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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

婚約を破棄した為に破滅する皇子

作者: 神無月蓮晃

ルビー帝国第三皇子スピアは皇立高等学院の卒業パーティーでフロイ子爵令嬢のファトラを侍らせていた。

「またファトラ嬢を侍らせているわよ」

「皇族として恥ずかしくないのか」

周囲の令嬢と子息が小声でスピアを非難した。

「第三皇子スピアの名において宣言する。私は聖女ベルとの婚約を破棄する」

そしてベルとの婚約を破棄すると宣言した。

「聖女ベル様との婚約を破棄するですって」

「スピア殿下は正気なのか」

令嬢や子息が騒ぎだして、蔑む視線を向けた。

「婚約破棄の理由は真実の愛に目覚めたからだ。私はフロイ子爵家令嬢ファトラ嬢を新たな婚約者とする」

スピアは周囲の状況に気が付かず、更に愚かな宣言をした。

「婚約破棄とは本気なのですか」

ベルが冷たい視線を向けて、問い詰めた。

「本気だ。私は貴女を愛していない」

「畏まりました。婚約破棄を受け入れます」

ベルはあっさりと婚約破棄を受け入れた。

元々スピアとの婚約は外交的なものだった。

スピアは女に見境が無く、素行も悪かった。

前々から苦々しく思っていたが、自分からは婚約破棄は出来なかった。

この愚行は渡りに船だった。

「それでは失礼します」

【転移】

ベルはパーティー会場から神殿の自室に転移した。


「スピア殿下から婚約破棄されました。これは明らかに誓約違反ですので、エメラルド聖国に帰国します」

スピアから婚約破棄されたので、エメラルド聖国に帰国すると神官達に伝えた。

「聖女ベル様、お待ち下さい」

「貴女が居なかったら、結界の維持が出来ません」

ルビー帝国は魔物の侵入を防ぐ為に結界が張られていて、維持するには膨大な魔力を持つ聖女の祈りが必要だった。

ベルは結界の維持を懇願されて、エメラルド聖国からルビー帝国に派遣されていたのだ。

婚約も派遣の条件の一つだったのに、一方的に破棄された。

明らかに誓約違反だった。

ベルが帰国したら、結界の維持が出来ない。

神官達は必死で制止した。

「スピア殿下がどうにかされるでしょう」

【転移】

神官達の制止を振り切って、私物と共にエメラルド聖国の大神殿に転移した。


「聖女ベル様が婚約の破棄に激昂して、エメラルド聖国に帰国されてしまった」

「何という事だ」

「結界の維持が出来なくなってしまい、魔物が侵入してくる」

「我が国はもう終わりだ」

ベルの帰国が報告されて、皇宮は大騒ぎになってしまった。

「直ちにエメラルド聖国に謝罪の使者を向かわせろ」

謝罪の使者が急いでエメラルド聖国に向かった。


「この愚か者。何という事をしたのだ」

スピアは皇帝から激しい叱責を浴びた。

「父上?」

しかしスピアは叱責の意味が分からず、呆然とするだけだった。

「聖女ベル様が居なくなったら、結界の維持が出来なくなるのだぞ」

「お言葉ですが、結界など存在しません」

スピアは愚かにも結界の存在を否定した。

結界によって魔物の侵入を防いでいる事を疑っているのだ。

「お前がそこまで愚かだったとは思わなかった。もう良い。暫く謹慎しておれ」

遂に皇帝から謹慎を言い渡されてしまった。


「とんでもない事になった」

ベルが婚約を破棄されたので、エメラルド聖国に帰国してしまった。

このままでは結界の維持が出来なくて、魔物に侵入される。

皇帝陛下が謝罪の使者を送ったが、代わり聖女を派遣をしてくれる可能性は低い。

見習い聖女なら派遣してくれるかもしれないが、見習い聖女では結界の維持は不可能だ。

ルビー帝国内で結界の維持が出来る者を探すしかあるまい。

直ちに皇帝陛下に進言しよう。


「あの愚か者。こんな愚行をするなんて」

愚息スピアがベルとの婚約を破棄した。

ベルは激昂して、帰国してしまった。

ベルは皇妃のお気に入りだったのだ。

「女神様、お願い致します。どうか聖女ベル様が再派遣されますようにして下さい」

皇妃は必死に祈りを捧げた。


「まさか本当に卒業パーティーで婚約破棄するとはな」

あんな場所で婚約破棄するなんて、兄上は救い難い愚か者だな。

実は私がそうするように誘導したんだけど、これほど上手くいくとは嬉しい誤算だった。


第四皇子ソードは自分の策略を回想する。

先ずは兄上にファトラ嬢を紹介した。

次に兄上が浮気をしているという噂を流して、周囲の令嬢や子息の兄上に対する評価を下げた。

最後に兄上に結界が存在しないという嘘を吹き込んだ。

しかし本当に嘘を信じるとは思わなかった。

ベルは我が国にとって皇族以上に最重要人物なのを理解していなかったとは、呆れるほど愚かだな。

これで兄上は皇太子候補から外されるのは確実だ。

もしかしたら皇籍を剥奪されるかもしれない。


「スピアの処罰についてソードの意見を聞かせてくれ」

父上から兄上の処罰について意見を求められた。

「皇籍剥奪と子爵家への婿入りが妥当だと思います」

「厳し過ぎないか」

「そんな事はありません。聖女ベル様への非礼を考慮すれば妥当な処罰です。聖国に対しても誠意を示す必要があります。さもないと聖女の派遣が拒否されるかもしれません」

「分かった。ソードの意見を参考にさせてもらう」

父上は私の意見に納得されたみたいだ。


「お前の処罰が決定した。皇籍剥奪とフロイ子爵家への婿入りだ。今日中に荷物を整理して、皇宮から立ち去れ」

スピアの処罰はソードの意見をそのまま反映した内容だった。

「父上、嘘ですよね。考え直して下さい」

「黙らんか。衛兵、この愚か者を謁見室から叩き出せ」

スピアは衛兵によって、謁見室から連れ出された。


「何故こんな事になったんだ。私は愛するファトラと結婚したかっただけなのに」

スピアには皇籍剥奪とフロイ子爵家への婿入りの理由が分からなかった。

「婚約破棄するなんて、愚かな行為をしたからですよ」

弟のソードが唐突に部屋を訪れて、嫌味を言った。

「何の用だ。私を笑いに来たのか」

「違いますよ。婚姻のお祝いに来ただけです」

お祝いなんかする気なんか無い癖に、白々しい事を言うな。

「私は荷物の整理で忙しい。用が済んだら、出ていけ」

「貴方は既に皇族ではありません。子爵家の入婿ですよ。言葉には気を付けなさい」

「お願い致します。出ていって下さい」

屈辱に耐えながら、言い直した。

「分ければ良いんです。それでは失礼」

ソードは慇懃無礼な態度で退出した。

「畜生。こんな事ならベルとの婚約を破棄するんじゃなかった」

ベルとの婚約を破棄した事を心の底から後悔した。

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