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 てっきりお父さんの物は全部捨てられてしまったとばかり思っていたから、伊武のおじいちゃんの所に送られていたというのはひどく意外だった。


 お父さんが死んだ時、わざわざお父さんの姓まで捨てて旧姓に戻したお母さんのことだから、お父さんの物なんて全部ゴミにしたに違いないと思っていたのに。


 もしかしたら、伊武のおじいちゃん達の所に荷物を送るように手配してくれたのは、おばあちゃんなのかも知れなかった。


「伊武のおじいちゃん達の連絡先、わかる? お母さん、伊武のおじいちゃん達とは縁を切っちゃってるから、私達もずっと連絡取ってなくて……」

「そんなことだろうと思ったわ。あの子、周さんがあんなことになる前から、伊武のお義母かあさんとはあまり折り合いが良くなかったものね。ちょっと待ってて」


 おばあちゃんはそう言い置くと、襖を開けて出て行った。


 襖が完全に閉まったところで、私はおじいちゃんに問いかける。


「おじいちゃん達は、伊武のおじいちゃん達と時々会ったりしてるの?」

「いいや、最後にお会いしたのはお父さんの葬儀の時かな。でも年賀状や暑中見舞いのやり取りは続けているんだ。正直に言えば、周君に対していろいろと思うところはあるけど、あんな事件で息子さんを亡くされたお二人が気掛かりでね、お母さんみたいに縁を切ってしまう気にはなれなかったんだよ」


 おじいちゃんはそう言うと、静かにアイスティーを傾ける。


 お父さんが不倫をしていたと思っていたおじいちゃんからしたら、お父さんの生みの親なんて好き好んで付き合いたい相手じゃないだろうけど、それでも二人を気遣おうとするおじいちゃんの懐の深さが、私は好きだった。


 おばあちゃんも、きっとおじいちゃんのこういうところを好きになったのだろう。

 

 私がそう納得してアップルパイを食べていると、おばあちゃんが襖の向こうから顔を出した。


「お待たせ。あったわよ、年賀状」


 おばあちゃんはさっき座っていた座布団に腰を下ろすと、座卓の向こうから年賀状を差し出してきた。


 差出人の名前を見ると、伊武のおじいちゃんとおばあちゃんの名前と住所がばっちり書かれている。


 私は年賀状を手に取って言った。


「ありがとう! 助かるよ」

「役に立てて良かったわ」


 おばあちゃんはそう言って、眼鏡の奥の瞳を和ませた。







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