表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ 『大倉尚子 遭遇編』

作者: ボケ猫



携帯を片手にベッドの上で寝っ転がって電話をしていた。


「ナオ・・明日来れそう?」

「うん・・たぶん、大丈夫と思うわ。

ありがとなユミ」

「何言ってんの。当たり前やない」

「ユミ・・・ほんまにごめんな・・」

「ナオが謝ることない。しゃーないもん・・・

さて、もう寝よ寝よ・・ほなら明日な。

え、もう今日か・・・」

お互いに笑ってしまった。

「おやすみ~ナオ」

「・・うん・・おやすみなさい」


ナオと呼ばれている女の子。

大倉尚子、女子高生だ。


いつからだろう。

学校へ行くのが怖くなってしまった。

毎日、明日の時間割をしてカバンまできちんと用意して、服にもアイロンをかけている。

でも、その日になると行くことができない。

身体が動かなくなる。

学校でも不登校ということになっているようだ。

会話なんかは誰とでも普通にできる。

家の中や買い物なんかは普通に行ける。


ただ、学校へ行くことができない。

ユミはいい友達だ。

本当に私のことを心配してくれている。

でも、ダメなんよね・・

学校へ行く気はあるのだけど、行けへんのよ。


そういやぁ、近々、臨床心理士のところへ行くっておかんが言ってたけど・・・。

ま、いっか。


・・・寝れそうにないわぁ・・・

そう考えながらも布団に入っていろいろ妄想をしていた。


もし、異世界に転生できたらどれほどいいだろうか。

俺TUEEEみたいなチート能力もええな。

せやけど、こんな性格やから、回復系かな・・

あかん、爆裂魔法なんか使える魔法使いもええなぁ・・

・・・・・

・・・・

・・

知らない間に眠っていたようだ。

外が明るくなっていた。


朝起きて、制服に着替える。

もしかして、今日は行けるかもと思ってカバンを持ってキッチンへ行ってみる。

「おはよう、ナオ。

あれ、今日は調子ええかな?」

母親が言う。

「うん・・・」

そう答えて、玄関まで行ってみる。

・・・

ドアが開けれない。


しばらく玄関でいると母親が来て、優しく声をかけてくれた。

「ナオ・・今日の午後、臨床の先生のところへ行く予定やろ。

お母さん、午前で帰ってくるから・・・」

そういって、母親は出かけた。


臨床心理士の先生は須磨の方にいるらしく、結構有名らしい。

私の住んでいる芦屋から15キロくらいだろうか。


すぐにお母さんが帰って来た。

「あれ、お母さん、忘れ物?」

「いやな・・携帯がつながらへんねん。

ナオのはどう?」

そういわれてみて、携帯をみた。


圏外!


「あかん・・お母さん、圏外って出てるわ・・」

「そやろ・・どないしたんやろな・・・」

そういうと、携帯をいろいろいじっていた。

「あ、ナオ・・・お母さん、今日は仕事いかんでええみたいやわ・・。

昨日の夜にメールが届いてた」

そういって、母親と一緒にリビングで紅茶を入れながらテレビをつけた。


紅茶は私が入れるので、ホットポッドから注いで入れた。

クッキーと一緒にお母さんのところへ紅茶を一緒に持って行った。

お母さんが紅茶を口に入れると、

「ぬっる~・・飲めへんで・・・」

ポット湧いてるはずなのに・・・。

ナオはそう思って、ポットを見てみると電気がついてない。

「あれ?お母さん、電気入ってないわ・・そりゃぬるいやろな・・・ごめん」

そう思ってポッドのコードを見てると、コンセントはつながってるしポットにもつながってる。


「変やなぁ・・線はつながってるのに・・・

そういやぁ、テレビつけへんな・・」

「ほんまやね・・」

紅茶を飲みながらナオの方を向いた。

「停電かいな・・・」

そう思っていろいろスイッチを操作してみると、確かに停電のようだ。

「・・やっぱ、あかん。

停電やな」


ナオのお母さんはそういうと、ナオに外へ行こうと言った。

確かに家にいても仕方ないし、先生と会うにも時間がまだある。

外で軽く食事でもしながら時間を潰そうと思ったようだ。

ナオも賛成らしく、着替えてくると言って自分の部屋に戻った。


準備ができ、母親の運転の車で移動。

学校へ行くのでなければ、全然問題ない。

・・・・

動いて1分もしなかっただろう。

ふわっとした浮遊感を感じた。


「ん?・・なんや気持ち悪いな・・・」

ナオのお母さんが口にするなり、景色が下へ移動する。

「お、お母さん!!

