不思議な占い
明子は列に並んだものの、まだ迷っていた。
『自分の将来を占いなんかに頼って良いのかしら?』
あれから、毎日考え続けた。そして両親に相談すると、
「女は仕事より結婚を選んだ方が幸せになれる。」と言われた。
勿論、宏とも良く話し合った。彼は、
「明子が選んだ方をそのまま受け入れる。」と言ってくれた。
そうして悩み続け、2週間が過ぎたが、、まだ明子は答えを出せないでいた。明日には、ニュープロジェクト参加を受け入れるのか、返事をしなくてはいけないと云うのに。だからどうしても今日中にどちらを選ぶのか決めなければならないのだ。
「次の方どうぞ。」中から声が聞こえた。いつの間にか明子の番になっていた。
透き通ったブルーのレースを頭から掛けた、年齢不詳の女性が座っている。テーブルの上には大きな水晶玉が置いてあった。謂われるままに、彼女の正面に座った。
「何をお悩みですか?」と聞かれ、、
「仕事と結婚、どちらを選べば良いのか教えてください。」と答えた。
すると、「分かりました。」とだけ言って、そのまま目を瞑り、水晶玉に手を翳す。暫く沈黙の時が流れ、、どの位そうしていただろうか? 徐に、、
「結婚した後の様子が見えます。何処か、、知らない場所、外国でしょうか? 始めの頃には戸惑いがある様ですが、、それでも幸せに見えます。そして2年後にはお子さんが授かります。」そこで一旦言葉を切った。
「その後、そのまま穏やかに暮らしている様子が見えます。家庭を守る事に専念すると良いでしょう。」
「あの、私は結婚した方が良いという事ですか?」明子がそう尋ねると、、占い師はまた目を瞑り、そしてゆっくりと目を開けた。そしてそのままじっと明子の目を見詰めている。すると明子は自分がその占い師の目の中に吸い込まれていく様な、、奇妙な感覚に包まれた。そして何故か不思議とそれが嫌ではなかった。
「あなたの未来をお見せしましょう。。」そう言われて思わず戸惑い、「それってどういう、、」と言いかけた、その瞬間に明子は意識を失った。そうして夢の中の様な心地良さを感じた時、、目の前が開けた。するとその時、、、宏が赤ちゃんを抱いている姿があった。
「明子~、アキナ、お腹空いたみたいだ、ミルク作ってくれ!」
よしよしと言いながら笑顔で子供をあやしている。明子は戸惑いながらも、何故か「ええ、、そうね。」と返事をし台所へ移動した。
『此処は?』不思議な空間に連れてこられた。それでも自然にミルクを作った。宏がそれを受け取り子供に与える。
「アキナ、お前はママに似て美人で良かったなぁ~!」そんな事を言いながら、本当に嬉しそうである。
『そうか、そうなんだ、、私は結婚して宏と子供と三人で幸せに暮らしているんだ。決して仕事と比べる物では無かったんだ。』そう思ったら心がとても軽くなって、、明子自身も微笑んでいるのが分かった。そして、、、、。
「あなたの世界はいかがでしたか?」
その声で明子は我に返った。
「あ、あの、、私は一体?」まだ少し動揺している。。
「あなたの選ぶ道が分かった様ですね。」
「はい、でも、、あなたの占いって、、?」
「私は相手に寄って、未来が見える時とそうでない時があるんです。」
そう言って薄く笑った。
「どうぞお幸せに!」
お礼を言ってそこを出る。そして直ぐに宏に電話を掛けた。勿論、プロポーズを受けると言うために、、でも、ここで見たふたりの子供の事は今はまだ明子だけの秘密にしておこうと思った。
「よし、出来た!」
気付けば外はもう真っ暗だ。時計を見ると7時になろうとしている。
急いで行っても少し遅刻しそうであった。でもまぁ、友人には許してもらおう!
そうして今日も詩織は「カフェshion」を出るのであった。