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カメラ

作者: 神名代洸

それは昔から我が家にあった古いカメラである。今流行りのものとは違い、ひと昔前の大きくて重いものだった。

お父さんから聞いた話だと、おじいちゃんの持ち物だったらしい。とても大切に使って手入れもきちんとされていたようで、今でも新品同様に見えてもおかしくなかった。

そのカメラはマニアの間では高値で取引されているらしい。

けれども形見でもあるそれを売りに出す気にはなれなかった。


ある日、久しぶりに家族で旅行にと出かけることにしたはいいが、我が家にあるのはそのカメラ1台だけだった。仕方なしに持って出かけたが、いかんせん使い方がよくわからず、結局数枚が撮れた程度だった。仕方がないので新しいカメラを買うことにした。しかし、たくさん種類がありすぎてどれがいいのかもわからないまま店員と話しをし、使い勝手が良い最新式のカメラを買って帰ってきた。それで試しに飼っているネコを写してみた。とても綺麗に写っており家族は満足した。

それからは新しいカメラでいろんな場所を写したり家族写真を撮ってみたりした。暫くすると古いカメラのことは忘れてしまっていた。

けれども新しいカメラの調子が悪くなり、修理に出すことになった。ちょうど運悪く家族旅行と重なってしまい、使い捨てカメラを用意せざるを得なくなった。そんな時、誰かが思い出したんだ。古いカメラは使えないだろうかと……。


そう、確かに古いカメラは使える。ただし、使い方がいまいちなだけだった。

それから古いカメラを持ち歩くようになったのだが、ピントが合わない写真や、無気味な写真が数多く撮れた。何故だかわからない。

前までは普通に撮れていたはずなのに、今は全く違う…。

普通に撮れる方が少なかった。

気味が悪くなった私は、まず知り合いの住職にこのことを相談しに行き、話を持ちかけたが、そんなことあるわけがないと簡単に言われてしまった。家族にはまだ言ってない。だが、早々は持たないだろうと、予感していた。予感は的中し、皆それぞれが写真を手に取りジッと見つめた。まぁ〜ジッと見なくてもその姿ははっきりとわかる。

「これ…変じゃない?」

「そうだよ、絶対変!ってかこれ、心霊写真じゃない?」

「あなたもそう思う?じゃあやっぱりそうなのね。どうしてそんなのばっかり撮れるの?おかしいじゃない。」

「もしかして場所が良くないとか?それともカメラが良くないとか?」

家族は皆それぞれが言いたいことを言っている。私もそう思ってはいたが、どうしてかはわからない。

どうすればいいのか全く分からなくなってこう言うのについてよく知る友人に頼ることにした。

「どうすればいいと思う?」

「そうだね、たぶん両方が良くないんだと思うよ。で、新しいカメラはどう?使ってみた?」

「同じ場所に行ける時に行って写してきたけど特に問題なかったよ。」

「と言う事は問題はカメラの方かな。」

「そうなの?でも最初の頃は全然普通に使えてたんだけどね〜。なんでおかしくなったんだろう…。」

「そうだね…そのカメラ今ある?」

「ああ、あるよ。」

そう言ってカメラを差し出した。

だが、友人は触ろうとはせずそのままジッと見つめていた。そしてようやく手にしたが、すぐに手を離してしまった。とっさのことであったが、なんとか落とさずにキャッチ出来た。

「ちょっとー。」

「ゴメンゴメン。わかったわ。うん。そうに違いない。」1人で自問自答している友人がわからず私はボーッとなってしまった。けれども友人はわかりやすく説明してくれた。

簡単に言えばカメラに霊が取り付いているらしい。それはおそらく亡くなったおじいちゃんだろう。使われていた頃はまだ何にもなかったのは忘れられていないことが嬉しかったからに違いない。しかし、新しいカメラを買うことでもう用済みと思ったのかおじいちゃんは怒っているらしい。それで波長が合う霊達を集めて呼んで写っていたのかもしれないと。それがわかった私達はあらためて仏壇に手を合わせ、おじいちゃんを忘れてなんかいないよ、と思いを込めてゆっくりと話した。


それからはその古いカメラは時々使われるようになり、おかしな写真は写らなくなった。

これはきっとおじいちゃんからの警告のようなものだったのに違いない。それ以降、無気味な写真は写らなくなった。幸いにも家族の誰一人病気や怪我などをしてはいない。

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