仕事か結婚か?
詩織はいつもよりちょっとだけお洒落をして此処「カフェshion」にやってきた。普段は大体ジーンズにトレーナーやTシャツなどの軽装である。でも今日、夕方仕事を終えてから~久しぶりに高校の同級生と会って夕食を一緒にとる予定があるのだ。
「あーっ、詩織さんがスカート履いてるー珍しい!」
早速亜美ちゃんに揶揄われる。
「まっ、ね!たまには良いでしょ?」
「良く似合ってますよ、ってもしかして、、デートとか?」
「そうなの!でもね、相手は女性だけど。」軽く笑って答えると、
「なぁんだ。」
亜美ちゃんはちょっとオーバーに肩をすくめて、カウンターの向こうへ消えた。
「さぁて、今日も頑張って書きますか」
詩織はパソコンに向かった。今書いている物語は、、
『自分はどちらを選ぶべきか?』その選択を占いに委ねようとしている女性の話である。たまたま数日前、近くのショッピングモールに立ち寄った際に、占いコーナーに並んでいる女性達の真剣な表情を見て思い付いた。「占い」を取り入れて書いてみるのも、意外に面白いかもしれない、っと。
主人公は、自動車メーカーに勤めるエンジニアの女性。付き合って4年になる彼がいる。そして先日のデートでプロポーズされた。思わず目が潤む程感激したのだが、、その後に続いた彼の言葉にショックを受けた。と言うのは、、、来月付けで海外へ転勤命令が出たというのだ。結婚して一緒に行ってくれないか?と彼は言った。勿論結婚はしたいが、そうすると彼女は仕事を辞めなければならない。来月から始まる新しいプロジェクトのメンバーに推薦されて、更なるキャリアアップをと思っていた矢先の事だった。彼との結婚を選ぶのか?それとも彼女自身のチャンスを取るのか?
さて、彼女は?
詩織は珈琲のお代わりを頼んで、ほっとひと息付く。そして、
「占いは何にしよう?タロットカード、占星術、それとも?」
独り言を云いながら物語へと入っていった。