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弓納持のおじいちゃん家はあまり見掛けなくなってきた、いかにも和風な一軒家だけど、伊武のおじいちゃん家はそれ程和風テイストが強くない。
引き戸でもなければ瓦屋根でもない、どこにでもあるような古い二階建ての家だった。
ブロック塀で囲まれていて、太い門柱には「伊武」という石の表札が掛かっている。
この辺の景色にはほとんど見覚えがなかったけど、伊武のおじいちゃん家のことは多少覚えていて、ここがおじいちゃんの家だと確信できた。
私とお兄ちゃんは門をくぐると、木製のドア横にあるインターフォンを押す。
ドアの向こうから廊下を走る音が聞こえたと思ったら、すぐにドアが開いて、おばあちゃんらしき人の顔が覗いた。
耳の少し下で切り揃えた、灰色に近い黒髪。
目はそれ程悪くないみたいで、眼鏡は掛けていなかった。若い時は結構美人だったのだろうと思わせるその顔は皺が少なくて、弓納持のおばあちゃんより五歳くらいは若く見える。
実際年も何歳か若かった筈だ。
最後に会ったのは十年も前だから、記憶の中のおばあちゃんの顔は曖昧だったけど、おばあちゃんにはお父さんの面影があったから、おばあちゃんだとすぐにわかった。
落ち着いたベージュ色のワンピースが上品で、カジュアルファッションの弓納持のおばあちゃんとは対照的な印象だ。
おばあちゃんはきっとごく普通の家の生まれだろうけど、老貴婦人と言っても通りそうだなと思っていると、おばあちゃんが懐かしそうに目を細めて言った。
「こんにちは。和己君と日和ちゃん、よね?」
「はい、ご無沙汰してます」
お兄ちゃんがいつになく畏まって挨拶すると、おばあちゃんは口元に手を当てて、上品に笑みを漏らした。
「会うのは随分久し振りだけど、仮にも孫とおばあちゃんなんだから、そんなに畏まらないで。ほら、上がって頂戴」
「お邪魔します」




