プロローグ1
俺は紺野秀一 38歳 既婚。
子供は中学一年生の娘と小学四年生の息子の2人。
妻は専業主婦だったが、現在は正社員として働いている。
友人が会社を興す際に手伝いに行き、そのまま就労復帰といった感じだ。
ちなみに俺の職業は…無職だ。
先月まで小さな会社の営業を担当していたが…
末日に突然全社員に集合がかけられ社長から突然全員解雇を言い渡された。
社長は解散とか言っていたが単に倒産したわけである。
宣告を行った直後から社長と重役は行方をくらまし、その後の足取りは不明。
取引先などへの残務処理は俺と残った一部社員で行った。
主に電話対応と公的機関への対応をしていたが…あれはきつい日々だった。
電話口から響く罵詈雑言はトラウマを覚えるほどだ。
一部公的機関からは温かい声をもらえたのが救いだった…。
全ての元取引先に連絡し、できる限りの対応を終えたのが昨日のことだ。
精根尽き果て、『起きたら職探しと手続きしに行くぞ』と思いながら泥のように眠った。
電話越しに罵られる悪夢を見ているとスマホが鳴り無理矢理現実に戻された。
眠い目を擦りながら液晶に映る番号を確認すると、それは幼馴染の物だった。
「もしもし…朝から連絡なんて珍しいな。徹夜か?」
声もまだ寝ぼけているのが自分でもわかった。
「ああ、すまん。お前のことだからもう起きてると思って連絡した」
声から察してくれたようだ。
「大丈夫だ。で、どうした?」
「この間お前のご両親から倒産の話を聞いてな…次はもう見つけたか?」
「聞いたのか…まぁ昨日まで残務処理しててな…これから探す感じだ」
自分の声に苛立ちが含まれてしまったのを感じる。
「そうか…一つ提案があるんだ」
「なんだ?」
「うちの会社で働かないか?」
渡りに船な話だが…
「給料と仕事内容がわからないと話もできないぞ。そもそも業種が全然違わないか?」
たしかこいつの会社はゲーム会社だったはずだ。
今まで俺が働いてた会社とは業種が違う。
「給与は今までと同じかそれ以上。仕事内容は小売を回ってもらう営業もあるが…ゲームを実際に遊んでもらって感想とか意見とかもらう必要もあるな。協業開発の場合は取引先との交渉なんかも発生する場合がある」
給与が同じかそれ以上ってのはひかれるが…
「う~ん…今までとは業種がなぁ…」
「まぁ今すぐ結論出せって話じゃない。明日の夕方にでもうちの会社に来てくれ。そこで詳しい話をしよう。場所はメールで送っておくぞ。それじゃ明日な!」
迷っていると強引に面談の日時を決められ通話が終了してしまった。
現在無職なのは間違いないことだし、予定も無い。
今日中に公的機関に各種書類を提出してしまえばそこから常に求職活動が必要になる。
とりあえず面接の練習として話を聞きにいくことにするか。
毎日少しずつ書いていこうと思います。