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 報道からして顔見知りの犯行ではなさそうだし、きっとお父さん自身も相手がどこの誰か知らなかったに違いない。


 犯人が被害者の身近にいる人間の場合にはそれなりの確率で逮捕される一方、行きずりの犯行だと検挙率はぐっと下がるとも聞いたし、私達で犯人を見付けられるとはとても思えなかった。


 それでも調べてあげるべきなのかも知れないけど、お母さんがお父さんをいなかったも同然にして、それが当たり前になって十年も経つから、時々寂しいと思うことはあっても、口惜しいとか犯人が憎らしいといった気持ちがあまりないのだ。


 お父さんを亡くしてすぐは、そういった気持ちも人並みにあったけど、この家ではそういう気持ちは邪魔なものでしかなくて、磨り潰している内にいつの間にか失くしてしまった気がする。


 こんな薄情な娘であることを申し訳なくも思うけど、一度失くしてしまった気持ちはなかなか取り戻せなかった。


 だからお父さんの仇を討つために頑張れはしないけど、自分のためになら頑張れる。


 私は言った。


「犯人は無理でも、あの女の人のことなら私達でも調べられるかも知れないでしょ? たまたまあの日引っ掛けた女の人だったりしたら無理だろうけど、そうじゃなければお父さんの持ち物に手掛かりがあるかも知れないし、友達や知り合いの人が何か聞いてるかも知れないし」

「まあ、確かに居場所はともかく、誰だか突き止めるくらいのことはできるかも知れねえけどさ、あの人が事件の時に父さんと一緒にいたのは、多分父さんの愛人だったからだろ? 今更どこの誰か突き止めたところで、誰も幸せになんてなれねえんだし、やめとけば?」

 

 確かに、お兄ちゃんの言う通りだとは思う。


 でも、お父さんはあの女の人について何の説明もせずに死んでしまったから、私にとってあの人は宙ぶらりんの何だかよくわからないモノのままで、だから余計に怖くて、気味が悪くて堪らなかった。







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