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 私は本が入ってずしりと重い紙袋を片手に本屋さんを出て少し歩くと、通路に設えられたスツールの一つに腰を下ろした。


 ショッピングモールは結構混んでいて、すぐ側には知らない親子連れが座っている。


 ちょっと落ち着かないけど、まだ外は暑い時間だし、どうせならもう少し涼んでから帰りたかった。

 

 私は三冊の中から適当に選んだ本を手に取ると、早速開いてみる。


 表紙には妖怪の絵が描かれていて、ちょっとたじろいだけれど、思い切って本を開いてみると、本文には妖怪の絵は描かれていない。


 これなら安心して読めそうだ。


 普段は物語の本ばかりを読んでいて、専門書を読むのは初めてだけれど、触りを読んだ限りでは難解な専門用語もなくて、高校生でもちゃんと理解できそうだった。

 

 ページを繰っていると、少しして「『神』と『妖怪』の区別は容易でない」という文章が目に飛び込んできて、私はちょっとびっくりする。


 この手のものに詳しくないから、あくまで私の勝手なイメージだけど、神は人間を助けてくれたり、守ってくれたりする善の存在で、妖怪は人間に害を為す邪悪な存在だと思っていたから、区別が難しいというのはひどく意外だった。


 でも思い返せば、あの『ぬらりひょん』のお兄さんも「神と妖怪は紙一重」と言っていたし、どちらも本質は限りなく近しいものなのだろう。


 どうも神と妖怪の定義は人によって違うようだけど、この本の著者は「人々に祀り上げられている超越的存在」が『神』で、「祀り上げられていない超越的存在」が『妖怪』だと定めているみたいだ。


 そもそも「『妖怪』という言葉は、怪しい存在=不思議な現象を指し示す言葉として、近代になって作り出されたもので、『神』と対比させるような概念・用語ではない」そうで、「要するに、『妖怪』も神の一種だった」と、この本には書いてあった。


 しかもキリスト教の『神』と『悪魔』が立場を入れ替えることがないのとは対照的に、日本の『神』は祭祀されなくなると『妖怪』になるし、反対に『妖怪』でも祭祀されれば『神』になれるらしい。

 

 妖怪が神の一種だなんて、あまりピンと来なかったけれど、妖怪も神と思えば、あまり怖くなくなる気がする。


 『毛倡妓』みたいに一個人が創った妖怪もいる訳だから、妖怪全てに当て嵌まる訳ではないのだろうけれど。






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