―46―
夏休みに入って初めての土曜日。
私とお兄ちゃんはお昼ご飯の片付けをした後、近所のバス停で一緒にバスを待っていた。
お母さんは今日も仕事に行っていて、ここにはいない。
他にバスを待っている人もいなくて、バス停の前にいるのは私とお兄ちゃんだけだった。
こうしてお兄ちゃんと二人で出掛けるなんて、いつ以来だろう。
この間も久し振りにたくさん話したし、ちょっと昔に戻ったみたいだった。
私がポケットの中からスマートフォンを取り出して時間を確認してみると、さっき見た時からまだ二分しか経っていない。
今日は雲一つない晴天で、太陽は私のことが嫌いなんじゃないかと思うくらいに強い日差しを降らせてくるのに、バス停には日除けになる物もないし、近くにあるのは小学校や幼稚園だ。
道路の向こう側にあるドラッグストアまで行けば涼めるけど、わざわざ横断歩道や歩道橋を渡って行くにはバスの時間が迫っていたから、私達はその場でバスを待ち続けることにした。
駅前の道からちょっと外れるだけで車は随分減って、ぽつぽつとしか見掛けない。
私は走る車を見るともなしに眺めていたけど、お土産にと駅横のビルで買ったゼリーの紙袋がだんだん重たく思えてきて、お兄ちゃんに紙袋を押し付けた。
「持って」
「ったく、めんどくせえなあ」
お兄ちゃんは文句を言いながらも、渋々紙袋を持って続けた。
「今日の夕飯、日和が作れよ」
「ちょっと荷物持っただけで、料理一回分働いたつもりな訳? まあ、昨日はお兄ちゃんが作ってくれたし、別にいいけど。確かまだうどんあった筈だから、冷やしうどんでいいよね」
「うん」
お兄ちゃんは、ポケットからスマートフォンを出しながら頷いた。
バスはまだ来ない。
私も籐製のバッグの口を開けて、スマートフォンを取り出すついでに、バッグの中にあのお兄さんに返す日傘が入っていることを確かめた。
あのお兄さんにもう一度会える確率は限りなくゼロに近くても、いつどこで会えるかわからないし、返したいなら持ち歩いておくべきだろう。
凄く綺麗な人だったし、できればもう一度会いたいけど、SNSで呼び掛けたら、お兄さんは答えてくれるだろうか。
時々SNSを使った人捜しが話題になることがあるし、もしかしたら連絡をくれるかも知れない。大して手間も掛からないし、駄目で元々、やるだけやってみよう。




