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伊武のおじいちゃん達に手紙を送ってから、一週間以上経った。
手紙ならともかく、メールならとうに返事があってもいい頃だけど、まだ何の連絡もない。
やっぱり無視されているのかも知れなかった。
もう少し待って何の反応もなければ、やり方を変えてみるべきだろう。
弓納持のおじいちゃん達は、伊武のおじいちゃん達とそれなりの関係を保っているみたいだし、弓納持のおじいちゃん達の口添えがあれば、伊武のおじいちゃん達もちゃんと応対してくれるかも知れない。
私がそんなことを考えながら塾の夏期講習から帰って来た時には、十六時を過ぎていた。
お母さんはともかくお兄ちゃんもまだ帰っていないみたいで、家の中は少しでも物音を立てたら家中に響き渡りそうな程、静まり返っている。
私は暑い空気に満たされた廊下を進んで洗面所に向かうと、いつものようにうがい手洗いを済ませてから、リビングダイニングキッチンのドアを開けた。
もう夕方だし、多少の暑さなら電気代の節約のために我慢しようかとも思うけど、あまり気温が下がっている感じがしなくて、私はリモコンを操作してエアコンを付ける。
そうして自分の部屋にバッグを置きがてら、朝干した洗濯物を取り込むことにした。洗濯物をぶら下げたピンチハンガーを部屋の中に入れていると、ポケットに入れっ放しにしていたスマートフォンが小さく振動する。
スマートフォンを取り出してみると、メールが来ていた。
差出人の名前は「伊武多賀子」――伊武のおばあちゃんからだ。
私は洗濯物の取り込みを一旦やめて窓を閉めると、ロックを解除してメールを開いてみる。
日和ちゃん
こんにちは、久し振りね。
元気そうで良かったわ。
私とおじいちゃんも元気よ。
返事が遅くなってしまってごめんなさい。
急に日和ちゃんからお手紙が来たから、もしかしたら悪戯や詐欺かも知れないと思って、弓納持のおじいちゃん達に何か聞いていないかお手紙で訊いていたの。
日和ちゃん達はお父さんのことを調べ始めたのね。
お父さんが残した物は全部捨てずに取ってあるから、今度都合のいい時に、お兄ちゃんといらっしゃい。
私の電話番号も書いておくから、どうぞ連絡してね。
大きくなった日和ちゃん達に会えるのを楽しみにしています。
メールを最後まで読み終えて、私はほっと息を吐いた。
良かった。
おばあちゃんは思ったより心の広い人みたいだ。
私はお兄ちゃんに伊武のおばあちゃんからメールが来たというメッセージを送ると、お兄ちゃんからの返信を待つ間に洗濯物の取り込みを再開した。




