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第7話 甘えん坊さんに看病

前のお話の続きです。



 この前佐山さんが看病に来てくれた時の僕の風邪が佐山さんに移ってしまったようで、今日はその看病に来ている。


 玄関を開けてもらい、中に入る。横を見ると、高そうな壺やらなんやらが置かれてあるが、もちろんそれらの物の価値などわかるわけもなく、ただただすごそうだなぁ、という感想しか抱けない。


 視点を正面に移すと、目の前にはおでこに冷えピタを貼り、だるそうに立っている佐山さんがいる。服装はもこもこのショートパンツに上は少しダルっとした長袖のパーカー。しかしそれでも彼女の抜群のプロポーションが垣間見える。


 佐山さんの両親はたまたまどちらも仕事らしい。なので僕が来ることになってしまった。いや、なってしまった、ではなく来ることになれた、だな。


 なぜなら、さっきからうへぇ、とだるそうにこちらを見ている可愛すぎる佐山さんが見れているからだ。


 改めて佐山さんの彼氏になったんだな、と幸せな気持ちをかみしめていると、佐山さんがだるそうに口を開く。


 「ちょっとぉ、ボーとしないで私を看病してぇ…」


 すぐさま異変に気が付く。


 いつもの佐山さんなら敬語で気軽に話しかけてくる感じなのに、今日はなんだかいつもよりも、カワイイ。


 もちろんいつもの佐山さんもかわいいのだが、今日のは破壊力に特化している……。


 ま、まぁとりあえず佐山さんの部屋に案内してもらおう。


 「佐山さんの部屋って二階?」


 「うん、そぉ」


 「そっか、じゃあ行こうか」


 「うん…」


 そして歩き始めて二歩。佐山さんがペタリと膝を床につける。


 「…もうむりぃ」


 「え、二歩くらいしか歩いてないよ?」


 「むりなものはぁ、むりなのぉ!」


 「えぇ…」


 うむ、どうすれば良いのだろう。


 「ちょっとー佐山さーん?これじゃあ廊下で看病することになるよー?」


 「ヤダぁ……あまねがわくんわたしをはこんでぇ?」

 

 ……え。


 いつもの日常生活で我慢している人は風邪などを引くと、頭のブレーキが利かなくなり、いつもの生活の反動が出るらしい。


 でも、出過ぎじゃないか?これ。かといってここに置いていける訳もなく、結局抱いて部屋まで運ぶことにした。


 背中と腰に手をまわし抱きかかえる。


 「はぁ、しょうがないな。よいしょっと」


 「ふわぇぁ」


 その体の細さと軽さに驚きながらもお姫様抱っこをする。


 佐山さんは僕の胸をきゅっとつかみこちらに顔を寄せている。のだが、まずい。さっきから佐山さんのフルーティーないい香りがしてきて、ただでさえめちゃくちゃ緊張しているのに、それと同時に佐山さんの細い体に見合わない立派な物も押し付けられる。


 それに本人は気が付いていないのであろうが、僕がめちゃくちゃ緊張している事に気が付いておらず、小声で「いいにおぃ」なんて言っているのが丸聞こえである。


 追撃しないでくれ…ほんとに。


 ただでさえ佐山さんの家、というだけでも心臓がバックバクなのだが、この状況では人生最高値の心拍数をたたき出したのではないかと思うほどだった。


 困惑し緊張しつつも相手は病人。この状況にクラっと来るものがあったが、そこはさすがに理性を保つ。


 そうして【シズクの部屋】と書かれた部屋を見つけドアを開けようとするが、両腕は佐山さんを持つ腕で塞がっている。なので佐山さんに開けてもらう。


 いつの間にか大人しくなっている佐山さんに声を掛ける。


 「ごめん佐山さん。両手が塞がってるからドア、開けてくれない?」


 と、頼むと、コクリ、とうなずきお姫様抱っこされながらドアを開ける。


 するとそこには如何にも女の子の部屋、といったような感じで、ピンクを基調とした内装でベットの周りにはたくさんのぬいぐるみが置いてある。


 そんなぬいぐるみに囲まれているベットに佐山さんを寝かせる。


 ふぅ、とため息をつくと佐山さんがこっちを見ていることに気が付く。


 「わたし…おもかったぁ?」


 「いーや、全然そんなことはないよ」


 「そっか…」


 それじゃあ、と、腕にかけていた袋からポカリと風邪薬を取り出す。そして


 「はいこれ飲んで」と、渡すが、一向に持とうとしない。


 はぁ、ちゃんと飲まないと治らないのに。


 「佐山さん?飲まなきゃダメだよ?」


 「……わかった。のむ。だけど、ひとつおねがいしてもいぃ?」


 「何なりと」


 「…これ。わたしにのませてぇ」といって小さな口を開ける。


 「…うまく飲ませられないかもしれないけど、いいの?」


 「ひぃひぃほ」


 口を開けたまま喋ったせいでわかりずらかったが、いいの、と言ってるのだろう。


 じゃあ、と風邪薬をパッケージから取り出し、手のひらに三錠とり出す。


 「入れるよ?」


 と彼女に問うと、コクンと頷く。


 彼女の口の中に錠剤をいれ、すぐにポカリを彼女の手に持たせ、手を添え飲ませる。


 「…ぷはぁ、やっぱりくすり、イヤ」


 と佐山さんがすこしいじけてしまったので頭に手をのせ、その艶やかで、綺麗な黒髪をわしゃわしゃと撫でてあげると「うへへ」と笑顔に戻ってくれた。


 そうして、少しすると佐山さんはあくびをし始めた。風邪薬が効いてきたのだろう。


 時刻は昼過ぎ、佐山さんの両親も今日は早く帰ってくるらしいのでここらへんで帰ろうと思い、「じゃあ、もうそろそろ僕は帰るよ」と言うと、「だめぇ」と言われ素早く手を引っ張られ、枕にされた。


 「え、ちょっと!?佐山さん!?」


 「スヤァ」


 ……完全に爆睡していた。


 それから、佐山さんはもちろん起きることなく、その気持ちよさそうな寝顔を見ていたら手を抜かすことが出来る訳もなく、特に何もすることがなく、ボーとしていた。


 そして数時間後。


 気が付くと眠ってしまっていたようで、目を覚ますと外は暗く、とそっちではなくもう既に起きている佐山さんが赤面し、オロオロしながら僕と、僕の後ろを見ている。


 何事か、と思い、後ろを振り向くとそこには佐山さんの家族と思われる人物が二人居た。


 佐山さんが口を開く。先程までの甘えた口調ではなく、いつもの佐山さんの口調で。


 「お、お母さんと、お父さん……お帰り」


 オトウサント、オカアサン。


 お母様の方はニヤニヤと、お父様の方はメラメラと。


 ……そこで僕は気が付く。


 やらかした。と。


 




 追伸


 この後ご夕食を一緒に食べさせていただきました。


 お父様が怖かったです。



今回も読んでいただきありがとうございます。めでたく二人は佐山さん両親公認?カップルになったようです(笑)


もしおもしろい!と思ったり、続きが気になる!と思った方はぜひともブックマークとお星さまを押していただけると作者が飛んで喜びますので、何卒よろしくお願いします!

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