―76―
私とお兄ちゃんは、十七時頃に伊武のおじいちゃん家を後にした。
借りたのは携帯電話の他に小・中・高校の卒業アルバム、手紙、年賀状、サイトやSNSのパスワードらしい物が書かれたメモ帳だ。
お父さんの部屋には大学の卒業証書もあったけど、大学の卒業アルバムは見当たらなかった。
大学ともなると、学生の数が多過ぎて、友達より知らない人の方が多いだろうし、卒業アルバムを手元に置いておきたいとは思わないのかも知れない。
何が役に立つかわからないから、とりあえず使えそうな物を片っ端から借りて来たけど、きっと実際役に立つ物はそれ程多くないだろう。
お父さんが亡くなったのは十年も前だから、メールアドレスや住所がわかったところで、まだ使われているのはその中のごく一部に違いない。
私は家に着くと、むっとする空気に顔を顰めながら、洗面所のドア横にバッグを置いて、お兄ちゃんより先にうがい手洗いを済ませた。
お兄ちゃんと入れ違いに洗面所を出ると、お父さんの持ち物が入った紙袋とバッグを持って、自分の部屋へ向かう。
リビングダイニングキッチンを通って、自分の部屋のドアを開けたら、そこもやっぱり暑くて、私はすぐさま窓を開けた。
すぐに夕ご飯を作るから、エアコンをつけることもないだろう。
私は自分の部屋をぐるりと見回してみたけど、お父さんの荷物を隠せそうな場所はクローゼットの中くらいしか思い付かなかった。
我ながら捻りのない隠し場所だけど、自分の洗濯物は自分でしまうようにしているから、お母さんがクローゼットを開けることはない筈だ。
私はクローゼットの中に紙袋をしまうと、すぐに部屋を出た。




