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 その日の夜。

 

 お母さんは残業があって、家に帰って来たのは二十時を過ぎてからだった。


 夕食の後、お母さんがお風呂に入ったのを確かめると、私はリビングダイニングキッチンの丸テーブルの上で充電中の、お母さんのスマートフォンを手に取る。


 横のボタンを押すと、黒一色だった画面が切り替わって、ロックの掛かった待機画面になった。


 指紋認証でもロック解除できるけど、画面を上にスワイプすれば、点を繋いで図形を描くパターン認証でもロックを解除できるようになっている。


 指紋認証はお母さんの指紋しか登録してないから無理だけど、パターン認証なら私でもロック解除できた。


 私がスマートフォンを買ってもらったのは高校生になってからで、それまではお母さんのスマートフォンを借りて動画を見せてもらったりしていたから、ロックの解除の仕方を教えてもらっていたのだ。

 

 私はロックを解除すると、早速連絡帳を開いた。


 登録された名前は五十音順に並んでいて、画面をスクロールして「や行」の「結城一穂」さんを探していくと、思った通り結城さんの名前が並んでいる。


 私はすぐに結城さんの名前をタップして、電話番号とメールアドレスをメモ帳に書き写すと、画面を閉じて、スマートフォンを元通りの場所に戻した。


 付けた指紋はティッシュで拭いたし、多分バレることはないだろう。

 

 私はメモ帳を手に、いそいそと自分の部屋に戻った。






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