「発塵熱波]
「業平っ!!」
心臓が高鳴る。ここで斬れなければ命はないと思うと、両手が震えてしょうがなかった。
「っ..!!」
それでもと、意思を強くしてアーサーから投げ渡された剣を握り直す。
空を飛ぶために必要な魔力も底をつき、ただ、ブグ・マザルが待ち構える場所に落ち続けるだけの俺が頼れるものなど、この剣と搾りかすほどの魔力しかないのだから。
「断ち斬りっっ!!」
なけなしの魔力を使い、俺は、新たに覚えた魔法を唱え剣を振り下ろした。
ただの斬り技だが、魔力で強化した一撃は今日一番の切れ味を誇って、ブグ・マザルの分厚くて太い首に斬り込んでいく。
「うぉぉぉぉぉっっ!!!」
途中、肉の弾力もあって内で止まりそうになったが、負けじと押し込んで骨をも断ち斬る。
そして、完全に切断することが出来れば、俺は地面に激突する前にアーサーに助けられて..
「いてぇっっ!!?」
「起きろ、業平」
「..俺また気絶してたのか」
.....................................
時間は前日の夜までさかのぼる。
紫の炎を操る錫獣”フルックヌー"を倒し、残していった扇子に備わる能力を調べ終えた業平達は、気が付けば陽が沈む頃まで草原にいたので、デビアスの提案の元、野宿することを決め一夜を明かすと、入山するまで乗っていた馬車が停めてある場所に向かう。
数時間かけて山を越え、馬車が停めてある場所にたどり着くと、四人は直ぐに乗車して、依頼内容であるもう一体の錫獣、ブグ・マザルが根城にする沼地へと赴き、戦い、最後は新たな魔法を覚えた業平と王剣の力によって討伐された..が、戦いの終わりに魔力を使い果たした業平は気絶してしまう。
しかし、アーサーの介抱もあって半日ほどで目を覚ますと、デビアス達が待つ場所を目指して二人は歩き出した。
「ぼーっとして、大丈夫か?」
「大丈夫なわけないだろ..脳が揺れてんだから、誰かさんに頭を指で弾かれたせいで」
全く..どうしてこう、手荒なやり方でしか人のこと起こせないのか。
決着つけたとはいえ、戦いの終わりに気絶した俺も悪いし、毎回毎回、起こしてもらってるのは申し訳ないけど、それでも暴力振るって目覚めさせるのはやめてほしいぞ。
「そうか」
「うっすいなぁ..ほんと、俺が傷ついても何も思わないんだな」
「..それは違うぞ業平。俺は業平に幸せになってほしいし傷ついて欲しくない。もし、傷つけるやつが現れたら何があっても庇うし、地の果てまで追いかけて報復を与えるつもりだ」
「怖えし、どの面下げて言ってんだそれ、マジで」
どんな返事が返ってくるかと思えば、ドン引きだわ...これならまだ俺がいくら傷ついても構わないとか、そうだなって肯定されたほうがマシだったぞ。
「聞かなきゃよかった..」
「おーい、君たち、こっちだよ」
「着いたみたいだな」
随分と早かったが、話をしながら歩いていた間に、俺たちはデビアス達が待つ場所にたどり着いた。
「目が覚めた直ぐにで申し訳ないのだけれど、早速、錫獣が残していった”これ”確認してもらってもいいかな」
「だから少しくらい休ませてくれって......どれを確認すればいいんだ?」
「これだよ」
「....どれ?」
「これだよ、これ」
わざとらしく大げさにため息をつきながら足元にある太長い壺を更に前に出して強調してきたので、俺も正直な気持ちを隠すことをやめ、ぶつけることにした。
「壺じゃねぇか」
「うん、やっと伝わったようで安心したよ」
「伝わってはいるんだよ、理解が出来ないだけで」
表情からして意図的にだろうが、どこか嚙み合わない会話に歯がゆさを感じながらも、納得しなければ話が一向に進みそうにない予感がしたので、疑いながらも指示を仰ぐ。
