第7話 二人っきり。
遅くなってしまいすいません。
少しずつ意識が覚醒し出す。瞼を開けようと奮闘していると、香ばしく、おいしそうな匂いが鼻腔を通る。
何かの料理だろうか。
いや、でも俺は一人暮らしで、料理する人はいないはず……。
何者かが家に侵入して、料理を作っているのだろうか。
まぁ、そんな馬鹿なことはないと思うが、時間が経つごとに心配になってきたので、瞼と葛藤している暇はなかった。
そして目を開けると目の前には一面ピンクの壁と、たくさんのぬいぐるみ。
一瞬頭が混乱する。
しかし、すぐにこの状況を理解出来た。
いや、理解できた、というよりもぐっすり寝すぎて忘れていた、という方があっている。
自分の頭を向けている反対側の壁にあるかわいらしい時計に目を向けると時刻は8時20分。
あれ?
8時20分。それは、もうすでに世間の大半の人間は帰宅している。そして、香ばしくいい匂い。
すべてがリンクする。
お義父さんとお義母さん帰ってきてんじゃん。
すぐさま、覚醒しきっていなかった頭をフル回転させこの状況を打開する方法を模索する。
それはまるで、平和ボケしきった主人公がゾンビに襲われ必死に逃げる方法を考える、あのシーンさながらである。
あ、決してお義母さんとお義父さん、特にお義父さんのことをゾンビと言ったわけではないですよ?
まぁ、お義父さんのあの目は殺しに、、いや、今はそのことについて考えることはやめよう。
とりあえず、雫を探そう。
そして、さっきまでお世話になっていたぷにぷにの太ももを頼りに探そうとする。
しかし、そこにはぷにぷにな太ももも、あのカワイイ雫も居ない。
ここでまたもやこの状況とリンクする。
もしかしたら雫は俺とお義母さんお義父さんに会わないよう気を使ってくれているのか!
しかし、そんな想像も虚しくタン、タン、と一歩ずつしっかりと階段を上ってくる足音が聞こえてくる。
もしや、お義父さん?
これはまずい。そう思い雫の部屋から出れる窓を探すと、ベットの真横にそこそこ大きい窓があることに気が付いた。
これだ。そう思い、すぐさまその窓に駆け寄り下を確認する。
しかし、思いのほか高く俺の自分のちっさいハートでは飛び降りれないことを確信する。
そんな中でも近づいてくるその足音に、とてつもなくビビりながらドアの前に立つ。
そして、そのドアに向かい膝を落とす。
僕がこの状況で出来ることは一つ。
DO・GE・ZA☆
頭を地面に念入りにこすりつけ、入ってくるその時を待つ。
そして、足音がドアの目の前にまで来る。
なぜか、すーっと静かに開かれるドア。
そして、ご対面。
誠心誠意の土下座をかましたならばさすがに怒られはしないだろう。
全く、自分でも情けない。でも、あの目は本当に殺しにかかってるんだよ。
そして、少なからず叱責される覚悟だったのだが、帰ってきたのは意外な言葉だった。
「はぇ?」
可愛らしい声。この声の主が半分誰か分かっていながらも顔を上げる。
しかし、見えてきたものは一度見たことのある、短めの白いスカートの中からのぞかせる紺色の水玉模様。
あれ、これって。
そう思った瞬間の事。
顔が蹴り飛ばされる。
「あふぁっっっ」
「ばかぁぁぁ!」
「いや、本当にごめん! そんなつもりはなかったんだよ!」
「‥‥‥じゃあなんで土下座なんかしてたのよ!」
「いやぁ、それはお義父‥‥」
ってあれ?そういえば雫ってお義父さんのあの目には気づいてないんだっけ。
それじゃあ最初から、俺の勘違いだったと。
「え? おとう? お父さん? パパとママならお仕事で遠くに行ってて今日は帰ってこないよ?」
ふぅ、危ない。このことがばれてたら相当すごいことに‥‥‥。
ん? 「今日は帰ってこない」という事は、この時間に二人っきり、と。
は?
「‥‥と、言うことは、今ここにいるのは僕と雫だけ?」
「そうそう。私と遼君‥‥‥だけ」
段々と赤くなっていく顔に色々と僕は察する。
つまり、雫は意図せずにこの状況を引き起こしてしまった、と。
ここで僕と雫は自分たちのこの状況に気まずさを覚えながらお互い黙る。
しかし、時間が経つごとにお互いの気まずさは増していく。それに釣られてか思考回路も少しずつおかしくなって来たような感覚がしてきた。
これはまずいかもしれない。そう思ったが、雫もそう思ったようで口を開く。
「あのー、今日だけ、私の家にお泊りしますか?」
うん。雫の方が相当やられてたみたいだ。
これからはおそらく週に一回ほどになると思います。(作者の気分次第で早めに更新する日もあるカモです)
ですが、完結はしっかりとさせるので気を長くお待ちしていただければ嬉しいです。
それともしも良かったらブクマとお星さまをよろしくお願いします。(もうすでにしていただいてる人はありがとうございます)