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私が早速入力画面に文章を打ち込んでいると、少ししてバスがほぼ時間通りにやって来た。
バスに乗り込んだ私とお兄ちゃんが唯一空いていた二人掛けの席に並んで座ると、バスはゆっくりと動き出す。
私達のマンションからおじいちゃん家まではバスで十五分くらいだから、立っていたって大して負担にはならないけど、やっぱり座れるのは楽でいい。
「最近どう?」
ずっと黙って座っているのもちょっと気詰まりだったから、私はスマートフォンを操作しながら、同じようにスマートフォンのディスプレイを覗き込むお兄ちゃんにそう訊いてみた。
お兄ちゃんはディスプレイから視線を外さずに、短く答える。
「別に普通。そっちは?」
「こっちも普通」
それきり会話は途切れた。
お互い高校生と大学生にもなると、生活リズムも随分違うし、兄妹でも異性となれば、一緒に住んでいても会話らしい会話をしない日も多い。
だから特に用がない時には、あまり会話が続かなかった。
私は黙々とスマートフォンを操作して、
「拡散希望。この間の日曜日、浅草で具合が悪くなっていたところを、外国人のお兄さんに助けてもらいました」
「あの時もらった日傘は失くしてしまったのですが(ごめんなさい)、せめて代わりの日傘を返したいです」
「お兄さんやお兄さんのことを知ってる人、リプライ下さい」
と書き込んでみる。
できるだけたくさんの人にこの書き込みを見てもらえるといいのだけど、どこの誰とも知れない他人を当てにしている訳だし、期待しないで待つべきだった。
私はスマートフォンをバッグにしまうと、代わりに図書館で借りた文庫本を取り出して開く。
タワーマンションやコンビニ、ファミリーレストランといったいろいろなお店の横を通り過ぎて十五分くらい経った頃、私は降車ボタンを押して、お兄ちゃんと一緒にバスを降りた。
おじいちゃん家はここから歩いて五分くらいの一軒家だ。
駅からは少し遠いけど、近くにはドラッグストアもスーパーマーケットもあるし、普段の買い物にはほとんど困らないらしい。
今時はインターネットで手軽に買い物ができるから、尚更だろう。
私達は横断歩道を渡って右に曲がると、細い路地に入った。
途端に車通りは随分少なくなって、アパートや一軒家が多く目に付くようになる。




