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自分が「面白い」と思う本が好評だと、仲間が増えたような気がして嬉しい。
できれば今すぐ清香ちゃんと面白かったポイントについて語り合いたかったけど、まだ読んでいない神奈ちゃんは絶対話に付いて来られないから、今はぐっと我慢することにした。
どうせなら、三人で盛り上がった方が楽しいだろう。
私がストローでコーラを飲んでいると、神奈ちゃんが言った。
「私も早く読みたいなあ。お礼に今度何か貸すね。何がいいかなあ? ホラー系も駄目だし、バトル系も駄目なんだよね?」
「うん。血が飛び散ったり、残酷描写があったりするのはちょっとね……」
お父さんの事件現場のことを思い出すから、私はお化けや妖怪だけでなく、血も苦手だ。
生理が来るようになって、血にはある程度慣れたつもりだけど、お化けや妖怪は全然駄目なままだった。
いくら物語の中の出来事とはいえ――むしろ物語の中の出来事だからこそ、その中で起こることは平和で、恐怖や血生臭さとは無縁であって欲しい。
現実はどうしたって、物語みたいには行かないのだから。
「恋愛系とかギャグ系がいいな。あと、人が死なない系のミステリーも結構好きだよ」
「ホラーはともかく、バトル物は結構面白いヤツ多いのに、何だか勿体ないなあ」
清香ちゃんが油で揚げていないドーナツを齧りながら、ちょっと残念そうに言った。
清香ちゃんが一番好きなのは巨大ロボット物だけど、少年漫画系のバトル物もお気に入りだから、広く浅くいろいろなジャンルを読む神奈ちゃんと違って、私にお気に入りの漫画を勧められないことが残念で仕方ないらしい。
時々「食わず嫌いしないで読んでみたら?」と言われるけど、無理なものは無理だった。
思案顔でチョコレートのかかったドーナツを頬張っていた神奈ちゃんが、ドーナツを飲み込んでから言う。
「あのね、この間買ったラノベはどうかなあ? よくある中世ヨーロッパ風の国が舞台でね、婚約破棄された伯爵令嬢が農業を極めて成功するラブコメ物で、結構面白かったんだけど」
私が主に読んでいるのは一般文芸や純文学で、ライトノベルはあまり読んだことがないけど、ジャンルがラブコメディなら、間違っても怯えながら読むようなことにはならないだろう。
たまには、普段読まないジャンルの本を読むのも悪くなかった。
「いいね、それ読んでみたいな」
「じゃあ、今度漫画返す時、一緒に持ってくるね」
「うん、ありがとう」




