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「日和は今年から高校生だったね。やっぱり勉強は大変かな?」
「うん。進学校だから、テストはちょっと難しかった。でも普段の授業はちゃんと予習しておけば付いて行けないなんてことないし、これでも結構成績いい方なんだよ」
別に見栄を張っている訳じゃない。
私の高校は十段階評価で、私の一学期の評定平均は八・〇以上だ。
先生が言うには七・〇以上なら平均より上だそうだから、私の成績はまあまあいい方だろう。
「頑張っているんだね。それならお母さんも安心だ」
おじいちゃんが満足そうに頷くと、襖の向こうからおばあちゃんの声がした。
「お茶持って来たわ。入るわね」
襖が開いて、おばあちゃんが長方形の大きなお盆と一緒に入って来た。
お盆の上には、レモンが浮かぶアイスティーにアップルパイ、フォークが人数分乗っている。
おばあちゃんは台フキンでさっと座卓を拭くと、てきぱきとアイスティーやアップルパイを並べて、私の向かいの座布団に腰を落ち着けながら言った。
「どうぞ、召し上がれ」
「頂きます」
私とお兄ちゃんは軽く手を合わせると、揃ってアイスティーに手を伸ばした。
こう暑いと、どうしても喉が渇く。
濃い目に淹れたアイスティーには氷が浮かんでいて、体を内側から冷やしてくれた。
私はアイスティーを座卓に戻すと、アップルパイを食べ始めるお兄ちゃんを横目に切り出す。
「あのね、実はちょっと訊きたいことがあって来たんだ。お父さんのことなんだけど……」
おじいちゃんとおばあちゃんの顔が揃って強張った。
あんな事件のことなんて、思い出したくもないだろう。
ましてや、事件当時自分達の娘以外の女の人と一緒にいた義理の息子のことなんて、尚更思い出したくないに違いない。
でも、今私が頼れるのはおじいちゃんとおばあちゃんだけだから、私は敢えて言った。
「お父さんがどうしてあの時余所の女の人といたのか、あの人が誰なのか知りたいんだ。今更そんなこと知ったってどうしようもないけど、お母さんは何も教えてくれないし、ずっと気になってたから……私達もう大学生と高校生だし、多分ちゃんと受け止められるから、あの人のこと知ってたら教えて欲しいの」




