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 次の日。


 今日も外に出たくなくなるくらいの暑さだけど、私はお母さんと一緒に一通りの家事を済ませて、きちんと宿題もしてから家を出た。


 まずは近所のコンビニで切手を買って、手紙を投函してから、駅前の古本屋さんに妖怪関係の本を探しに行くことにする。


 午後からは神奈ちゃん達と遊ぶ約束もあるし、今日は休みだけど、塾の夏期講習もあるから、あの『毛倡妓』にばかりかまけてはいられなかった。


 エレベーターを降りた私がエントランスからマンションの外に出ると、暑さのせいか、日曜日の割に道を歩いている人は少ない。


 私はできるだけ日陰を選んで行ったコンビニで切手を買うと、レジ前にあるポストに手紙を投函した。


 後は返事待ちだけど、おじいちゃん達はちゃんと返事をくれるだろうか。


 一応血の繋がりはあるとは言っても、十年も音沙汰なしだった上に、お母さんと伊武のおばあちゃんはあまり上手く行っていなかったみたいだし、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」で、手紙を無視される可能性は十分にあった。


 私は特に伊武のおばあちゃんに冷たくされた覚えはないけど、お母さんと伊武のおばあちゃんの仲が悪かった記憶もないから、実際はどうだかわからない。


 幸い伊武のおばあちゃんだけでなく、おじいちゃんもまだ元気みたいだし、おばあちゃんが駄目でもおじいちゃんが私達に会いたがってくれることに望みを託すしかなかった。

 

 私はコンビニを出ると、そのまま最寄り駅へと向かう。


 ペデストリアンデッキに上がって、駅の改札を横切り、南口の階段を下りると、ショッピングモールとは反対方向にある古本屋さんの方へと歩き出した。


 駅前にある古本屋さんは、どこにでもあるチェーン店で、マンションの一階に入っている。


 出入り口の上に掛かっている黄色を基調とした派手な看板は、プラスチックだから綺麗なままだったけど、その右手の「本・CD・お売り下さい」と書かれた青い看板は随分色褪せていた。


 私が引っ越してきた時にはもうこのお店はここにあったから、少なくとも十年はここで営業を続けていることになるし、看板が古びるのも道理だろう。

 

 小さなお店だから品揃えはお世辞にも豊富とは言えないものの、駄目で元々だ。


 私は駐輪場に並ぶ自転車や、激安CDや文庫本の入ったワゴンを素通りして自動ドアをくぐると、レジカウンターを横目に、奥の本棚の方へと歩いて行く。


 そうして専門書のコーナーをざっと見てみたけれど、案の定妖怪の本は見付からなかった。


 正直懐は痛いけど、新書を買うしかなさそうだ。

 

 私は古本屋さんを出て駅に戻ると、ショッピングモールの中にある本屋さんに行くことにした。


 ショッピングモールは駅から歩いて十分くらいの所にある、クリーム色を基調にした大きな建物だ。


 ほんの三階建てだけど、床面積がとにかく広くて、立体駐車場も併設されている。


 大きな看板を戴く庇を何本もの太い円柱が支えるエントランスに足を踏み入れた私は、エスカレーターやインフォメーションを横目に、奥へと向かった。


 そのまま五分くらい歩いた所に、目当ての本屋さんがある。


 地域最大級の品揃えを謳っているだけあって、かなり大きな本屋さんだ。


 一番手前の児童書コーナーには、子供達が本を読むだけでなく、おもちゃでも遊べるスペースがあるし、保護者が座って休めるベンチまであった。


 私は児童書コーナーを素通りすると、雑誌や新刊のコーナーを通って、文芸コーナーへ足を向ける。


 文庫の奥に専門書が並んでいるのは知っていたけど、今まで専門書に縁がなかったから、どういうジャンルの本が揃っているのかまではわからない。


 民俗学なんてそう人気があるとも思えないし、いくら品揃えの良さを売りにしている本屋さんでも、取り扱いがないかも知れなかった。


 あまり期待しないで本棚を探してみると、予想に反して民俗学の本は十冊以上並んでいたけど、妖怪に特化した本は見当たらない。


 この辺で一番大きい本屋さんでこれなら、きっと近所にある他の本屋さんに行っても無駄だろう。


 取り寄せてもらった方が良さそうだった。


 インターネットショッピングという手もあるけど、別に急いでいる訳でもないし、本屋さんが好きだから、本は基本的に実店舗で買うことにしている。


 微々たる額でも売上に貢献しなければ、その内このお店も無くなってしまうかも知れない。


 私はスマートフォンで妖怪の本を数冊検索すると、レジカウンターを目指して歩き始めた。






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