僕とアキの時空静寂【クロノスタシス】
ミカ編でも同じ形式のタイトルを採用しましたけれども、この形式、なんかいかにも終わりそうな感じがして好きです。というワケで、今回でアキ編は完結となります。
僕たちはミカと合流した。駆けつけたブレイカーの捕縛部隊の一人から、ミカとアキは連盟の医療機関を受診するよう指示され、ワープホールを介して向かうことになった。
道中、僕とミカは話し合って、アキに全てを話すことにした。全て――スキルや連盟、ブレイカー、AOA――彼女が未だ知らない、新次元の常識を。
話し終えると、アキは混乱している様子ながらも、僕に微笑むのだった。
「ありがとう」
そんな言葉を、僕にくれた。
「真くんの口から聞けて、良かったよ」
僕は胸が締めつけられる思いだった。ミカも同様らしく、見やると顔を伏せって僅かに震えていた。
連盟の医療機関に着くと、二人は設備の整った一室へ連れて行かれ、僕は廊下で待機しているよう言い渡された。
色々なことが頭をよぎった。アキと最初に話した日のこと。幼稚園で同じクラスになって喜び合ったこと。小学校で隣の席になって授業中におしゃべりしたこと。中学校に入ったら僕の方が少し距離を置いたこと。それでも僕なんかのことを思って、高校に入っても尚、話しかけてくれること――。
しばらくすると、二人が出てきた。見たところ大それた手術などはしていないようで、二人とも左の手首に小さな刺し傷があることと、半ば放心状態となっていること以外は、特に大事ないようだ。
「二人とも大丈夫?」
僕が声をかけると、アキは顔を上げてニコッと笑い――それが無理をして浮かべている笑顔であると、すぐに分かった――、ミカは数瞬遅れて『え、あ、うん』と反応を示した。
「何かあったのか?」
僕が聞くと、アキが『えーっと……』と言いにくそうにしながら話した。
「私ね……私たちね……ユ、ユーザーになっちゃった、みたいなの……」
「えっ!?」
思わず声が裏返った。
「私は過去を見るスキル『パスト・シーイング』で――」
「……わっ、私が、未来を見る『フューチャー・アイ』……なの……」
ミカは、アキに横目で見られているのに気づくと、ひどく混乱した様子で言った。僕はと言うと、眼を見開いて口を『お』の字にぽっかり開けたアホ面で、二人を見つめるしかなかった。
「やったね、真くん!」
すると突然、アキが僕に抱きついた。
「これでずっと一緒にいられるよ!」
「……え? ど、どういうことだよ?」
僕はアキを離しながら、眉をひそめた。
「私も、真くんと一緒に悪者を取っ捕まえることにしたの。もうお医者さんに、部長さんに手続きをしてもらうよう伝えておいてって頼んであるから」
「え!? な、なんで!? いや、これは危険な仕事だからダメ――」
「危険だからだよ。真くんが危険な目に遭ってるのに、私だけ家で待ってろって言うの? そんなことしたらお母様に睨まれちゃうわ」
ケロッとした調子で言うアキ。
「ど、どうしてそこまで……」
僕は畏怖の念を抱きかけていた。聞かれると、アキはエヘッとはにかんで言った。
「だって私は、真くんのことが好きなんだもん」
時間という概念は、その不可逆性を指し、時として『矢』に例えられることがある。時間の矢は、恋のキューピッドが僕の心を射止めるには、いささか鋭すぎるようだ。
ミカ編が、なんかオチの着いた終わり方をしたように思えたので、今回も着けてみました。着いてるんですかね。
また、これでメインキャラクターが総出となりましたので、次回からは本格的に物語が進行していきます。今までの時空静寂【クロノスタシス】は、言うなれば序章でした。ミカ編、アキ編という導入部分の前後編が終了し、ようやく舞台が整ってきた感があります。
今後ともよろしくお願いします。
また、作者が別に執筆する『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』という作品があります。こちらはまだ第二章の序盤ですが、内容量は本作より遥かに多いので、読み応えも相応だと思います。今回、タイミングが合って最新話が更新できましたので、興味がおありでしたら、ぜひご一読ください。
次回から何編が始まるのかは、更新をお待ちください。