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「あの事件が起こった時、お父さんは女の人と一緒にいたでしょ? お父さん、誰か余所の女の人と仲良さそうにしてなかった?」


 おじいちゃんは目に映る記憶を吟味するみたいに目をすがめて、少しの間そうしてから、ゆっくりと首を振った。


「いや、特に覚えがないな。普通、家族に隠れてこっそり会ってる人のことを親に話したりはしないだろう? そんな人のことを調べてどうするんだい?」


 困惑げに眉を皺めるおじいちゃんの目をしっかりと見て、私は答えた。


「本当のことを確かめたいの。お母さん達はお父さんが不倫してたって思い込んでるけど、もしかしたら勘違いかも知れないでしょ? お父さんは死んじゃって、説明したくてもできないんだし、お父さんがあの女の人とどんな関係だったのか、ちゃんと知りたいんだ。本当に不倫してたとしても、それはそれで、こんな宙ぶらりんなままよりはすっきりできると思うから」

「そうか……確かにわからないままというのはもどかしくて、口惜しいな」


 おじいちゃんは伏し目がちにそう言った。


 お父さんを刺した犯人はまだ捕まっていないし、これからも捕まることはないかも知れない。


 私だって犯人を知りたいとは思うけど、多分おじいちゃんとおばあちゃんの方が私なんかよりもっと切実にそう思っているだろうし、苦しいだろう。


 私がお父さんと一緒に過ごしたのはたったの五年で、しかも物心付く前の記憶はないけど、おじいちゃんとおばあちゃんはお父さんが赤ちゃんの時から大人になって家を出るまで、ずっと一緒だったのだから。


 私が胸を痛めていると、ドアをノックする音がして、おばあちゃんがドアを開けた。


 おばあちゃんが持っているお盆の上には、麦茶かウーロン茶らしい氷の浮かんだ人数分のお茶と、チョコレートと私達が持って来たクッキーが並んだお皿がある。


 おばあちゃんはもう気持ちがすっかり落ち着いたみたいで、テーブルをてきぱきと台ふきんで拭いてから、テーブルにお皿やグラスを並べると、空いている座布団に腰を下ろして言った。


「どうぞ、召し上がれ」






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