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 とある夏の日の夕暮れ。

 

 道も建物も夕日に赤く染まる中で、一際赤いものがあった。

 

 それは血だ。


 倒れたお父さんの水色のTシャツ――そのお腹の辺りが血色に変わっていて、そこから零れ落ちたり、飛び散ったであろう血が、辺りを汚していた。


 道路に力なく横たわるお父さんはぐったりと目を閉じていて、動かない。


 そのお父さんの手を、側にいる女の人が握っていた。


 女の人の顔は長い黒髪に隠れて見えなかったのに、その黒髪の下に顔がないように思えたのはどうしてだろう。


 その人が着ていた朝顔の柄の和服が、随分血を吸っていたからだろうか。


 うっかり人間ではないものを見てしまった気がして、その人のことがひどく怖く思えた。


 早く忘れてしまいたかったのに、私はずっとその女の人のことを忘れられずにいる。

 

 お父さんが死んで十年も経った今でも。

 

 あの人は誰だったのだろう。

 

 そもそも『あれ』は人だったのだろうか。

 

 その答えを、私はまだ知らない。






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