変わりないだろうし。よし、そうなれば僕は、火を点けるための薪でも用意してくっ..」
「ちょっといいか」
「....何だね」
周りにあった木々は全てブグ・マザルの熱波によって燃え消えている為、デビアスは、少し離れた先にある森林の中でたきぎになりそうな小枝を集めに行こうとするが、歩き出そうとした直ぐに今日二度目の待ったを業平にかけられた事で、出端を挫かれてしまった。
「随分と早くに戻ってきたから、黄の国ってここから近い場所にあるのかなって」
「..いや、そうじゃないんだ。捕まえた騎士の一人が空間移動系の魔法を使えるから早くに戻ってこれたんだよ」
「空間移動系..?」
「簡単に言えば、向かいたい場所に直ぐにたどり着ける魔法系統の事だね」
「なるほど....ん?ならなんで、その魔法で俺達をロウィンに戻してから黄の国に行かなかったんだ?そうすれば野宿しなくて済んだのに」
「..今日はよく頭が働くじゃないか」
更に質問を投げかけられ、デビアスは少し気怠げな気分になるも、それくらいの説明ならと気持ちを切り替えて答えることにした。
「向かいたい場所に直ぐにたどり着けると言っても、術者が来たことない場所に移動出来る魔法というのは基本無い。条件を満たせば可能になる魔法はあるがね」
「例えば?」
「..例えば、傷を付けた相手の場所にならどこにでも移動出来るとかね」
.................................
「準備できたか、業平」
「おう、いつでも出れるぞ」
デビアスに色んなことを教えてもらってから半日、全ての依頼をこなしたからか、昨日とは違い、今日は好きな時間まで寝ても許され、渡された食事も、味は微妙だが干し肉の塩漬けが付いてきて、少し贅沢な朝を迎えられた。後はロウィンに戻るだけだった。
「で、肝心のデビアスはどこに居るんだ?どこにも見当たらないけど」
「焚火した後の灰を綺麗にしたら戻ってくるらしい」
「..あの人、そんな真面目だったっけ」
人は見かけによらないな..と、噂していれば、デビアスがこっちに向かって歩いて来ていた。
「悪いね、君たち、遅くなって、では戻ろうか、ロウィンにっ..........あれ?」
「バゼル」
○○系の後に系統って、文としておかしいですよね。申し訳ないです。




