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走れ!

走るんです。

 僕とミカは走っていた。アキが危ない。ブレイカーに――誘拐した少女を生かし植えつけたトラウマに苛まれる様を見て興奮する頭のイカれた犯罪者に襲われているのだ。

 僕は何度もLINEの無料電話やトークでアキに呼びかけたが、応答がない。普段、僕が連絡を寄越せば必ず三秒以内にレスポンスのあるアキが、だ。


「クソッ! どうして出ないんだ! アキ!」

「落ち着いて、真! 懸命に逃げている最中かもしれない! 助けを求められてる側の私たちがパニクったらダメ!」

「……クソッ! クソックソッ! アキ……アキィ!」


 僕は一心不乱に町を駆けずり回った。アキを助けたい。助けたい。助けたい――ただその思いを胸に。

 その時。またしても僕の耳に振動が伝わった。それはミカも同様らしく、彼女は驚愕した面持ちで立ち止まった。


「ミカ! 今のは――」

「……ウソ……でしょ……?」


 ミカは目を見開き、辺りをキョロキョロと見回した。


「どうしたんだよ!?」


 僕はアキを助けなければという焦燥感と、見るからに動揺しているアキへの不安感から、半ば怒鳴るように言ってしまった。


「……ブレイカーが、もう一人現れたわ……」

「え!? 同時に!? なんで!? 他のユーザーとは接点がないんじゃなかったのか!?」

「そのはずなのに……なのに……」


 ミカは慌てふためき、今にも泣きそうである。


「全く無関係のブレイカー二人が同時に現れるケースはあるのか?」

「分からない……前例がないとまでは言わないけど、件数的には少ないはず……」


 僕は『クソ!』と悪態をついて、しばらく瞑想した。落ち着け。考えろ。何をすべきか。何が最善か。二人のブレイカー。アキ。僕。ミカ――僕は目を開けると、ミカを呼んだ。


「ここは二手に分かれよう。僕が最初のブレイカー、ミカがさっき現れたブレイカーだ」

「えっ!? ……で、でも危険だよ! 一人じゃ! ブレイカーと接触するなら二人一組が原則――」

「分かってる! でも今はイレギュラーな事態だ! マニュアルなんかアテにならない!」


 僕は強い語調で言った――そこに不安や焦燥は含まれていない。あるのは確固たる決意だ。アキを助け、二人のブレイカーを取り押さえる。


「僕たちはユーザーだ! スキルを使えない無防備な人たちを守るんだ! そのためには、僕たち一人一人が困難に立ち向かわなきゃダメなんだ! 多くを望むなら、相応のリスクを背負わなければならないんだ!」


 ミカは不安の如実に現れた表情で思案すると、やがて『うん!』と頷いた。商店街の方向へ、彼女は走っていく。

 その後ろ姿を認めると、僕も駆け出した。救わなければならない。僕の幼馴染みだ。こんな僕と、結婚して子供を作るとまで言ってくれる。たとえ、そこに歪んだ家庭内情や価値観念があろうと、僕は、守らなければならないんだ。

 待ってろよ、アキ。

ということで、二人は別々の道を走ることになりました。道は違えど目的は同じ。離れ離れになっても決して失わない確固たる意思が、今後は披露されることと思います。


また、本作とは別に作者が書く『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』という小説があります。こちらも別々の道を歩みながらも絆を失わない登場人物たちの熱き戦いが繰り広げられておりますので、興味がおありでしたら、ぜひご一読を。

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