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私の考えは間違ってはいなかったみたいで、お兄さんは缶コーヒーを傾けながら続けた。
「かつて、人は我等のような人ではない存在がいることを知っていた。人にない力を持つ我等は人に恐れられ、その恐怖によって人間達は多くの物語を産み出した。説明の付かない不可解な出来事や、人が病に罹るといった恐ろしい現象は、全て人ではない者によって引き起こされるものと考えられていたからな」
昔の人が訳のわからない現象や病気になった理由を妖怪のせいにしていたことくらい、私だって知っている。
科学で世界の仕組みを解明しようとするのが当たり前の、現代日本に生まれ育った人間からすると、本当に馬鹿馬鹿しい話だけど、昔の人はみんな本気で妖怪を信じて、怖がっていたのだろう。
「お兄さんはどういう妖怪なんですか?」
「一言で言えば、強い力を持っていて、妖怪の総大将と呼ばれるような地位にいるぞ」
「それって、要するに『ぬらりひょん』ってことですよね?」
妖怪に詳しくない私でも、『ぬらりひょん』が妖怪の総大将で、夕方忙しくしている家に上がり込んで、家の人に気付かれずにこっそりお茶を飲んでいたりすることくらいは知っていた。
でも『ぬらりひょん』というのは、後頭部がやたら大きいおじいさんの妖怪だったと思うのだけど、お兄さんはおじいさんと呼ぶには若過ぎるし、何より日本人ですらない。




