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お夕飯の後片付けとお風呂を済ませて自分の部屋に戻った私は、髪を乾かし終わると、ドレッサーの前の椅子から立ち上がった。
クローゼットから紙袋を出すと、中からお父さんの携帯電話を拾い上げる。
もうお母さんは帰って来ているから、見付かったらと思うと少し不安だったけど、お母さんの部屋は洗面所の向かいだし、お互いそれぞれの部屋に引き上げた後に行き来することはほとんどないから、そうびくびくすることもないだろう。
私はテーブルに紙袋を置くと、早速二つ折りの携帯電話を開いた。
まだ使い方はよくわからないけど、適当にボタンをあちこち押していたら、メールの受信履歴が出てくる。
ざっと履歴を見てみると、事件直後はともかく、お父さんに今もメールを送ってくれているのは度会蓮也さん一人だけみたいだ。
多分お父さんとはかなり親しかったのだろう。
この人ならお父さんのことをよく知っていそうだった。
私から連絡しても良かったけど、変な気を起こされたりしても嫌だし、お兄ちゃんから連絡してもらった方がいいだろう。
私はメモ帳に度会さんの連絡先をメモすると、切り取ったメモ用紙を小さく折り畳んだ。
後でお兄ちゃんに渡すことにして、今度はお父さんのメモ帳を開く。
書かれているのはクレジットカード会社やインターネットショッピング関連のアカウントとパスワードがほとんどだったけど、一つだけSNSのアカウントとパスワードが書いてある。
試しにスマートフォンでSNSを検索してみると、サービスはまだ継続中だ。
ログイン画面に移動して、メモの通りにアカウントとパスワードを入力すると、お父さんの日記を見ることができた。
最後に書かれた日記の日付けは十年前の「八月十四日」。
あの事件の少し前だ。
タイトルは「もうすぐ夏祭り」。
私は早速タイトルをクリックして、日記を開いてみた。




