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第8話 お話。

あれから未だに気まずい雰囲気が続いている。


 とりあえず下に降り、雫が作ってくれたクリームシチューと、鳥の照り焼き的なものを食べている。


 この何とも言えない気まずい空気はいけないと分かっていながらも、雫と僕の間には沈黙と微かに聞こえる咀嚼音のみ。


 今にも口の中に入っている鶏肉がのどに詰まりそうだ。


 しかし、そういえば聞かなければいけなかった事があると気付き、雫に話しかける。


「そ、そういえば、雫の両親っていつ帰ってくるの?」


 何ともぎこちない質問。しかし、これが僕の精一杯だ。


「うぇ!? あの、えーと、確か、『最低でも帰ってくるのは明日の夜になるから』って言ってたよ」


 ほう、という事は明日の夜まで二人、と。


 ……どうしよ。


 そして再び訪れる沈黙。


 そんな中、『ピロリンッ』という機械音が鳴り響く。


「あっ、お風呂湧いたみたい」


「そうなんだ。……どっちから入る?」


 この質問、第三者から見れば何気ない質問なのかもしれない。


 しかし、これは僕にとって死活問題であった。


 まず、僕が先に入ったらそのあとのお湯が臭いと思われたり、なんだか自分が入った後のお風呂に雫が入っていると考えるのもなんだか、ヤバイ。


 かといって、雫の後に入ったらそっちこそ、ヤバイ。


 もう、これに関しては説明する必要もすらもないだろう。


 しかし、意外にも雫は判断が速かった。というか、即決だった。


「私は遼君の後で」


「え、いや、でも、」


「私が後に入るので先にゆっくり長ーく入っててくださいね?」


「あ、うん」


 結局、雫の妙な違和感に押され先に入ることになってしまった。


 



「ふぅ」


 お風呂に浸かりながらため息を漏らす。


 その声は狭いこの浴室を、(といっても我が家よりかは大きいお風呂場なのだが)反響して僕に返ってくる。


 しかしまぁ、相談するだけのつもりだったのだが、こんな事になるとは。


 だが、今日の一件で気が紛れたは事実である。


 雫の膝枕とか、膝枕とか、膝枕とか。


 まぁ、まだ相談という相談はしていないのだが。


 時間と雰囲気を見計らって相談しよう。


 そう思い、改めて肺の空気を吐き出し、湯船につかる。


 熱すぎずぬる過ぎずのちょうど良い温度の湯船はまるで、今までの身体の疲労を丸ごと吸い取ってしまうかのようだった。


 しかし、ゆっくり浸かっててと言われてもさすがに体が熱くなってくる。


 のぼせる前に出ておこう。そう思い湯船から足を出す。


 そして、脱衣所に向かう。


 濡れて冷えた床は冷たい。しかし今、体が火照っている僕にとっては気持ちの良い物だった。


 浴室から出て直ぐの所には着替えとバスタオル。


 急な提案だったのでもちろん着替えはもってきていなかったが、お義父さんのまだ使っていない寝間着を貸してもらえることになった。


 もちろんこのことはお義父さんに言うつもりはない。


 まぁ、そのことは置いておきさっさと着替えを済ませ、雫にお風呂を譲る。


 なんだか持っていくものが多いような気がしたが、その中身を聞くことはない。


 まぁ、女の子は必要なものがたくさんあるんだろうし。よくわからないけど。


 そして、静かだった部屋が突然笑い声で包まれる。


 もちろん、人を招いて雫がいないタイミングでパーティーをする、なんて馬鹿なことはしない。


 この笑い声はテレビだ。


 今やっている番組はお笑い芸人が集まり順番にネタを披露していく、というありきたりなものだった。


 しかし、いつも漫才や、コントを見ない僕にとってはなかなか新鮮なものだった。


 そして時間が過ぎていく。


 一方で、いまだに雫はお風呂から出てこない。


 心配で脱衣所に向かう。


 もちろん急に入ったりはしない。


 なぜなら今日僕は学んだから。

 

 そして、脱衣所の前のドアに着く。


 コン、コン。


 廊下に子気味いい音が鳴る。


「雫ー、大丈夫かー?」


「んっっ!? だ、大丈夫だよ!! 絶対さっきみたいにはいってきちゃだめだからね!?」


「あ、うん。それはわかるけど、少し遅いから大丈夫かなーって」


「大丈夫大丈夫!! レディは準備に時間がかかるの!!」


 いや、何の準備かわかんないけど。


 まぁ、大丈夫そうだし。いっか。


 そして、僕が戻って5分くらいした後に雫もそそくさと戻ってくる。


 それから、ちょこんとソファに座っている僕の横に腰を掛ける。

 

 さっきの空気を引きづっているのか、少し緊張した空気だったが、あらかじめかけておいたお笑いの番組を見ている内にそんな空気はどこかへ行ってしまっていた。


 そして空気は和やかなまま11時を迎える。ちょうど、お笑い番組も終わり、きりのいいタイミングで雫は言った。


「そろそろ寝よっか」


「あ、うん」


 すこし寂しい気持ちもあれど、雫は疲れているのだろう。


「じゃぁ、俺はここで寝るから。おやすみ雫」


「え?」


「え?」


 雫が素っ頓狂な声を上げ、僕はつい驚いてしまう。


 しかし、正直に言うと、次の雫の言動の方が衝撃的だった。


「私の部屋で一緒に寝ないの?」


 きっと雫に悪気はない。その証拠にこの空間で照れているのは俺だけなのだから。


「お布団もないと朝冷えるよ?」


「……そうだね。じゃあ、お願いしようかな」


 何流されてんだよ俺。という意見と、行っちゃえ!という意見が脳内で戦った結果。


 速攻で行っちゃえ!派が勝利した。


 まぁ、しょうがないだろう?


 そんなことを考えている内に雫がリビングの電気を消し、部屋へと向かう。


「行こ? 遼君?」


「あ、うん」


 送れないように、そして、動揺を見られないように雫の後ろについていく。


 そして【シズクの部屋】と書かれた扉を開け、中に入る。


 しかし、先程とは打って変わって全く違う部屋に感じる。


 それが、雫と泊まるからなのかはわからない。


 そして、雫はお布団を出し、ベットの横の床に敷く。


「はい、どーぞ!」


「うん。ありがとう」


 そして僕は布団に、雫はベットに入り、雫が電気を消す。

 

 そして訪れた静寂の時間。


 しかし、それは思ったよりも長くは続かなかった。


「相談……あるんだよね」


 唐突に切り出されたその話題は、ここに来ることになった本来の理由であり、ずっとタイミングを見計らっていたものだった。


「あぁ、うん」


 忘れていた、といえば嘘になるが雫のお陰で、心はかなり楽になっていた。


「私は気の利いたアドバイスとか出来るかわからないけど、精いっぱい頑張ってみる」

 

「うん。ありがとう」


 そう言って、少し間をおいて僕は話始めた。


 今まであった池田とのことを。





今回も読んでいただきありがとうございました。まさかの一緒の部屋で寝泊まり。

遼。そこ代われ。

って書きながら思いました。作者ですこんにちは。こんばんわ。


今回は個人的に憧れますね。おんなじ部屋で彼女と寝泊まり。あ、変な事は一切しないですよ?(笑)


と、まぁ、やっとこさイチャイチャ回から相談に戻ってこれました。

次回は、、、雫サイドを挟みます。本編楽しみにしてくれた方ゴメンナサイ。

ですが、来週中に2話投稿する「予定」なのでお楽しみに。



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