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「母さんが嫌がるから、リアルタイムでニュースは見られなかったけど、あの事件のことはネットで調べてみたんだ。でも、あんまり捜査は進展してなかったんじゃねえかな? どれも似たり寄ったりな情報ばっかりで、続報もほとんどなかったし」

「そっか……」


 私も気になって、もう少し大きくなってからインターネットや図書館の古新聞で事件のことを調べてみたけど、大した情報は見付からなかったし、あの女の人のことについて触れている記事はほとんどなかった。


 世間からしたらよくある通り魔事件だったろうし、犯人も捕まっていないから、無理もないだろうとは思う。


 あの日、私達は近所の夏祭りに行く予定で、「友達に会う」と言って出掛けたお父さんが帰って来るのを待っていた。


 お父さんが帰って来たら、家族みんなでお祭りに行く約束だったから、お父さんの帰りがひどく待ち遠しかったことを覚えている。


 やっと日が傾いてきた頃、すぐ近くから女の人の悲鳴が聞こえて、私はお兄ちゃん達が止めるのも聞かずに家を飛び出した。


 何の根拠もなかったけど、お父さんに何かあった気がしたのだ。


 どうしてあの時、あの悲鳴とお父さんを結び付けられたのか、自分でもさっぱりわからない。


 ただ直感的に行かなければいけないと思ったのだ。


 あの時私達が住んでいたのは、こことは別のマンションで、私はエレベーターを待つ間も惜しんで、三階から一階まで非常階段を下りた。


 あの頃の私は階段の上り下りが好きで、よく階段を使っていたものだけど、あの時程あの階段が長く思えたことはなかっただろう。


 やっとエントランスに辿り着いた私が自動ドアの方へ駆けて行くと、お父さんはマンションの前に倒れていて、お父さんの側にあの血塗れの女の人が座り込んでいた。






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