車・・浮いてるよ・・・」

何が起こってるのかわからなかった。

ただ、その状況を伝えることができただけだ。

「・・・・」

母親は声もでない。

車の前の景色が、空が見えていたが、今度は地上が見え始めた。

グングン地上が迫ってくる。

激突すると思うと、身体にGがかかる。

水平移動に移ったようだ。

そう感じた途端に、目の前に大きな巨体が見えた。

そこで記憶が途切れた。


ガーゴイルが車を持ち上げて、地上へ落とすのかと思っていたら、オークを発見したようだ。

そのまま車をオークへめがけて当てに行ったようだ。

車がオークに激突するが、車が変形するだけで、オークは傷もない。

オークはガーゴイルめがけて近くの瓦礫なんかを投げつけていた。


車の中ではエアバッグが開いて、ナオコとその母親はクッションにのめり込みつつ、車の前方部はほとんど潰れていた。

ナオコは気を失ったが、母親は身体のところまで車がめり込んでいた。

即死だっただろう。


ガーゴイルとオークの小競り合いはしばらく続いたが、それぞれが勝手気ままに移動を開始していた。


車の中で気を失っていたのは幸運だったといえるだろう。

魔物に見つかることはなかった。



どれくらい時間が経過しただろうか。

辺りは夜になっていた。

ナオコは気が付いた。

「・・うぅ・・あいたたた・・・。

そういえば、あたし・・」

頭を押さえつつ車の運転席を見た。

「・・・お、お母さん・・・」


言葉を失った。


ほとんど車が潰れていた。

自分のいるところだけが、何とかエアバックで助かった感じだ。

運転席の方はほとんど原型をとどめていなかった。

ハンドルのようなものがあるが、車の前から圧縮されたように潰れていた。

エアバッグの白いヒラヒラしたものが、その隙間から見えていた。

そのめくれる白い影に、だらんとした手が見え隠れしていた。


ナオコは口に手を当てて、息を吸ったまま固まってしまった。

すべてを理解した。

母親はその潰れた間にいるのだと・・・。

「・・お、お母さん・・・そんな・・・」

おそるおそる手を伸ばして、その手に触れようとしてみるが、触れれそうにない。

周りを見てみた。

暗くなっている。

いったい何時なんだろう?

でも、お母さんが・・・。


何も考えれなかった。

自然とシートベルトを外して、エアバッグを押しのけて、フロントガラスの部分から車外へ出た。

そのまま、車に背中をもたげながら、その場に座った。

上を見上げると、やけにきれいに星が見えた。


母親がいなくなったのはわかる。

死んだのもわかる。

でも、悲しさとか寂しさとか、そういう風な感情は起こってこない。

ただ、何も考えることができない。

・・・・・

・・・・

そういえば、須磨の方へ行こうって思ってたんだ。

そう思うと、フラフラと歩き始めた。


ナオコのいる場所は海岸近くの場所なので、そのまま海岸線を西へ移動していけば、須磨までは行けるだろう。

それほど遠くもない。

ただ、ナオコはそんなことを考えているわけではない。

ただ、フラフラと歩いてるだけだった。

・・・

・・・


どれほど歩いただろうか・・・。

空が白んで来ていた。


街はかなり壊れていた。

建物は崩れていたり、あちこちで車などがひっくり返っていた。

人とすれ違うことはない。


ナオコはフラフラと歩きながら舞子駅のところまで来ていた。

どうやって来たのかよく覚えていない。

ただ、前を見ると舞子駅が見えていた。


(本編84話へと続きます。よろしくお願いします)




本編に入れるには少し寄り道かなと思うようなものを短編で扱っています。


よろしくお願いします。


他の短編も、よろしければ目を通してみてくださいね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