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私とお兄ちゃんは、次の土曜日に伊武のおじいちゃん家に行くことになった。
おじいちゃんの家はいつも通学で使っている路線沿い――高校の最寄り駅の数駅先にある。
子供の頃に何回か行ったことがあったけど、もう少し遠い気がしていたから、思ったより近くてびっくりした。
うんと子供の時に感じていた世界は、大きくなってみると本当にちっぽけだ。
約束の時間は十四時で、私とお兄ちゃんは土曜日の十三時過ぎに、一緒にマンションを出た。
駅横のビルで適当なお菓子を見繕ってから上り電車に乗ると、ほんの十分くらいでおじいちゃん家の最寄り駅に着く。
そこは小さな駅で、改札を出てもコンビニの一つもなかった。
左に進んで南口のエスカレーターを下りた先には、それ程大きくないロータリーがある。
バスだけでなく一般の乗用車も入って来ているけど、数が少なくて、私達の最寄り駅に比べたら、随分がらんとして見えた。
ドラッグストアやコンビニといったお店はそれなりにあるとはいえ、人影もまばらだ。
何となくこの風景を覚えているような気もしたけれど、あの頃はまだ小さかったから、懐かしさはほとんど感じなかった。
私とお兄ちゃんはスマートフォンのナビを頼りに、ロータリーの脇を真っ直ぐ歩いて行く。
駅前を横に走っている道路はそれなりに交通量が多いけど、横断歩道を渡った先の道は、小さな八百屋さんや銀行が並ぶ静かなそれだ。
その道を少し歩くと、生け垣に囲まれた大きな公園があって、私とお兄ちゃんは右手にある出入り口から揃って公園に入る。
すぐそこは駐輪場になっていて、二、三十台くらいの自転車がずらりと並んでいた。
Uの字を組み合わせたようなオブジェの近くには、白っぽい管理事務所が建っていて、カートや自転車の貸し出しが行われている。
係りの人や保護者達が子供達を見守る中、私とお兄ちゃんは公園を突き切って歩いた。
今日もやっぱりいい天気で、外を歩くには不向きだけど、荷物をお兄ちゃんに持ってもらっている分、ちょっとは楽だ。
私とお兄ちゃんは公園を突き切って反対側の道路に出ると、右に曲がって少し歩いてから足を止める。
おじいちゃんの家は公園のすぐ側の静かな住宅地の中にある、かなり年季の入った一軒家だった。




