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パスワードはわかるのに

作者: 雨足怜

『スマホが嫌いなの?』


 いつだってそう聞かれるのは、私が社会人になってもスマホを持っていないから。

 必要が無いわけではない。持っていないことで不利益が生じる場面は確かにあった。

 例えば大学生のころ、インターンに向かう最中に接触事故で電車が止まった。駅と駅の間で立ち往生。スマホが無いから、インターン先に連絡をすることもできない。近くの人に金を払ってスマホを借りて事なきを得たのだけれども。

 ちなみにその人は、まるで化け物でも見るような目で私を見てきた。

 スマホを持っていない人イコール、おかしな人らしい。

 何しろ今時、小学生だってスマホを持っている子が多いのだから。

 最近では何かの登録の際に固定電話ではなくスマホが必須であることもあって、そうしたときには登録を諦めることもある。


 ではなぜ、私が不利益を感じながらもスマホを持たないか。

 それは、スマホを持っていないことが、コミュニケーション不足の免罪符になるからだ。

 タブレットやPCさえあれば、メールやSNSはできる。Wi-Fiこそ必要だが、それさえあればたいていのことができる。

 ただし、PCとかタブレットなんて、こまめにみるものじゃない。相手だってそう理解している。

 だから、既読や返信が遅くなっても「仕方がないね」の一言で済む。

 それは、私にとってはスマホが無いことによるデメリット以上のことだった。


 中学からずっと、スマホに振り回される友人たちを見てきた。休み時間になればSNSを確認してやり取りをする。目の前に話すべき相手がいるのに、画面に夢中になる。

 それは違うよね、と思う。

 さらにはメッセージのやり取りにつかれてしまう。文章だけの対話だから衝突だって、対面よりもずっと多い。

 そうしたSNSの負の側面が、私をスマホから遠ざけた。


 それで、よかったはずだった。

 問題は、もう長いこと使っているタブレットの容量が限界を迎えて、アップデートのためにLineのアプリを一時的に削除したこと。

 アップデートを終えて、アプリを再インストールして。

 そうしてメールアドレスでログインで、アカウントとパスワードを入力して。


『本人確認をしてください』


 スマートフォン版Lineでの数字入力が求められる。


 スマホなんて持っていない。このアカウントは、昔facebookアカウントで作ったもの。Facebookのほうは凍結された。


 そうして私は、ただ茫然と本人確認ページを眺めることになった。

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