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ある日、悪役令嬢たちは講師を招き入れることにした

「皆さん。わたくし、とても良いことを思い付きましたの」


ある日、専用のサロンで揃ってランチを食べている時にエリザベスが言った。


サロン付きのメイドに食後のデザートであるシブーストを切り分けて貰いながらプリムローズが訊ねる。


「どのような良い事を思い付かれたというの?エリザベスお姉様。新しいプロテインのフレーバー?それとも気持ちの良いランニングコース?」


「それはあなた()()()良い事でしょうプリムローズ。そうではなくて、ここにいる皆にとっての良い事よ」


メイドがそれぞれの皿にシブーストをサーブしていくのを見て「あ、私にはオレンジは添えなくていいわ」と伝えてからフランシーヌが言った。


「まぁ、皆にとって良い事とは何かしら?ワクワクするわ」


その言葉を聞き、嬉しそうにしながらエリザベスが言った。


「ふふ。このサロンにね、素敵な講師をお招きする事にしましたのよ」


「素敵な講師?どういった事を教えて下さる講師なのかしら?」


ロザリーがデザートフォークを手にしながら訊ねるとエリザベスは自身の前にシブーストを乗せたデザートプレートを置いたメイドに「ありがとう」と告げてから答えた。


「諸国を漫遊している吟遊詩人をこのサロンにお招きしようと思っているのよ」


「え?吟遊詩人?エリザベスお姉様、弾き語りをお聴きになりたいの?」


プリムローズがシブーストを食べる手を止めて目を丸くしてエリザベスを見る。


「プリムローズ、またそんなに大きくデザートを切り分けて貰って……それでどうして太らないのか不思議で仕方ないわ……ええそうよ。もしもの事を想定して他国の事を知るのは大切だと思うの」


「なるほど。国外追放された場合のための処置ですわね。諸国を回っている吟遊詩人の方なら様々なものを見聞きしているだろうし、語って聴かせるに特化されていますもの。他国の情景を歌と詩で学ぼうという事ですのね」


「まぁ!ナイスアイデアですわエリザベスお姉様!お勉強は苦手ですけれど、お歌なら頭が拒絶反応を示しませんもの」


「私、オペラは大好きですの!」


ロザリーがフランシーヌに「吟遊はオペラとは違いますわよ」と言っているのを尻目にエリザベスは悪戯な笑みを浮かべて皆に告げた。


「うふふ……お招きしようとオファーしている詩人の方、とっても素敵な美丈夫ですのよ」


「なんですって……!」


「素敵な………美丈夫っ?」


サロンに来るのがナイスガイと知り、皆が色めき立つ。


「お若いお方なの?」


プリムローズが訊くとエリザベスはうっとりとした表情を浮かべた。


「先日、叔母のお茶会に招かれた時にその詩人と会ったのだけれども、男のフェロモンがダダ漏れの方でしたわ」


「まぁ大変!」


「ダダ漏れでいらっしゃるのね!」


「男のフェロモンとはなぁに?」


「あの方に比べればわたくし達の婚約者なんて所詮はおクソガキですわ……と、あら失礼。前世の記憶が蘇ってからというもの、時折悪い言葉が口から出てしまうの。とにかく皆さん、来週の水曜日、放課後はこのサロンにいらしてね」


「もちろんですわ!」


「どうせコラール様はお忙しくてお会い出来ないのだもの、喜んで伺いますわ!」


「じゃあわたしもその日は騎士団に行ってお兄様を無理やり稽古に付き合わせるのはやめにするわ」




そうしてエリザベス心の友の会のメンバーは、サロンにてナイスでガイなイケメンを招いて吟遊を嗜む事となった。


それは毎週水曜日の密かなお楽しみとなり、婚約者の事で憂いていたエリザベスとフランシーヌは目に見えて以前のように明るい表情へと戻っていった。



そんなある日、生徒会執行部の部屋で第二王子ルドヴィックが言った。


「そういえば、この頃ベスが(エリザベスの愛称)自身のサロンに講師を招いているとサロンを管理する学院の使用人から報告があったな」


その言葉にエクトルが頷いた。


「近頃プリムが毎週水曜日の放課後にレントン公爵令嬢のサロンに足繁く通っているので気になって本人に聞いたところ、レントン公爵家の親族の紹介により招く事になった講師だそうです」


「一体なんの講師だ?」


「異国の詩を聴かせてくれるとか……紹介した筋がしっかりしているので問題はなさそうですが……」


「何か気になるのか?」


「……殿下は、近頃レントン公爵令嬢にお会いになっておられますか?」


「執行部と王族としての政務で手一杯なんだ、なかなか時間が取れなくてな。向こうも何やら忙しいようで今はあまり会う機会が減っている」


「そうですか……まぁ執行部の面々は皆そんな状態ですよね……」


「どうした?」


「殿下、我々はもう少し危機感を持った方がいいのかもしれませんよ?」


「それはどういう事だ?」


「それをご自分でお調べになるくらいでないと、問題解決にはならないと存じます」


「なんだ?謎かけみたいだな」


「とりあえず、俺は先に捕獲に取り掛かりますから。逃がしてなるものか」


「?」


エクトルの言葉の意味がわからず怪訝な顔をルドヴィックがしたその時、部屋にイヴァンとコラールを伴ったリュミナが入ってきた。


「お待たせしました!さぁみなさん!ワタシをバザールへ連れて行って♡」



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