可愛い顔、沢山のお金、全部私のもの。
人は裏切るけど、金は裏切らない。
17歳。女子高生。
みんな私に言うの、可愛いって。
今まで何度言われたか分からない。
私は可愛い。可愛くて可愛くて可愛い。
ここだけの話ね、教えてあげる。
ちょっと自分ひとりで抱え込んでるのは疲れてきちゃった。
でも秘密にしてね。
絶対他の人には言っちゃダメだよ。
私と君だけの秘密。約束。
勿論タダでとは言わないよ。お金はあげる。
いくら欲しいの?
…それだけ?
そんなのでいいんだ。
自分で言ったことにはちゃんと責任持ってよね。
二言は無しだよ。
ああ、女子高生だって見下してるんだね。
言っておくけど、お前の何倍も稼いでるの、私。
ふふっ。
小さい頃から私は可愛かった。
可愛いねって言われて育ったの。
友達も沢山いた。手紙交換も沢山して、シール帳は誰よりも分厚くて、新しいゲーム機も私が一番最初に持っていた。
ブス、って言われたことある?
私はある。ブスにブスって言われたことがね。
妬まれたのかな。知らないけどさ。
初めて言われた、人生で。
一生許さない。
脳みそがぐるぐるってなって、給食で食べたわかめご飯が逆流してきたのを感じた、間違いなく。
あぁ、私の1番好きな献立、わかめご飯。
私はブス?不細工なのかな?可愛く無いのかな?どういうこと?
理解が追いつかなかったな。
絶対に可愛くなるって思った。決めた。
世界で1番可愛くなりたい。
奥目。中顔面陥没。長い人中。下がった広角。全部ダメだ。
何もかも汚く見えてきた。
どんなに鏡を見ても自分の顔に納得いかなくて、私が間違ってたんだなって思った。騙されてたんだ。
可愛いなんて嘘だ。
可愛くない私は働いた。
働かなきゃいけなかった。
身体は私のものだけど、もう私のものじゃなかった。何かに漬けられて何かに乗っ取られた。
ママ、パパ、こんな子になっちゃってごめんなさい。
私、綺麗になったよね?可愛くなったよね?
でももう誰もいなくなっちゃった。
可愛いって言ってくれた人たちはもういないの。
気味悪いんだって。何かの間違いかな。
確かに私はもう私じゃないみたい。