―61―
大反響という程じゃないけど、私の書き込みにはそれなりの反響があったし、お兄さんが黙っておこうと考えたとしてもおかしくなかった。
お兄さんは別に有名になりたくて私を助けてくれた訳じゃないだろうし、変に騒がれたりするのは迷惑だろう。
これ以上ネットでお兄さんを捜すのは、やめた方が良さそうだ。
私がそう思った時、神奈ちゃんのバッグの中からスマートフォンの振動音が聞こえてきた。
「ちょっとごめん」
神奈ちゃんはそう断ると、バッグの中からスマートフォンを取り出した。
「誰? 友達?」
清香ちゃんの質問に、神奈ちゃんはスマートフォンを操作しながら、ちょっとだけ声を弾ませて答える。
「ううん、お姉ちゃんだった。里帰り出産するから、今日の夜帰って来るって」
神奈ちゃんにお姉さんがいるという話は聞いていたけど、妊娠中だなんて初耳だ。
私はストロベリー味のドーナツを齧りながら、神奈ちゃんに尋ねた。
「赤ちゃんって、男の子? 女の子?」
「男の子だって」
「へえ、じゃあ甥っ子かあ」
清香ちゃんはそう言うと、心底羨ましそうに続けた。
「いいなあ、年の離れた弟みたいなもんだよね。やっぱり私もお兄ちゃんかお姉ちゃん、欲しかったなあ。そしたら、私にも甥っ子がいたかも知れないのに」
私にはお兄ちゃんがいるけど、あのお兄ちゃんがその内結婚して子供を持つなんて、全然想像できなかった。
あのちょっと変人のお兄ちゃんを好きになってくれる女の人なんて、果たしてこの世に存在するのだろうか。
……しない気がする。
「ウチのお兄ちゃんは死ぬまで独身かも。彼女がいるなんて話聞いたことないし、結婚向いてない気がするもん」
私がアイスティーを飲み下してからそう言うと、清香ちゃんが小さく首を傾げた。