すると、広いところに移りたいから壺を運んでくれと言われたので、持ち上げて、少し離れた場所にある沼地の近くにまで俺たちは移動した。
「壺という形状からして、能力の発動条件は投げるか叩く、もしくは魔力を込めながら触れるのどれかだと思うんだ。順番は君が決めてくれ」
「そのどれでもなかったら」
「考えるさ」
それだけ言うとデビアスは、離れた場所で俺の事を見ているバッヂ達の所に戻っていた。
「最初は投げてみて、何も起こらなかったら魔力込めて触れてみるか」
事前に決めた通り、最初は壺を両手で持ち上げて投げてみたが不発で、次に魔力を込めて触れてみたがこれも意味をなさず、デビアスの提案を受けて、全力で投げてみたり壁にぶつけてみたり、込める魔力の量を多くしてみたり少なくしてみたがどれも上手くいかず、最後に残った確認方法は壺を叩いてみる、これだけになってしまった。
「....ふんっっ!!!!」
遠くで見ているデビアスに確認を取って横にした手を振り上げて壺に叩きつけたら、衝撃で少し浮き、地面につくと激しく揺れた。
それが数十秒続き、揺れが収まって完全に制止するも、結局、揺れている間にも止まった後にも、能力らしきものが発動することはなかった。
「これもダメかぁ......ん?」
(何だ..?壺が揺れて..)
「キオリスっ!!」
「えっ..うわぁっっ!!?」
ガタガタと、中で何かが煮え滾ったかのように壺が震えだしたので、意識が惹かれて見ていたら、少し焦った様子で魔法を唱えたデビアスの声が聞こえた後、俺の足元から白い石が突き上げるように生えてきて、上空高くに打ち飛ばされた。
「何すんだデビアっ..」
「業平!自力で飛べるよう剣圧解放を使いたまえ!」
「..剣圧解放っ!!」
デビアスの有無を言わさぬ迫力に押されて、俺は直ぐに魔法の服を呼び出し着こむと、風を放出してさらに上に飛んだ。
「ぐうううぅっっっ!!?」
一定の高さを保ちながら真下にある壺を見ていたが、突然、壺から感じられた魔力が大きく膨らんで勢いよく外側に広がると、それが熱の波となって四方八方に散らばり、沼地を燃え上がらせるだけでなく、引火して大爆発を引き起こした。
「..ひでぇな、これは」
熱風が霧散し、閉じていた目を開けるようになったので下を見れば、そこは少し前の光景と一変した、まさしく天災被害に遭ったような火の海と化した地上があった。
沼地に隣接していた岩崖は崩れ、一部の残骸は熱気を出しながら砂煙が漂っていて、デビアスに言われた通り、空を飛んだから身を少し焦がすだけで済んだものの、高い場所にいる俺の元にも届いた熱量とこの惨状を生み出した爆発を間近で受けていたのかと思えば..身に残る熱さが消え、寒さを感じてしょうがなかった。
「無事かい、業平」
「デビアス..助かった、ありがとう」
「いいってことさ。それよりも、よかったね。壺に備わった能力の発動条件が知れてさ。君にどんな手を尽くさせても何も起こらないから気が気じゃなかったよ....」
「なー、俺も、いろんな方法試しても意味ないんじゃないかって思ったぞ」
「..下降しているな」
「ですね」
「突然、爆発音が聞こえたから来てみれば、まさか、アレの所有者がいるとはな」
「王剣、ストラヴルフの使い手が」
学がないんで、沼地から漏れ出たメタンガスが引火して大爆発起こすのかは分からないんですけど、そのまま気にしないで通してもらえるとありがたいです。
後。お恥ずかしい話なんですけど、見て分かる通りストラブルフは取ってます。いい名前が思いつかなくて..ちなみにアーサーの剣はカンデラです。そのまんまです。




