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帰還勇者のための休日の過ごし方  作者: 一条由吏
超感覚探偵のエアポート滞在記
26/32

第6話 新たな感覚

お読み頂きましてありがとうございます。


遅くなってごめんなさい。


「この女。『西九条れいな』の知り合いだから。悪いけど助けてあげてくれるか。」


 開けるボタンを押そうとする志正を止める。


 エレベーターはゆっくりと降りていく。結構時間が掛かってしまった。出雲さん死なないでくれよ。


 テロリストたちは警備隊と睨み合っているようでこちらには1発も銃弾は飛んで来なかった。


「爆弾も全て撤去されてますのでチルトンホテルまで行って下さい。あと随時、SNSで渚佑子さんと連絡を取り合ってください。」


 女性店長さんが頷くのを確認する。


「ねえ本当にまた5階まで昇っていくつもり? ねえ。私と一緒に逃げようよ。」


 あれだけ無視してやったのに解らないらしい。自分に魅力があるとでも勘違いしているんだろう。ヒロインになったつもりらしい。見た目は美人だが中身はブサイクだ。


「ふ・ざ・け・る・な。ここまで連れてきただけでも有り難いと思え。ほらさっさと行けよ。」


「何でよ。そんなオバさんに優しく出来るクセに。」


「それはキミに魅力が無いからだよ。頭がオカシイ女は嫌いなんだ。」


 僕はさっさとエレベーターの閉じるボタンを押した。目の前で女がヒステリーを起こしているが知るもんか。


 昇りは銃撃戦の真っ最中だった。主力部隊を4階に持ってきた所為で5階の守りは薄い。このままでは人質を取られて籠城されてしまう。そうなれば、1人また1人と殺されていくことになるだろう。


 もうたくさんだ。阿鼻叫喚なんて聞きたくない。


「どう? 出雲さん。」


 5階に到着して出雲さんに問いかけてみる。


「ダメだ。誰も出てこようとしない。」


 エレベーターの周囲には誰も居なかった。あのテレビ局のスタッフでさえも奥のほうで息を潜めているのが僕の聴覚に届く。民間人だから強制的に乗せることも出来ない。


「仕方が無いですね。テロリストたちに対する正当防衛って、どの辺りまで罪にならないと思います?」


「那須くん。まさか立ち向かう気か。ダメだダメだ駄目だ。民間人のキミが何故そこまでする必要があるんだ。先程の女性を助ければキミの任務は終わりの筈だろ。後は俺たち警察に任せて帰ってくれよ。」


「出雲さんと一緒なら帰りますけど。出雲さんも管轄外ですよね。本当ならこんなところまで来なくてもいいはずだよね。」


 わざわざ非番なのに案内役を買って出てくれたのだけど、千葉県警も警視庁の捜査1課には応援を求めているだろうが機動捜査隊の人間の出番ではないはずだ。


「無理だ。帰れない。」


 ですよね。


「志正さんはどうする?」


 志正なら異世界から沢山の武器を持ち帰っているはずだから十分戦えるはずだ。正当防衛は勝ち得たとしてもでも銃刀法違反なんだよな。こんなときにまで法律を気にしなくてはいけないなんて面倒くさいな。


「帰るよ。もちろん。」


 だよね。これ以上は僕のワガママだ。


「了解。じゃあ、出雲さんを持ち帰ってくれるかな。」


 僕は暴れる出雲さんを強引に抱え込み志正に引き渡しエレベーターへ押し込んだ。肘鉄を食らっても防弾スーツのおかげで大したダメージは無い。これで遠慮なく戦える。出雲さんを死なせてしまっては刑事局長(ヨーちゃん)に悪いからな。


 志正は『成長』スキルで僕の数倍上をいく身体能力の持ち主だ。それこそ子供を抱え込んでいるかのように運んでいくはずだ。


     ☆


「なんだ貴様。イカレた格好をしやがって。」


 とうとう突破されてしまった。負傷した警備隊を庇うようにテロリストたちの前に立ちはだかる。


 言われたくなかった。ユニフォームを着ているとはいえ全身防弾スーツ姿なのだ。今度から正義の味方とわかりやすいようにSマークのマントでも『箱』スキルに入れておこうかな。


 でもそう言った男の頭に僕の手から放たれたボールがぶつかり黙らす。頭を狙うため速度を抑えたとはいえ時速130キロメートルは出ているはず。脳震盪は起こしているはずだ。


 あれは何だ。


 テロリストたちが居るはずの方向に黒い雲のようなモヤモヤっとしたものが見える。


 神経を集中して何なのかと凝視しているとその正体が掴めた犬嚙巳村で見た悪霊そっくりだ。さらに凝視続けると憎々しげな顔をした幽霊が何度も何度もテロリストたちに襲いかかっていた。


 犬神のタマと主従契約をしたあと、陰陽師の家系という社長秘書に聞いた話では普通死んだ人の霊は生きている人間に対して害を与えることはできないらしい。


 タマにできることといえば、その霊体を呪う相手に見えるようにするだけなんだそうだ。そのことで相手が気が触れれば社会的制裁を受けるだろうし、車を運転中に霊に襲い掛かられれば事故るだろうし、最悪死ぬこともあるということだった。


 そのタマと主従関係を結んだ僕は霊感という感覚が身に付いたらしい。しかも『超感覚』スキルで霊体の詳細な情報まで解るようになってしまった。


 例えば今テロリストたちに絡み付いている霊体は成田空港内でテロリストたちに殺された人々のようだった。その他に霊体が複数結合している悪霊も上空に渦巻いている。

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