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アフガニスタン異聞4
外では砂嵐が強まったようだ。砂も風も入っては来ないが、さすがに風の音だけは防げない。二人は黙って耳を傾けていた。
「そう言えば、なぜあの盗賊達はあんたを襲ってたんだ?」
「金目のものもないのにか?」
言い当てられて若者が言葉に詰まっていると、老人は壁に立てかけてあった無骨な杖を手に取りながら呟くように言った。
「墓を荒らすことはわしが許さん・・・」
「あんた墓守?けど、墓ってどこに?」
ところが老人は懐から小刀を取り出すと、黙って杖を削り出した。若者は質問を変えた。
「縁の相手か?親、兄妹、妻子とか?」
老人は、また耳を傾けるような仕草をした。若者もそうしてみたが、別段外の音は変わらない。
「この分じゃ真夜中まで吹き荒れそうだ。泊まっていくがいい。代わりに年寄りの長話につきあってくれ」
そう言って老人は杖をフッと吹いて、削ったばかりの木っ端を払った。
「お主の知らぬ四国のこと。そして、その四国と対等に渡り合った、騎馬民族の若き長の話だ」