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帰還勇者のための休日の過ごし方  作者: 一条由吏
超感覚探偵のエアポート滞在記
23/32

第3話 マスコットキャラクター

お読み頂きましてありがとうございます。

「どうしたのですか?」


 第4ターミナルビルからの連絡口に多くの人々が詰め掛けていた。1000人を越えているだろうと思われる外国人と警察官が険悪な雰囲気になっていた。入口付近で歯止めをしている警察官に事情を聞く。


「手荷物検査をする暇が無いので荷物を置いていくように説得しているのですが英語が通じなくて。」


 成田国際空港警備隊の隊員となるには英語ができなくてはいけないらしい。時代遅れだな。最近はスマートフォンで自動的に音声翻訳してくれるアプリもあるから使えばいいだけなのに。


 僕は隊員にアプリをインストールするように教えてあげ、詰め掛けていた人々に向って話しかける。『翻訳』スキルは便利だ。フランス人も中国人もロシア人もいたが一度で話が通じ、皆が一斉に荷物を置く。


「どうして! 日本語が通じるのっ。」


 先程の警察官が声を上げる。アプリのインストールで手間取っていると思っていたのに聞いていたようだ。


「そんなことよりボディチェックを優先してください。」


 全く作業の手順くらい考えておけよ。


 僕はひとりの男に近付いていく。先程からニヤニヤ笑っていて不気味だったのだ。


「志正さん。何故ここに居るんですか!」


 この男は僕と同時に異世界に召喚され数ヶ月活躍して球団社長の手を借りて帰ってきた。さらに志正が持つ『成長』スキルを使い、約半年の訓練を経てプロ野球選手として活躍している。


「シーズンオフ中だから海外でゆっくりしようと思ったんだ。」


 珍しく周囲には女性が居ない。現地で調達するのかな。


「事件にぶち当たったのに何故渚佑子さんに報告しないんですか。」


 志正がここに居るんだったら、僕が来る必要が無かったんじゃないか。でも志正には爆弾を探せなかっただろうから、どちらにしても来る必要があったようだ。


「なんで報告する必要があるんだ。まさかテロリストたちと対峙するつもりじゃないだろうな。僕たち『勇者』は世間には知られてはならない存在なんだぞ。アメリカとは違い日本なんて国は特異な人は排除される。社長が良い例じゃないか。」


 球団社長は確かに一時期公安調査庁に目を付けられ、冤罪で逮捕されるところまでいっている。その時は上手く逃げ切れたが僕たちも逃げ切れるかどうかは全くわからない。


「でも・・・『悲鳴が』『悲痛な叫び声が』『だんだんと小さくなっていく呻き声が』耳に付いて離れないんだ。今も第1ターミナルビルで・・・ひとり・・・またひとりと殺されているんだから・・・。」


 成田国際空港警備隊は今、第1ターミナルビルの入り口付近でテロリストたちと銃撃戦というには一方的な戦いを強いられている。警備隊は民間人を守るためにしか発砲さえできないらしい。


 民間人が逃げ出そうとする度に狙い撃ちされており、それを庇おうとして警備隊の隊列が乱れ、隙をさらけ出している。


「お前。馬鹿だな。本当に馬鹿だ。そんな馬鹿に行動を共にしようとする俺も馬鹿だけどな。とにかく牛丼のスキスキの同僚たちは任せておけ、お前はパッと行ってパッとやっつけてこい。骨は拾わないし、一切無関係を押し通すからな、覚悟しておけよ。」


 空港には監視カメラもあるし、これだけ多くの人々が存在する。今も何処かで僕の動画を撮影している人間が居るかもしれないのだ。


 志正も僕と同じように装備品を付ける。


「志正・・・さん。なんでマスコットキャラクターの着ぐるみなんか持っているんだ。それも2代前のじゃないか。」


 オリハルコンとミスリルの防弾スーツの上にZiphoneフォルクスのマスコットキャラクターの着ぐるみを着けている。これなら顔もわからないからいいかもね。


「オープン戦のハーフタイムで乱入してやろうと思っていたんだけどよ。こんなところで使うとは思わなかったぜ。」


     ☆


 機動隊姿の出雲さんとZiphoneフォルクスのユニフォーム姿の僕とマスコットキャラクター姿の志正が人が居なくなり閑散としだした第4ターミナルビルを闊歩していく。


 僕の嗅覚と聴覚がテロリストたちの足取りを追っているが1階の到着ロビーから2階に上がるところで警備隊と衝突している。テロリストたちの目的は国際線の搭乗ゲートに居る誰かなのかもしれない。


 瑤子さんにSNSでそのことを伝えるとすぐに回答があった。イスラエルの国防省のトップが密かに来日していたらしい。だがテロ発生直後に空港内部の従業員通路を使い逃げ出しているということだった。政治家は全くそういうところだけは早いんだから。


 報告済みだった爆弾は全て起爆装置を解除され回収されているということだった。


 第5ターミナルビルは主にホテル等の施設を中心としているため、地上の通路を使い移動できるが第4ターミナルビルと第1ターミナルビルの間は滑走路があるため、地下2階の歩く歩道で行き来する。


「滑走路を突っ切りましょう。」


 僕の嗅覚によればその通路を利用している人々は一方通行で歩く歩道は全て第4ターミナルビル方向に切り替えられて、その横の通路も多くの人でごった返しており、とても逆方向に行ける状況じゃないようだった。


「あぶないぞ。今もまだ次々と離陸しているんだ。それに1機でも止めると損害賠償を請求されるぞ。」


 テロリストが現われてから、離陸可能な機体は乗っ取りに備え羽田空港へ移動しているらしい。最近は旅客機を操縦できるテロリストも居るというから驚きだ。

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