店員さんに丁寧に接しなければならない理由
子どもの頃、外食するときに「店員さんには丁寧に接しなさい。メニューや料理を運んでもらったら、ちゃんとお礼を言いなさい」と親から躾られていました。その通りにすると店員さんも嬉しそうにしてくださって「とてもいいお子さんですね」などと褒めてもらえることもあったので、特に理由なんて気にせず言われた通りにしていました。
ただ、あるときふと気になって、なぜそうしなければならないのか訳を尋ねたのです。
「それは……店員さんに嫌われたら、こっそり何をされるか分からないだろう? 裏で悪口を言われたり、料理に指を突っ込まれたりとか……」
親の返答を聞いて、子どもながらに若干引いたのを今でも覚えています。てっきりお世話になるかたへの感謝や人を敬う気持ちの大切さを教えるためだと思っていたのに、そんな人間不信全開の被害妄想のためだったなんて……。
「できるだけ人には親切にしなさい。もしかしたら実はヤのつく自由業で、怒らせたら刺されるかもしれないだろう」なんてこともしょっちゅう言っていました。
大人になって思い返してみると、不器用な照れ隠しだった可能性もあるような気がします。天邪鬼というか、偽悪的なところがある人ですから、正直に真面目に伝えるのを嫌がって避けていたんじゃないかと思うのです。今も健在なのでいつでも真相を尋ねることができるのですが、なんだか恐ろしくて聞けないままでいます。
かくいう私も、画面の向こうにひょっとしたらリアルの知り合いがいて、いつの間にか特定されているかもしれないから迂闊なことは書けないな……なんてたまに妄想をしていたりするので似た者親子というか、蛙の子は蛙というか、遺伝と環境両方の影響で、こんな風に育ってしまったのだと思います。
とはいえ、人に嫌われないに越したことはないと思うので、これからも多少失礼な妄想をしながら、誰にでも丁寧に、親切に接していきたいと思っています。




